【3分書評】タブーの「壁」を超える!『世界の宗教は人間に何を禁じてきたか』
「自分と違う」そう感じた数だけ、相手も違いを感じるはずだ。ギャップの壁は超えるには、自分と相手との距離を相対化するといいだろう。そのためには自分の位置と他者の位置を把握することで解決する。一見すると難解そうな宗教のギャップは、人間関係の壁よりも容易かもしれない。なぜなら宗教の壁は少しの知識を身につけるだけで超えることが容易だからだ。
一見すると、ルールや規則は自由を制限するだけのように見えるが、一方で自由の源泉にもなる。法律がなくなった国家では生存すら怪しいことは想像しやすい。戒律も人間に何かを推奨し、もしくは禁止することで、それ自体生存してきた文化的遺伝子なのである。自分と相手が違うルールのもとにあること、違うコミュニティに属することを「壁」と考えてはもったいなくはないだろうか。
本書は、食や結婚、お金などのテーマで8章に分かれている。衛生面や栄養バランス、性的指向の遺伝的な要因など、客観的な評価も興味深い。頭では地動説を理解していても、感覚的には天動説で生きているというのも、改めて言われると無自覚さに気がつく。太陽は昇っては沈み、月は満ちては欠け、赤道直下における音速を超える地球の自転は感じることができない。人間の認知機能はさほど進化していないことを思い知らされる。
グローバルな交流のある方は食の戒律がおすすめである。異なる食文化に触れたとき、本当にこれを食べるのかと疑問を抱くことがある。それ以上に戒律を持つ人にとっては、禁じられている食べ物を口にすることはあり得ないだろう。接待や食事に誘うときに知っておくとためになるはずである。
「なぜあの人はこの宗教を信じるのか」この疑問はお節介になりかねない。それなら、「どういう文化的な背景でこういう振る舞いをするのか」とした方が良いかもしれない。本書は、戒律をもとに宗教文化をひもとく手がかりになるだろう。
『世界の宗教は人間に何を禁じてきたか』
作者:井上順孝
発売日:2016年3月17日
メディア:河出書房新社
追伸
第一弾からなかなか手に入りづらい書を選んでしまいましたが、戒律をもとに、宗教文化を多角的な視点で学べる良書だと思います。次回は神道の神について投稿しようと思います。書評は宗教関係です!お楽しみに!!!
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