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#11 大規模新築マンションとのほろ苦い出会い

遅くなった昼飯を急いで食べたけど時間を見るとどうも間に合いそうにない。申し訳なく思いつつ遅刻の連絡を入れた。次は電車に乗って、10年ぶりに新築マンションのモデルルームに向かう。
10年前、両親に連れられてなんか暗くておしゃれなお部屋(モデルルーム)を見て、まだCMでしか見たことのなかったファミレスでハンバーグをご馳走してくれて、灰色のネットで覆われた大きな建物を眺めた日をかすかに思い出す。

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ーーーー回想ここからーーーー

新築大規模マンションとの出会い

ぼくが高校生の頃、両親が突如として新しいマンションの部屋を買った。子供部屋など今まで無かったし、冷房をつけてもらえずに中々眠れなかった夜も数しれず、普段の献立はスーパーの特売に支配されているし、家族での外食は旅行のように貴重なイベントだった。スーパーでレジのバイトしてたときは、お惣菜を気軽に買っていくお客さんたちを羨ましく思いながら打ってた。そんなだったのに…

何がきっかけで買えるようになったのか分からないし今考えても計算が合わないけど、不思議なことに手に入ったことは確かだった。
旧居は(当時リーマンショックなうえ立地関係なく築古マンションが全く評価されてなかった相場ゆえ)渋谷区でも隅っこなら価値は二束三文だったらしい。ゆえに住み替えですら無く買い増し。

新築大規模マンションとの苦い思い出

あの工事現場を見た日から1年。念願の子供部屋、そしてオートロックから広いバルコニーにディスポーザーに床暖房、マンションの麓には生い茂る木々に大きなロビーに小洒落た雰囲気の様々な施設

それに郊外だから夏でも夜はしっかり涼しいし、冬歩けばオリオン座がくっきり見えるし、お店だって中にはカートを乗せるスロープがあるくらい一々大きい。
…旧居とはみちがえる環境に最初はワクワクした。パソコンもゲームも携帯もない新居での受験勉強も少しの期間なら新居のワクワクと相殺できた
が、大学に入った頃から次第にしんどさを感じるようになった。

まず駅徒歩が10分くらいと書いてあったはずなのに何故か乗れるのは家を出て20分後の電車、それでもギリギリ。遠い。小走りで頑張っても13分後が限界だった。何故こんなにも遠く感じてしまうのだろう…
のちのち家のドアを出て敷地の外に出るまでに5分、駅の入口からホームまで3分位かかっているのが原因ということに気づいた。
色々な共用施設があったところで、大学の交友関係とは全く関係のない立地なので人を招いたりなどしない…し自分一人で使う用事もない。ただ毎日脇を通過し、そのぶん家に着くのが遅くなるだけ。

管理費と修繕積立金に加えて、固定資産税も毎年10数万だの20万だのして高いと両親は嘆いていた。全部合わせると月当たり4〜5万円だった。旧居の3倍近くて、35年で積算したら2000万円近い。徹底した倹約のなか今まで塾代をなんとか頑張って支払ってくれた両親の感覚を見てると信じられない。
そのうえ建物が高いぶん土地の持分が少ない。都心に出るのに1時間半はかかる郊外なうえに駐車場1.5台分くらいしかない。戸建てならしっかり土地があり、もし維持が大変なら自分の意思で解体して売れる。マンションも住宅地の小規模なら容積率が狭小戸建と一緒なので、狭小戸建よりやや狭い位で住むし、いざ解体の時も意思決定に必要な人数がまだ少ない。
けどこんな大規模マンションは…土地の価値は二束三文なはず。なのにこんな支払いがずっと続くだなんて‥
自分が大人になってもこんな住まいは絶対選ばないだろうなと思っていたし、なんか中古価格が上がったらしいと言ってもきっと今だけのまぐれな話…相続には元々期待するなと言われてるし自分の道は自分で切り開きたいが、越後湯沢のリゾートマンションみたいに相続の時に売れずこの高額な維持費が延々と自分に発生して足元掬われるのは御免だ。なので負動産になる前に売って欲しいと願っていた。

結局ぼくはしだいに親の元を離れ、旧居で暮らすことが日に日に増えていった。どんなに建物が良くても立地と親の目のない自由には勝らない
けれど両親はなんだか新しいことを始めたり怒ることが減って表情が明るくなったり、食卓の食べ物がおいしくなったり、不思議とより充実した人生を再スタートしているように見えた。お金の出所は今でも分からないけど。

ーーー回想ここまでーーーー

新築大規模マンションとの再会

先日、今のぼくは1つの広告を見た。

「新川崎駅徒歩14分」「ローン月々6万円台〜」「共用施設充実」

中古マンションはSUUMOでいくらか検索かけて見ていたが、新築は見逃していた。こんなところにもあったのか…けれども大規模なマンションはそんな両親の住まいを思い出すとしんどいな、とも思う。新川崎駅からオフィスまでは近いからまだ通勤は全然良いのだが。
そして月々6万円台て、2000万円台でないと計算が合わない。どういうからくり??と思ったらやっぱりボーナス払い前提のアレだった。とはいえ物件価格はそれでも3LDKで4398万〜(※2020年当時)

やっぱり新川崎エリアは気になってたし、何より新築なのにまさか自分の予算内に収まるかもしれないなんて。まあ話は聞いてみるか。

母はきっとこういうマンションが好きなんだろうな…と思ってLINEを送ったら、「もうこれでしょ」て返ってきた。

そして妻には逆に冷静な目で見てほしいので「ああこれ母が好きそうなやつ(姑のとこはあまり好きじゃないだろうけど笑)。だけど気になるからちょっと見ても良い?」と適当に期待値コントロールをして伝えた。

街や物件の魅力の紹介コンテンツとかも充実してそうだけど、変に業者のテンポに引き込まれないよう見ないでおこう。なるべく物件概要以外をあまり見ないよう気をつけながらモデルルームの予約を申し込み、そしてここまで来た。

つづき


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