その歌声は、命の温度と輝きを宿して。/花譜さんのこと。
こんにちは。桜小路いをりです。
今日は、バーチャルシンガーの花譜さんについて、カバー曲やオリジナル曲などをご紹介しながら書いていきます。
ここ最近の記事で花譜さんのお名前を出すときは、つい「ちゃん付け」で呼んでしまったのですが、今回の記事ではリスペクトを込めて「さん付け」で統一させていただきます。
最後までお読みいただけると嬉しいです。
「あなたの夜が明けるまで」
私が初めて聴いた花譜さんの曲は、あいみょんさんの「生きていたんだよな」だったのですが、その頃はお名前も知りませんでした。
この「あなたの夜が明けるまで」が、私が花譜さんのお名前を覚えた動画です。
出会ったのがちょうどパンデミックの最中だったこともあり、「またいつか 光の降る街を 手を繋いで歩きましょう」という歌詞が、すごく心に響いてきました。
吐息が交じるような歌声が、本当に「声が枯れるまで歌い続けている」ようで、ぎゅっと胸の奥が痛くなったことを今でも覚えています。
太陽のように天真爛漫で明るい主人公の女の子ではなくて、苦しさや葛藤を抱えながらも健気に生きる、優しいキャンドルの灯りのような女の子、という感じでしょうか。
その一瞬を生きることに一生懸命な、精一杯の想いのこもった歌声です。
感情の揺れがそのまま声の震えのような、泣き出す寸前のような。
この歌声を、それを聴いたときの想いを的確に表す言葉をもっていないことが歯がゆいくらい、素敵なカバーです。
「ノンブレス・オブリージュ」
これは、本家や他の歌い手さんの解釈を知っているからこそ、花譜さんの歌声で聴いたときに衝撃を受けました。
簡単に解説しておくと、「ノンブレス・オブリージュ」はピノキオピーさんの楽曲で、初音ミクちゃんが歌っています。
絶対に「呼吸」をすることがないボカロが「息が詰まる」「息を止める」と単調に歌うところ、ブレスなしで曲が進み、最後に深いブレスの音が入るところが印象的な楽曲です。
花譜さんは、「息が詰まる」や「息を止める」の部分を淡々と歌うのではなく、まるでひと息で歌っているように、段々と歌い方を強くして表現しています。本当に肺の中の空気がなくなって、苦しくなりながら歌っているような感じでしょうか。
その部分を聴いたとき、すごくドキッとしたことを覚えています。
なんというか、「あ、人間が歌っているんだ」という感じでしょうか。
最初は無機質な歌、という印象だったのに花譜さんのカバーを聴いて、これは紛れもなく一人の人間の叫びなんだと感じられた気がします。
「ヴィラン」
ちょっと趣向を変えて、こちらはカッコいい印象の曲です。花譜さんが歌うと、どこか可愛らしい感じになっていました。
「ヴィラン」の本性を隠していた大人しい女の子が、急に羽目を外して「ヴィラン」であることを周りに知らしめているような感じでしょうか。
この曲、特に「で?」というワードが聴きどころかなと思いますが、花譜さんのカバーだと「で!」って感じで可愛いです。
(この調子だと「可愛い」しか言わない気がするので、ちょっと視点を変えます)
特にいちばん最後の「挙句の果ての糜爛」というフレーズ、その後に息の音が入っているんです。
それは、満足気な吐息のようにも聞こえますし、声は出さないけれど息だけで笑っているようにも捉えられます。
自分の本性をさらけ出せてすっきりしているのか、周りが唖然とする様子を見て「してやったり」と思っているのか。
ぜひ、ちょっと音量を上げて聴いてみてください。イヤホンだとより分かりやすいと思います。
「不可解」
ここからは、花譜さんのオリジナル曲。
この曲は、ポエトリーリーディング(という表現でいいのかな……)がすごく印象的です。
カンザキイオリさんの作る音楽って、語彙力や音楽的センスだけでは作りえないような、独特の生々しさがある気がします。
花譜さんの人間にしかできない表現が詰まった歌声に、すごくぴったり。
歌詞なんだけれど、もとからある言葉を口にしているのだけれど、でも、「今まさに思ったことを、伝えたいことを、思いついたことを口に出しているんじゃないか」と思ってしまうほどの臨場感があります。
花譜さんの歌声って、第一印象だと不安定にも思えるのですが、聴けば聴くほど、その奥に一本ぴしっと通った芯を感じます。
そして、舌足らずな印象もあるのに、歌詞のひとつひとつが聴き取りやすいです。
ちなみに、少し前の武道館ライブの映像も素敵なので、そちらもぜひ。
この曲だけは撮影が許可されていたそうで、この動画は花譜さんのファンの皆さん(観測者さん)の撮った動画を集めて編集したものだとか。こういう試み、すごく温かみがあって素敵です。
「魔女」
花譜さんの武道館ライブ「不可解参(狂)」は、この曲で始まったとか。動画は、そのときのリンクを貼らせていただいています。
私が特に好きなのは、このフレーズです。
「魔女」というタイトルと、何度も出てくる「証明」という言葉。私は、なんとなく「魔女狩り」を連想しました。
現実世界では異端な人は切り捨てられて、居場所を奪われることもある。それでも、仮想世界では、どんな人でも、身分も見た目も偽って、違う自分でいられる。好きなことができる。
魂のない言葉で「魔女(異端な存在)ではない」と証明した現実世界。
魂のある言葉で堂々と「自分らしさ」を証明できる仮想世界。
仮想世界から現実世界へ、花譜さんが訴えてくるからこそ眩しくきらめくような、そんな1曲だなと思います。
V.W.P「共鳴」
こちらは、花譜さんも参加している5人組のバーチャルシンガーさんのグループ「V.W.P」の楽曲。
通称「神椿の魔女」です。メンバーは、花譜さん、理芽さん、春猿火さん、ヰ世界情緒さん、幸祜さんです。
この動画、最初に全メンバーが自己紹介してくれます。お陰さまで全員一発で覚えられました。
(ちなみに、私は花譜さんの他、理芽さんは「食虫植物」という曲で知っていました)
「かわいい」と「カッコいい」が渋滞しているMVと、何より元気が出るようなエネルギッシュな雰囲気がすごく素敵です。
(そして、私が勉強不足なのもあるかと思うのですが、カンザキイオリさんってこんな楽曲も制作されるんだな、と感じました。なんとなく「命に嫌われている」や「あの夏が飽和する」のイメージが抜けなかったので、ちょっと新鮮です)
曲名の「共鳴」は、仮想世界と現実世界との「共鳴」なのかなと感じました。
どの曲にも通じるのですが、バーチャルシンガーさんだからこそ、という歌詞がたくさん詰まっていて、バーチャルの強みが存分に発揮されているように思います。
ちょっとの鬱憤や孤独感なんて、たちまち吹き飛ばしてしまうような、そんな1曲です。
まとめ
花譜さんは、年を重ねて成長していくバーチャルシンガーさんです。
仮想世界、電子の世界という普遍の空間にいるからこそ、その成長が、輝きと熱を増す歌声が、より鮮明に際立つ気がします。
鮮烈で、熱くて、眩しい。
「命がこもった」とか「魂をぶつけるような」とか、そんなありきたりな言葉でしかその歌声を表せないことがもどかしいほど、聴く人の心に直接訴えかけてくるような歌声です。
「なんか、今日の桜小路、熱量半端ないな」と思われた方、大正解です。
花譜さんの歌声を聴くと、なんだか猛烈に「書き留めたい」「この気持ちを残しておきたい」という気持ちになります。
余談ですが、昨日私の推しのYOASOBIさんが生出演していた、NHKの「ヌマソニ」で、「ツバメ」の沼ハマver.のMVが公開されました。
そのMVで「ツバメ」を歌っているのが、なんと(!)花譜さんです。
「大好きなユニットさん」×「大好きな曲」×「大好きなバーチャルシンガーさん」なんて最高かよ! と、ご多分に漏れずテレビの前で興奮していました。本当に素敵なMVで、花譜さんの弾むような歌声も可愛かったです。
(今の花譜さんの紺色の衣装が「燕」という名前なので、そこの繋がりなのかな……)
そのMVは、11月の「みんなのうた ひろがれ!いろとりどり」で放送されるそうなので、漏らさず見たいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
最近、次々に好きなアーティストさんが増えて、内心てんやわんやなのですが……。
そんなときこそ、「ラフにラブを(by SixTONES 田中樹)」を忘れずにいきたいなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。