蜃気楼書店

「蜃気楼書店」は、店舗のない・本を売らない(たまに売る)書店活動のための屋号です。「本…

蜃気楼書店

「蜃気楼書店」は、店舗のない・本を売らない(たまに売る)書店活動のための屋号です。「本について書くこと」「本について語ること」「本を通じて語ること」のできる場づくりを目指します。

最近の記事

阿久津隆『本の読める店 フヅクエ 案内書きとメニュー(フヅクエ初台)』

「心地よく本を読みたい」人のための、本を読んで過ごすことに特化した店、fuzukue。ここがどんなお店か、どんな風に過ごしてもらいたいか、料金システムがどうなっているか、どんな飲み物や食べ物があるか、などが全49頁にわたって書かれている。 雑記 京王線と京王新線を間違えたりしたのち、どうにか辿りついた初台のfuzukueはすばらしい空間だった。 入店して手元に置かれる店の案内書きが、もはや一冊の本だ。 というのはページ数もそうだし書かれている内容、こういう店なのでこう

    • 藤子・F・不二雄『大長編ドラえもんvol.12 のび太と雲の王国』

      劇場版『ドラえもん』の原作として藤子・F・不二雄が執筆した12作目。 雲の上に暮らす天上人たちは、地上人による環境破壊によって住む場所を脅かされていた。 報復として大洪水を起こし地上文明を滅ぼそうとする天上人とドラえもん一行との攻防を描く。 雑記 子供の頃、家族の前で感動して泣くことは恥ずかしいと思っていた。 親も家の中で涙する素振りを見せたことがなかったし、自分もドラマを見て泣きそうになっても「泣いてませんよ」みたいな顔をしながら、いかに自然に目尻を拭うかを考えていた

      • ひらいめぐみ『転職ばっかりうまくなる』

        倉庫作業、コンビニ、営業、書店スタッフ、ライター、事務局……。20代で6回の転職を経験した著者によるエッセイ。 雑記 大学を出て数年経ち、仕事を辞めてふらふらしていた頃、友人の結婚式に出席した。 私はその期間を自分なりに楽しく過ごしていたのだが、出席した友人の多くは一般企業に正社員として勤めていていて、かたや自分は確固たる肩書もなく、トイレで遭遇した友人に近況を話すと「ぱーちゃん(当時そう呼ばれていた)は、ぱーちゃんになるんやろな」と言われた。 当時、先行きが何も見え

        • イ・ラン 『話し足りなかった日』

          1986年韓国に生まれ、ミュージシャン、作家、イラストレーター、映像作家として活動する著者によるエッセイ。 雑記 むかし勤めていた職場の先輩と給与の話になったとき、月給額を明かすと「それは買い叩かれすぎだ」と言われた。 大学を卒業するとき自分が「好きで」選んだ分野で、前職の給料はさらに低く、当時に比べれば改善されていたのであまり気にしていなかったのだが、先輩の言葉で目が覚めるようだった。 そうか。 もっとお金欲しいって言っていいのか。 「やりがい搾取」という言葉も、

        阿久津隆『本の読める店 フヅクエ 案内書きとメニュー(フヅクエ初台)』

          渡辺京二・三砂ちづる『女子学生、渡辺京二に会いに行く』

          津田塾大学「多文化 国際協力コース」の学生が熊本の思想家・批評家 渡辺京二を迎えて行われた勉強会の記録。 雑記 「学生時代、サークル何やってたんですか?」と聞かれて、いつも答えに困る。 軽音とかサッカーとかならわかりやすいのだが、私は「国際協力支援」を掲げるサークルに所属していた。分かりづらい言葉だが、貧困問題や難民問題など、世界規模で起こる社会的な問題について考えたり情報発信するような活動だ。私は小学校や高校に行って外国文化に触れるゲームや貧困問題を扱うワークショップ

          渡辺京二・三砂ちづる『女子学生、渡辺京二に会いに行く』

          『アルテリ 十一号』 田尻久子「新しい場所」

          熊本の橙書店の店主・田尻久子らが年2回発行している文芸雑誌。 渡辺京二、坂口恭平、石牟礼道子など熊本ゆかりの文筆家らが執筆者として参加。 本書掲載の田尻久子のエッセイ『新しい場所』を読んで、いま(2024年3月 当時)テレビで放映中のドラマ『不適切にもほどがある!』を惰性で観るのをやめようと決めた。 過去のクドカン作品が好きで今作を見始め、阿部サダヲの演技や毎回の小ネタに笑いながらも、特に最初の数話はすっきりしない気持ちになることが多かった。今作を愛している人を否定する

          『アルテリ 十一号』 田尻久子「新しい場所」