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ボツワナダイヤモンド✨ダイヤは人を助けるか?

ダイヤモンドの収益で貧困から抜け出すことができた国があります。それはアフリカの南部に位置するボツワナ。同じアフリカ大陸のコンゴ共和国に住んでいる私は、ボツワナを訪問した時に「アフリカの豊かさ」を感じました。

ボツワナの首都ハボローネの空港、ダイヤモンドの形の屋根

産油国でありながら、時々ガソリンスタンドにはガソリンが無いコンゴ共和国。アフリカだからこんなものかと思いつつもう8年くらい首都のブラザビルに住んでいますが、この度ボツワナを訪問して、その整ったインフラ設備や住宅街の様子に感心しました。54カ国あるアフリカを一括りにしてはいけないけれど、もはやアフリカ=途上国ではない国があります。

そのボツワナの国民が恩恵を受けているダイヤモンド、その背景を知るきっかけになったのは、BOTSWANA’S DIAMOND の著者、マイク(Mr. Michael C. Brook)との出会いでした。

出版されたご自分の本を使って説明をしてくれるMr. Michael C. Brook
場所は、引退後に運営されているクロコダイルサファリで

イギリス生まれのマイクはニューキャッスル大学で地質学を学び、1980年にデビアス社のボツワナでの探査に参加しています。

探査時のマイク、1982年

その後バーミンガム大学の水文地質学の修士を取得、1987年から水資源コンサルタントの会社に就職して、翌年からアフリカに渡りアングロアメリカンコーポレーション、デブスワナ、デビアスの採掘事業に水文地質技術を提供してきました。

ダイヤモンド探査の様子(Botswana’s Diamondより)

また15年間に渡り、中東のオマーン国やアラブ首長国連邦で政府の資源省設立にも貢献。環境の大切さを深めた多くの論文を書き、ユネスコにも寄稿しています。中東勤務後はボツワナのデブスワナ社の水文地質学者として従事しました。グローバルな経歴が素晴らしいですね。

ボツワナのダイヤモンド鉱山 Google 
(旗のある位置は世界一の湿地帯、世界遺産オカバンゴデルタ)

ボツワナの国土の2/3以上はカラハリ砂漠の厚い砂や堆積物で覆われています。デビアス社の鉱物部門(DBCM)は、1932年に探鉱調査の申請をボツワナ政府に行いその数年後に許可が降りましたが、準備や南アフリカの鉱山稼働もあり、調査が開始されたのは1954年でした。そしてダイヤモンドが眠っている可能性があるキンバーライトの発見は1967年。その後も長年に渡りデビアス社に限らず他社の鉱物会社が粘り強く探査した結果、2013年末には287個のキンバーライトが発見されました。

ボツワナのキンバーライト(Botswana’s Diamondより)

キンバーライトとは、カンラン石と雲母を主要構成鉱物とする火成岩で、キンバーライトがまとまってある場所をキンバーライトパイプと呼びます。その中にダイヤモンドが産出されるパイプがあります。ボツワナは大きく良質なダイヤモンドが産出されると世界でも知られるようになりました。例えば、2016年にカロエ(Karowe)鉱山から発見された原石は「Lesedi La Rona」、ボツワナのツワナ語で「私たちの光」と名付けられ5,700万ドルで個人へ売買されました。

Lesedi La Rona原石のレプリカ
手に持つとその大きさがわかりやすいですね

2021年にはジュワネン(Jwaneng)鉱山で、史上3番目の大きさと言われる1,098カラットのダイヤモンドの原石が発掘されました。これはダイヤモンド企業のデブスワナ社が発掘したもので、長さ73ミリ、幅52ミリ、厚さ27ミリの大きさです。ジュワネン鉱山は立方体の原石を生産することでも知られています。さらに同年7月8日、カナダの採掘企業ルカラ・ダイヤモンドもボツワナで、1,174カラットのダイヤモンドの原石を採掘し、世界第3番目の巨大ダイヤモンドの記録はあっという間に塗り替えられてしまいました。それにしてもこのような大きさの良質なダイヤモンドがいくつも採掘されるとは、ボツワナさすが…。

さて、ボツワナのデブスワナ社/DEBSWANA(Debswana Diamond Company)は、デビアス社とボツワナ政府が半々の投資で設立したダイヤモンド会社です。

DEBSWANA本社

この会社が設立されたことでボツワナでは多くの雇用が生まれました。従業員の97%はボツワナ人で、現在ではデブスワナ社の利益5ドル(米)毎に4ドルは税金、ロイヤルティ、配当を通じて政府の歳入になります。また鉱山地域の病院、学校建設などの支援も行なっています。

ボツワナの紙幣

20プラ紙幣には、1960年代後半にオラパ(Orapa)鉱山に建設された国内初のダイヤモンド加工工場が描かれています。国がどれだけダイヤモンド産業を誇りに思い重視しているかがわかりますね。

ボツワナを含む世界の35%の原石の販売には、南アフリカに本部を置くDTC(Diamond Trading Company)という、デビアス社が出資した会社を通して行われます。

DTCBの本社

2006年にはDTCB (Diamond Trading Company Botswana)がボツワナの首都ハボローネに設立されました。それまで(100年以上)は原石をロンドンに送り選別と評価がされていました。それをボツワナで行うことで付加価値も高まり、ボツワナ政府が自国の天然資源からより多くの利益を得ることができます。

ボツワナ政府、資源省の言葉に「ダイヤモンド採掘への我々の目的と願望は国内に全てのダイヤモンドパイプラインの活動が持続可能な形で行われるこである」とあります。

2008年にダイヤモンドテクノロジーパークが設立され、原石の販売のハブ(中継地)としての役割もボツワナは担っています。ダイヤモンド産出国のカナダ、ナミビア、南アフリカの原石がボツワナに集まります。この仕組みで更に多くの利益を上げることができます。

産出国の原石証明と種類分けされた原石
原石売買に大切なキンバリー・プロセス証明書

ボツワナでの原石の売買にはキンバリープロセスが必要です。キンバリープロセスとはとは、ダイヤモンドの不正取引がテロリストの資金源になっている状況に憂慮して、原石売買の透明化を図る為の制度です。不正に取得された原石の輸出入を規制することを目的とし、2002年にスイスで採択されました。現在は54の国と地域が参加しています。

原石を入れる袋、手前が2,500カラット、大きい方は10,000カラット!

ボツワナでは、2007年に初めてサイトホルダー(16社/原石を購入する権利を持つ会社)が選択されました。現在ではサイトホルダーの売買とオークションを通じてダイヤモンド原石が流通しています。

2011年、ボツワナはInternational Diamond Manufacturing Association の会員にもなりました。それまでのダイヤモンドの採掘から選別と評価や原石の販売だけでなく、ボツワナ国内で研磨、ジュエリー制作まで行うことを目指します。産業が増えると働く人も多様化します。さらに第二ビジネスとして、マーケティングや銀行セキュリティ、情報技術の分野でも雇用が増加されました。

日本の外務省のデータを参照すると、「ボツワナは1966年にイギリスから独立、当時の人口は55万人。独立当初のボツワナ経済は、牧畜を基幹産業とし、牛肉の輸出に全面的に依存していたが、1967年にダイヤモンドが発見されて以降、急速な経済発展を遂げた。ボツワナの経済は、産出高世界第2位を誇るダイヤモンド産業がGDPの約2割、政府歳入の約3割を占め、30年間の経済成長率が平均約9%と世界的にも有数の高い経済成長を遂げた。一方で、政府は、ダイヤモンド依存型経済からの脱却を目指し、長期的経済開発に向けた「ビジョン2036」に基づき、産業の多角化を進めている他、雇用創出、格差是正、地域インフラ整備等を内容とする「第11次国家開発計画」を実施中」とあります。

イギリスからの独立当時は一人当たりの所得は80ドルという最貧国のひとつでした。独立した頃の数年間は干魃に見舞われ、独立後の最初の5年間はイギリスに依存するしかない状況でした。1967年から1971年にオラパ鉱山が発見されたことで経済が成長していきます。独立直後の輸出収入は牛肉が主でしたが、80年代からはダイヤモンドが輸出をけん引し、90年代には中所得国になりました。昨年2022年のGDPは7,738ドルです。

現在ボツワナは外貨収入の7割をダイヤモンドから得ていますが、収入は世界経済によるダイヤモンドの価格下落に大きく影響されます。ここ最近の合成ダイヤモンド市場の成長も産出国には脅威になります。だからこそ、政府はダイヤモンド以外の鉱物や産業にも力を入れています。

さて、タイトルのダイヤモンドは人を助けるか?
この答えは、ボツワナにおいてはYESです。それを実現できたのはダイヤモンドが見つかっただけでなく、まともな政治の力も必須であったと思います。ボツワナの政治が開放的で自由かつ公正であることが、国の安定と経済成長に繋がったのでしょう。ボツワナは汚職の低い国です。2022年のボツワナの腐敗認識指数第35位(因みにコンゴ共和国は164位、第一位はデンマーク、日本は18位) きちんとダイヤモンドの税収が教育に回り、医療や公共設備の充実へにつながっています。

BOTSWANA’S DIAMONDS の表紙

この本はボツワナのダイヤモンド、地質に関する専門的でかつ歴史の本になっています。とても読み応えがありました。

現在のマイク、この環境もボツワナの美しさ

現在、著者のマイクはダイヤモンドの業界から引退して、ボツワナの首都ハボローネでワニのサファリを運営しています。
🐊Crocodile pools river safaris and chalet 
https://www.riversafarisbotswana.com/

ボートで川を下り野生のワニを探します。
ワニ、見えるかな?😝

またいつかボツワナを再訪したいです。





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