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感情探偵

『さみしい』

多分この感情に名前をつけるなら、
この名前が1番相応しいだろうか。

突然幽霊のようにふわっとやってきて、
精一杯の不安や悲しみを押し付けてくる。

胸の奥がざわついて
体内がスライムみたいにグニョグニョと
かき混ざっている感覚。

深呼吸を繰り返す夜明け前。

しかしその根源というのは、わからなかった。

昔と比べて孤独なわけでもない。

何に寂しがっているのか、

泣きたくなっているのか

わからないのが1番厄介なのだ。

というのも、
子供の頃から私は、
一人で居ても
寂しいと感じることがあまりなかった。

共働きで夜中まで誰も帰ってこない家で、
祖母に「寂しくないの?」と頻繁に聞かれたけれど、

申し訳ないほどに全く寂しくなかった。

小学生の私は
寂しさをうまく打ち消す方法
を知っていた。

泣きたい時はぬいぐるみと話していたし、

兄弟と遊びたい気分の時はゲーム実況を見て、
ゲームを持たずとも近所のお兄ちゃんとゲームしてる気分になれた。

むしゃくしゃする時や
学校の抑圧に耐えられそうにない時には
ボカロやアニメの世界に入り込んで
現実を忘れていた。

無邪気で純粋な心が
知らない間に自分を守っていた。

でもそれは
言い換えれば
寂しいという気持ちに蓋をしていたということなのかも。

そして、
その蓋が今、勢いよく開いた。

ばっと溢れ出した感情に体がびっくりしているんだろう。

体には申し訳ないけど、
でも、よくよく考えると、
いいことのような気もしてきている。

今の私は寂しさを

『さみしい』と感じられるようになった。

そんな気がする。

知らない自分に会えたような、

そんな気がしている。

それが大きな収穫なんじゃないだろうか。


なんて独り言をこぼしながら。


また今日も
何かを創ることで
『さみしい』と対峙する日々。

『さみしい』を通して、
大人になった自分を受け止める日々。






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