竹之内広人

仕事を探しているんです。

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最近の記事

「風邪をひいた時に見る夢」という言葉

 いつごろからだろうか。現実離れした、ナンセンスな映像作品などに対して「風邪をひいた時に見る夢(のようだ)」と評しているコメントを目にするようになった。風邪の部分は高熱やインフルエンザに置き換えられていることもしばしば。  恐らく、最初に誰かが、どこかで、なにかの作品に残したコメントなのだろう。或いはテレビで芸能人が発したひとことなのかもしれない。いずれにしても、ここ数年で目にするようになったこの言い回しは、誰かの言葉に端を発し、主にネットを媒介として人々に広まったと思われ

    • 隣人

       アパートの錆びた鉄階段をカンカンと、ゆっくり降りる音、足早に駆け上がる音が響いている。隣人が引っ越すようだ。  下に停まっている軽トラの荷台に、友人だろうか、歳の近そうな男性と2人で家財やダンボール箱を次々と運び込んでいる。朝から隣でガタガタとなにやら音がしていたわけがわかった。荷物はおおかた運び終えたのだろうか、荷台は満杯になりつつある。  その様子を見下ろしながらタバコを吸い終えた私はそそくさと窓を閉め、窓際を離れそのまま炬燵に足を突っ込んだ。起きてからつけっぱなしの

      • 明日から俺は

        稀代の鬼才に乞うご期待 照れるレッテル自ら貼ってる 誇大妄想 土台無理そう 努努忘れぬ春の夢 時代の寵児を夢見るも 懈怠に飲まれて散りぬるを 憧れ目指した風雲児 黄昏目にした求人誌

        • スモールワールド

          所詮この世は性悪説 騙す 企む 子泣くらむ 大陸からの不正アクセス 我関せず このまま暮らす 来たる足立の四畳半 癒す私の痴情譚 淀みに淀むルサンチマンに 犯され根から腐っちまう かくしてできた 小さな世界 小さなその手に報せたい 持たねばならない生き抜く術を 善意悪意を見抜く目を

        「風邪をひいた時に見る夢」という言葉

          夢貧乏

          とある南国、高級ホテル。 クーラーの効いたスイートルーム。 スイーツ頬張り海眺む。 流れる記憶が水平線に スイスイ滑ってやってくる。 全てを手にした今だから、 体一つで生きていた あの体たらくを懐かしむ。 昔むかしのことでもないが 言葉も出ないあの感情。 一文なしで家もなし 見境なしに仕事探し 汗水垂らして西東 しかし止まらぬ勇足 何も持たざる日々の中 唯一あったものがある。 全てない頃、夢だけあった。 たった一つの夢だけが。

          遠くの海へ連れてって(21歳)

          飛ぶイルカにしがみつき南の海へ。 特別なことをしているのだ。 踊り狂う現地人と仲良くなれたらなあ。 もうやめなさい、やめなさい。 僕らの敵はただ一つ。さあ、力を合わせないと。 きままなドルフィンキックを眺めていると涙が溢れる。 揺れる揺れる、荒波超えてどこまでも!

          遠くの海へ連れてって(21歳)

          ゼロのファイター

          回り回るは摩尼車 功徳をくるくる積んでいく しばし眺めてむせ返る 香の匂いを後にする 今日も地球は回って回る されど私は怠惰な獣 無為に過ごした罪悪感  気づけば窓は黒塗りで さながら都合の悪い歴史を 隠す仇なす進駐軍 撃ちてし止まむ我が機関砲 だが仇なす性欲無尽蔵 己をよく知り私利私欲 抑止してこそ真人間 東の空が白む頃 知らぬ明日など目も暮れず 布団を深く被っては 惨めな今日に墨を塗る

          ゼロのファイター

          おごりびと

          掬った金魚と家路を急ぐ。 透明な虫カゴを引っ張り出し、ミネラルウォーターをどぼどぼと張る。 食パンを細かく細かくちぎり与えると、彼は言うのだ。 「なぜ一人にするのか。」と。 そうか。救ってあげたわけではないのか。 悲しいが、彼を悲しませる方が悲しい。 ポリ袋に戻して公園に戻るが後の祭り。 ポツリと謝り家路を辿る。 虫カゴの中、食パンを食べ終え、彼は黙っている。 明日、隣町の祭に行くことを彼に約束した。

          おごりびと

          アートマン

          駅前広場に突っ立って 魂救うと説く老婆 信教 毛頭縁はなく 立ち去り帰ってきたものの 何かを信じるその神秘 惹かれ憧れる信仰心 古代インドの悟りを学び 梵我一如に目覚めても 暮れゆく空を眺めつつ 腹をすかせて町中華 いくら胃袋満たされど 脳は変わらず海綿体 海綿体に血が集い お次の欲も満たされて そのまま瞼が世界を覆い 眠りに落ちるその刹那 梵我一如を垣間見る

          アートマン

          サルタバコ

          タバコを咥え、煙を吐く。 それは空へ登ると、消える事なく雲になった。 そこへひょっと、如意棒を携え孫悟空が飛び乗った。觔斗雲だったのだ。 しかし彼もみるみるただの猿へと戻り、終いには動物園の猿に成り下がる。 ところが、その猿はみるみると人間になった。 そしてその人間はタバコを咥えたのである。

          サルタバコ