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性欲について

性欲の輪郭を捕まえたくて言語化した文章です。

あるエッセイストは「わけが分からないまま生まれ落ちて生きていくのが人生だ」と語った。
佐伯ポインティは「この世界は、いつかは終わる飲み放題」と解釈した。

ポインティのセリフは、燃え殻さんの『すべて忘れてしまうから』というエッセイで取り上げられていた。
何を飲んでもいいし、人それぞれ限界は違う。たくさん飲んだってたかが知れていて「楽しかったね、じゃあね」と手を振りあって笑顔で別れられたらそれが一番。という意味らしい。

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分からないものを無理に言語化したりしないほうがいいことも沢山ある。
クラブでバーテンしてた時にVIP席にきていた職業不明の刺青を入れている人たちの職業とか。

深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているから。

だが、自分の欲望の輪郭はある程度把握していたほうが幸せを掴みやすい。
また、ぼくは他者の欲望の形を知るのが好きだ。
叶わない恋愛にジタバタしたりする、非論理的な人の営み愛おしく思う。

そんなこんなで、言語化したなんらかの性欲についての文章だ。2,000文字くらい書いたものを、読み返して半分くらい削除した。

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恋人がいるとき、行為の前後の時間にいちゃついたりする時間が好きだ。

果てた後に賢者タイムはあるものの、やるだけやって「終わったから帰るか!」みたいにサクッとバイバイする関係は寂しい。

チェーンソーマンでマキマさんが「えっちなことは相手のことを知れば知るほど気持ちよくなると思う」と述べていた。これは完全に同意する。

ここでいう、「相手のことを知れば知るほど」は少女漫画でも似たニュアンスが変奏される。
幼馴染と付き合う少女漫画が多いのも、女性向けAVで行為に入る前に恋人との日常会話が20分も繰り広げられるのも、この「相手のことを知る」欲を満たすためだろう。

ぼくはこの「知れば知るほど」の原点にあるのは、意味に興奮する変態性なんだろうなと思う。コスプレと近い。相手のことを知っても知らなくても、おっぱいの形も腰のくびれも変わらない。

だが、一緒に東京タワーに登った思い出とか、雑誌のモデルをやっていて先月表紙を飾ったとか。そういう相手に付随する情報が欲情を掻き立てる。恋人の肉体だけでなく、情報に勃起する。

これがCAとかナースみたいな、職業とかの情報で興奮するならフェチとなる。
だが、1番官能的で独占したいのは、2人だけの思い出だと思う。たとえば、先の例で言うなら2人で旅行に行った体験とか、今まで誰にも話せなかった悩みを打ちあけあった関係とか。

めちゃくちゃ性癖を暴露すると、言葉遣いと所作が綺麗で惚れた異性が、自分だけに宛ててそっと差し出してくれる言葉が好きだ。

恋人とは0.01mm越しに粘膜を擦り付けあう数分間の行為だけでなく、そうやって心に触れるような経験や感性を交換したい。そういう人と付き合いたい。

夏目漱石の書簡など文豪の手紙は死後に公開されがちだが、そういう文章力や感性を持つ人が自分だけのために感性や語彙力を使ってなにかを差し出してくれるのが好きだ。

その人が好きな作家や、好きな歌、午後の日差しの傾き、スタバは新作が出たら行くことにしている習慣、とか。

そんな習慣や日常が糸を重ねて一反の美しい反物を織り上げるるようにして、今のその人が出来上がっている。
付き合って日常の会話を交わすことで、その人を構成する人生経験や感性という糸を可視化できたら嬉しい。

一緒に過ごした時間の堆積という糸を、お互いの人生に編み込めたらこの上なく幸せだなって思うんだ。


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