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#野生の月評

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「月評」スピンオフ企画。新建築社刊行の雑誌『新建築』『住宅特集』などの掲載作品・論文にまつわる感想などの記事をまとめていきます。「#野生の月評」とつけてご投稿いただけると嬉しいで… もっと読む
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2018年5月の記事一覧

アノニマス建築特有の魅力を理解し、法的知識とデザイン力で建築を再生し現代に適合させるーー再生建築研究所による「ミナガワビレッジ」

こんにちは。 アーキテクチャーフォトの後藤です。 先日、東京・表参道で行われた再生建築研究所が手掛けた「ミナガワビレッジ」の内覧会に言ってきましたのでその感想を書いてみたいと思います。 新しく再生されたミナガワビレッジは、SOHO・コワーキングスペース・カフェ等からなる複合施設です。 (道路から見る) 改修前の「ミナガワビレッジ」は、1957年に最初の住宅がこの敷地に建てられたのがそのはじまりです。2016年の計画開始に至るまでの時代の流れの中で減築や増築が繰り返さ

門脇邸見学|田中義久×中山英之対談

一昨日の午前、少し雨雲が漂う中、最近できた門脇耕三さんの自邸に伺った。 初めてこのプロジェクトを知ったのは、二年前のちょうど今頃だった。私の卒業制作を話をする機会があり、そこに門脇さんも同席されていて、自邸のプロジェクトと、私が描いていたアクソメ図と近いものを感じ、話をしていただいたことを覚えている。 しかし、こんな建物がどのようにして現実にできるのか、想像が及ばない。いつかきっと見てみたいと思っていたプロジェクトだった。 そんな中、門脇邸に知人が訪れるというので、勢いで

都市で生きるとは?一一『ひとり空間の都市論』

建築家・伊東豊雄が、1989年に雑誌「新建築」に寄稿した論考「消費の海に浸らずして新しい建築はない」。この時私は生まれてすらいないが、どうやら当時の建築家社会+その界隈に、強烈なインパクトを与えた論考らしい。 たしかに、毎月コンスタントに発刊される雑誌の冒頭たった数ページの論考が、今もなおあらゆる局面で引用されるというのは、情報が横溢するこの時代には少し驚きを覚える。 伊東は「凄まじい勢いで建築が建てられ」と語り始め、高度経済成長期のピークを経て社会が成熟し始めた当時の建築界