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YOASOBI「もしも命が描けたら」のこと。

こんにちは。桜小路いをりです。

3月は、いよいよYOASOBIの「THE FILM」が発売されます。
特典のインデックス、私はAmazonの「ツバメ」にしましたが、みなさんは何のデザインにしましたか?

今回は、初めて聴いたとき、かなりの衝撃を受けたYOASOBIの「THE BOOK2」収録曲「もしも命が描けたら」について、私の考察や、考えたことを書いていきます。

「もしも命が描けたら」は、鈴木おさむさんの舞台の戯曲が原作となっている1曲。
新たなYOASOBIの形を見せてくれた作品です。

原作のネタバレを含みますので、まだ読んでいない、という方はご注意ください。

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

この物語は、大切な人を亡くし、自ら命を絶とうとした月人(読み:げっと)が、月から不思議な力をもらう、というストーリーです。「不思議な力」とは、自分が描いたものに自分の命を分け与える力。

「自分の命を削って絵を描く」月人は、ある時からひとりの女性に惹かれていきますが、彼女には、他に愛している男性が。
彼が病魔に冒されていると知り、月人は自分の命を全て捧げて、彼に命を分け与えます。

かなりざっくりとした書き方になりましたが、原作の戯曲では、かなり暗く重いストーリーになっています。
私は比較的暗い話も読むタイプなのですが、正直読み進めるのが辛いほどで、途中途中で区切って読んでいました。心が元気な時に読むことをおすすめします。

そして、戯曲を読んでから改めてこの曲を聴いて、私は、かなりAyaseさんの歌詞への見方が変わりました。

これまでのYOASOBIの曲では、「歌詞の随所に小説のキーポイントが散りばめられているけれど、小説を読むまでは真意が分からない」という印象でした。
平たく言ってしまえば、「あらすじは言うけれどネタバレはしない」という感じ。

しかし、「もしも命が描けたら」では、驚くほど潔く「ネタバレをしている」ように思います。
物語の展開を、冒頭から結末まで一気に歌詞に起こしている。
初めて聴いた時は、本当にびっくりしました。(Ayaseさん、すごすぎます……。)

また、初発で直感的に感じた印象は、「不穏さ」でした。

綺麗で、美しすぎて不穏なような。
「神聖さ」のようなもの、といいますか……。

何度も聴き込んだ結果、気づいた「不穏さ」の正体。

それは、「禁忌」だと思います。

描いたものに命を分け与える力
枯れかけた草木も息を吹き返す
僕の残りの時間と引き換えに

ここの部分の「枯れかけた草木も息を吹き返す」というフレーズを、ikuraさんは、かなり低い声で歌っています。

命を分け与え、瀕死の状態の生き物や植物を生き返らせることは、自然の摂理に反したことです。

神様もできないような、「禁忌」。

それが鮮明に表されているのが、「枯れかけた草木も息を吹き返す」というフレーズなのではないでしょうか。

命を分け与えることは、自己犠牲と奉仕の精神に満ちた、尊いことかもしれません。

でも、それは、絵を描くという行為の裏に隠された自傷行為。

その「美しい」だけではないものが、この曲の根底にはあります。
MVの映像からもどこかグロテスクな印象を受けたので、そこにも通じるのではないでしょうか。

泣きながら彼の名前を
叫ぶあなたを見て決めた
一日だけ残して
僕の命全て捧げて描いた
そして彼は目を覚ました

この曲の核心とも言えるここのフレーズ。

「決めた」というikuraさんの声が、決意と覚悟、潔さの見える歌い方で、胸が詰まります。
ここの歌い方、すごく悩んだんじゃないかと思います。

また、この歌詞の後ろに聞こえるコーラスも、すごく切ないんです。
歌詞では、すごく冷静に自分の心と状況を語っているのに、コーラスはとても苦しそうで切なそうで、言葉にならない想いを声に出して叫んでいるように思えてなりません。

そしてひとり
あなたのこと
母のこと
君のこと想い目を瞑った
長い長い旅の終わり
やっとまた会えたね

このフレーズが終わり、曲の最後の最後に零れ落ちる「ぽろん」という音。
これは、命の最後のひとしずくが零れる音だと思いました。

その余韻が、さらに虚しさと切なさを際立たせていて、聴くたびに心がきゅっとなります。

また、この曲をカラオケで歌っていて気付いたこともありました。(一応「群青」を十八番にしていることが密かな自慢なのですが、この曲は本当に難しかったです。武道館で安定感抜群に歌っていたikuraさん、小説の朗読も含め大変だったと思います……)

音程のバーを見ていると、なんだか「心電図」のように見えてきたんです。(いかに音程のアップダウンが激しいのか……)

そして、「Lala……」というところで音程が真っ直ぐになる。
心電図が真っ直ぐになるということは、命が消える、ということ。

そんな考察も膨らむ1曲です。

また、武道館では、ikuraさんの原作の朗読から曲に入るという演出でした。
曲に入る前の「もしも、命が描けたら」というひと言が、とても印象に残っています。ikuraさんの朗読、私はとても好きなので嬉しかったです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

「もしも命が描けたら」、みなさんはどんな考察を立てますか?
この記事が、みなさんの心に少しでも残れば幸いです。


今回お借りした見出し画像は、「もしも命が描けたら」でも重要な役割を担う、月の画像です。植物の黒い陰と、白く冴えた光を放つ月、まだ日が沈み切らない時間なのか、深い青色の空。どこか神聖なその雰囲気に惹き込まれ、選ばせていただきました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。