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#野生の月評

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「月評」スピンオフ企画。新建築社刊行の雑誌『新建築』『住宅特集』などの掲載作品・論文にまつわる感想などの記事をまとめていきます。「#野生の月評」とつけてご投稿いただけると嬉しいで…
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ナリワイながら暮らすとは

つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝によって手掛けた練馬の職住一体型アパートリノベーションプロジェクト「欅の音terrace」。晴れて『新建築2019年2月号』に掲載していただきましたが、そこに載っている解説文とは違う文脈の、このプロジェクトの背景となる思想について個人的にまとめました。 ***** 住居と労働を切り分けるという都市計画の機能的分離が推進されたのは、1933 年に実施されたCIAM 第4 回会議における成果である「アテネ憲章」に依るところが大きいだろう。 ここで都

軍隊経験と建築家|菊竹清訓と清家清、それぞれの戦後民主社会な「格納庫」

新建築主催「12坪木造国民住宅」コンペで佳作に選ばれた菊竹清訓案(新建築1948.4)と、清家清の建築家デビュー作となる「うさぎ幼稚園」(竣工1949、新建築1950.4)(図1)。特徴的なシェル形の建築は、ともにそれぞれの戦時中の軍隊経験に由来しています。 図1 ふたつのシェル型屋根建築 敗戦を境にして、民主的変革を遂げたといわれる日本社会。でも、そんな社会の建設を担った若き建築家たちは、やはりそれぞれに戦争を体験し、自らもその技術・技能でもって「一億総火の玉」の一端を

みんなが見る建築(論)の姿─「野生の月評」を紹介,その1!

今年の6月よりスタートした「野生の月評」. 『新建築』『住宅特集』などに掲載された建築プロジェクトに触れた,皆様の投稿を『#野生の月評』マガジンにpickしていっています. 誌面上の紹介だけでは伝えきれなかった建築の魅力,雑誌自体の感想などそれぞれの投稿からは学ぶことばかりです. pick数も40を超え,量が増えてきましたので,イントロダクション記事として,それぞれの投稿が,どのプロジェクト・論考,雑誌に触れているかを紹介する記事を順次投稿していこうと思います. 本記事

アノニマス建築特有の魅力を理解し、法的知識とデザイン力で建築を再生し現代に適合させるーー再生建築研究所による「ミナガワビレッジ」

こんにちは。 アーキテクチャーフォトの後藤です。 先日、東京・表参道で行われた再生建築研究所が手掛けた「ミナガワビレッジ」の内覧会に言ってきましたのでその感想を書いてみたいと思います。 新しく再生されたミナガワビレッジは、SOHO・コワーキングスペース・カフェ等からなる複合施設です。 (道路から見る) 改修前の「ミナガワビレッジ」は、1957年に最初の住宅がこの敷地に建てられたのがそのはじまりです。2016年の計画開始に至るまでの時代の流れの中で減築や増築が繰り返さ

清家清はなぜ「家相」を語ったのか|ウンチクと迷信による啓蒙戦略

方法としての「ダジャレ」ネスカフェ・ゴールドブレンドのCMで「違いのわかる」建築家(*1)として一躍ポピュラーになった清家清(1918-2005)は周囲が困惑するほど大のダジャレ好きとしても知られます。 そもそも彼の名前自体が冗談のように見えなくもない(*2)。実際、清家を知る人たちは口を揃えてそのダジャレ好きを指摘しています。 たとえば、清家にインタビューしたときの印象を建築家・中村好文は「清家さんは飄々とした仙人のような方で、ニコニコ顔で語られるそのお話もどこまでが真

青木淳さんの「矛盾を見つけてそれを解決する」という建築の作り方を、アドルフ・ロースで考える

こんにちは。 アーキテクチャーフォトの後藤です。 今日は、青木淳さんのほぼ日での糸井重里さんとの対談中の言葉を紹介してたいと思います。 そして、丁度最近a+u誌で2号に渡って特集があった、アドルフ・ロースの建築について、青木さんの言葉で読み解くことができる部分があったなあ、と思い返したことを書いてみたいと思います。 *** (青木淳さんは日本を代表する建築家で、ルイヴィトンの表参道店をはじめ多くの建築設計を手掛けていることでも知られています) (アドルフ・ロースは、オ