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日銀政策決定会合を受けて渡辺努先生の発言を振り返る

こんにちは、しんまるです。
今日はいつもの適応障害に関する記事ではなく、唐突に金融政策に関する記事です。仕事が手につかないので別のことを考えたくなり、いろいろと調べていたので、その備忘です。

なぜ唐突に金融政策

金融政策自体に最近より興味をもったのは、以前に読書感想文を書いた「世界インフレの謎」を読んだからなのですが、改めて著者である渡辺努先生のこれまでのメディア寄稿などをいろいろ見ていて、その変遷と今回の日銀の政策発表に関連性を見出したので、その点を中心に記載していきたいと思います。
渡辺先生がこういったから日銀が動いた、とまでいうつもりはありませんが、外から見るとある程度の関連を見て取れた、というたぐいの話です。

渡辺先生のメディア寄稿につき、全て確認できたわけではないので、あくまで都合のよい切り取りでしかないのですが、気になったのは以下の数件です。

①2022/6/3 「物価・賃金上昇へ好機到来、日銀は金融緩和継続を」/Bloomberg

「健全な賃金、健全な価格を取り戻す千載一遇のチャンスが到来している」。渡辺氏は1日のインタビューで利上げなど金融引き締めは「絶対にあり得ない」とした上で、物価上昇が賃上げにつながる可能性があり、実現のために金融緩和を維持する必要があることを日銀は国民に説明すべきだと語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-03/RCU8WJDWLU6A01

上記の通り、この段階では利上げを完全に否定する発言があるものの、賃上げ上昇のチャンスにも触れています。なお、この3日後に、黒田総裁が「家計の値上げ許容度が上がっている」という発言で炎上していますが、これ渡辺先生の調査をベースにした発言だったんですね。今回確認して初めて知りましたが、最初聞いたときはまぁSNS時代なら炎上するよね、という感覚でしたよね。

②2022/10/24 「日本人の「給料」はなぜ上がらないのか…賃上げを実現するための「根本的な解決策」」/マネー現代

異次元緩和を止めれば金利が正に戻り、優良企業とそうでない企業の金利差が復活し、金融のゾンビ企業は一掃できる。しかし、金融の非価格競争はそれで是正できるとしても、商品の価格と賃金の非価格競争は残ってしまう。金利というおカネの価格を殺すことなく、商品の価格と賃金のダイナミズムを取り戻すにはどうすればよいだろうか。
おカネの「量」と「価格」(つまり金利)でいうと、「価格」に問題があり、ここは正常化の必要がある。これに対して、「量」は何かの悪さをしているわけではないので、このまま放置でも構わない。
「量」にはさわらず「価格」を正常化する方法としては、金利を引き上げると同時に、おカネ(日銀当座預金と現金)に同幅だけ付利することが考えられる。

https://gendai.media/articles/-/101250?page=7

次はこちらの10月の記事です。結構長い記事なのですが、後段にて、金利引き上げに関して言及しています。異次元緩和が金融環境に与える悪影響を緩和するための手段という印象ですが、この段階ではテクニカルにどのように実施するかについては議論が必要と、まだかなりトーンは弱いように思われます。

③2022/12/1「最小限の金利引き上げ、一案」/日本経済新聞

https://www.centralbank.e.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2022/12/20221201%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%95%99%E5%AE%A4.pdf

この12月初の記事にて、デカデカと記事名に金利引き上げも一案と記載がされており、この時には10月の段階に比してより踏み込んだ記載をいている印象があります。一方で、より具体的には、"金利が需給に応じて変化するという柔軟性を取り戻すこと"という言い方で、単なる金利引き上げに限らない可能性に言及していました。後付けですが、今回の日銀による「長期金利許容幅」の拡大というのが、この趣旨と合致するのではないかと考えています。ゼロ近辺といいつつも、実態としては0.5%までを許容するということで、やや直接的な利上げという印象を避ける狙いが見て取れます。
一方で、渡辺先生は、あくまで価格・賃金の改善を先に処理すべきであるという論調でした。これについては、ある種急性のインフレではあるものの、消費者の値上げ予想のマインドのある程度の定着、それに伴う賃上げの動きが活発化する機運、という点から、処理しきったとは言えないものの、ややポジティブに捉えられる変化が見て取れるということではないかと思っています。
そうすると、渡辺先生の言及する、金融の非価格競争にも手を付けだすことで、ゾンビ企業が蔓延るような現状を打破し、競争力がない企業が適切に淘汰されるような"健全な"経済を取り戻すための第一歩としての今回の日銀政策に繋がるのではないかという見立てをしています。

まとめ

冒頭でも記載した通り、この記事はあくまで後付け的に、黒田総裁と渡辺先生の政策・発言を比較したものです。これだけを見ると、日銀が渡辺先生をブレーンとして政策を考えているのではないか、といった邪推をしたくはなりますが、このタイミングでの公表となったのは、黒田総裁の任期満了が近づいていることにも起因しているように思われます。本来であれば、もう少し賃上げが実態的に起こっているかを確認してからの方が、マーケットもだんだんと正常化(利上げ)をおり込むのではないかと思うのですが、残り半年弱の人気の中で、少しでも正常化に向けた動きを開始してバトンを次に渡したい、という意図は十分にあるんだと思っています。
足元、為替相場は大きく反応していますが、サプライズによる一時的な反応という側面が相応にあるかとは思います。年末年始にかけて商いは減っていくので、やはり年始以降、どのように推移していくかを注視していった方がよいのかなという印象ですね。

と、まぁ好き勝手にいろいろ書いてきましたが、自分の思っていることを書き起こすのって気分がいいですね笑

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