スクリーンショット_2016-06-29_23.16.04

バイタルデータ関連ビジネスについて「カンブリア紀の創出」

ここ一年ほど、しつこく言い続けていることがあり、とても共感してくださる方々が多くいらっしゃるので、一旦まとめておこうと思いました。

■カンブリア紀と眼

地球上で多様な生物群が爆発的に誕生したとされるカンブリア紀。この時期に、生物に「眼」が誕生したと言われています。視覚を獲得した生物の捕食や逃走の行動の多様化が、生物の多様な進化を後押ししたのではないかという説があります。

■現代の眼

センシングテクノロジーの発展により、これまで認識することのできなかった様々な事物を見ることのできる「眼」を獲得しつつあります。

このセンサーによるデータ取得は、多くの場合、センサーメーカーによって実施されます。体重計、血圧計、体温計など古くからのセンサーをはじめ、心電計、心拍計、脈波計、脳波計なども手頃なものが続々と開発されています。

データは、センサーメーカーによって可視化され、エンドユーザーに提示されます。これが「みえる」分野。

価値あるスモールデータの解釈や、ビッグデータの解析などは、大学などの研究機関や専門家、人工知能系の研究者やベンチャー企業によって実施されます。研究会やコンソーシアムなどもつくられています。ここでは、データが特定の解釈にもとづき、情報化されます。

生理周期のデータや基礎体温のデータからホルモンバランスの解釈や、脈拍データから自律神経の状態、音声から感情など心の動きの状態、会話録音と位置情報からコミュニケーションの状態などを解析し解釈するものなどあります。これは「わかる」分野。

エンドユーザー(受益者)に対してサービスを提供する仕事があります。医療領域であれば、医師や看護師などの医療従事者。介護領域であれば、介護士や介護をする家族を支援する事業者など。人事領域であれば、研修会社や就労支援を実施する事業者など。教育領域であれば、公教育の教員や学習塾などの学習支援事業者など。スポーツ領域であれば、コーチや選手の心身のケアを実施する事業者など。これが「できる」分野。

エンドユーザーの様々な課題は、「みえる」「わかる」「できる」を経て「かわる」ことができるようになります。

データを起点にした一連の動きは、経産省の定義する広義でのロボティクスと同じもので、ことさら目新しいものではありません。

■連携を促すプラットフォームの必要性

それぞれの分野が個別の事業者であることが、一連の動きのスムーズさを阻害してしまうことを実際のビジネスの現場で数多く目にします。

「みえる」分野は、エンドユーザーに負担をかけずにセンシングするための知恵と工夫と開発力を持っています。

「わかる」分野の研究者らを監修者に迎え、自社で情報化した上で、エンドユーザーにフィードバックするサービスを作ることもできます。

しかし、「できる(介入)」部分については、残念ながら自社内に持つことができない場合が多いようです。

そのため、測定した結果をみたエンドユーザーから「状況はわかったけれど、で? どうすればいいの?」という中途半端なサービスになってしまうことがあります。(自分で活用できるハイエンドユーザーだけが使えるものだったり、記録を残すことを目的とするログマニアのサービスになったり…)

「わかる」分野の事業者は、エンドユーザーから距離が遠いことが多く、研究用に独自開発したセンサーが、センサーメーカーの開発したものに比べると使い勝手の部分で一歩及ばないものだったり、解析結果を活用した介入手段を持たなかったりすることがあります。

そのため、同じテクノロジー領域として近しい「みえる」分野の事業者と連携し、取得したデータの解析部分を担うことが多くあります。

「できる」分野の事業者は、データテクノロジー関連から遠い領域の人たちも多く、こうした連携のしくみに登場しづらいことがあります。

たとえば、教育現場などへのテクノロジーの導入を検討すると、現場からの強い反発と拒絶を受けることがあります。

実際に、理解ある保育園の協力のもと自律神経計測の実験を実施したことがあります。とても興味深いデータが取得でき、専門家による意義ある解釈ができ、「できる」分野の事業者である保育園にとってもエンドユーザーである園児や保護者にとっても有意義なサービスのしくみを描けたとしても、その実現の前に、現場サイドからの大きな反発があったりします。新規サービスではよくある話です。

ですが、というか、だからこそ、こうした3分野の優れた事業者の連携こそが、これからの時代においては、とても大切だと強く感じています。コミュニティこそが、新しいサービスを生み出す場になるのだと思うのです。

■サービスのカンブリア紀

センサーという眼を手に入れることのできる時代。これまで見えなかった、多くの課題が見えるようになる時代。「みえる」「わかる」「できる」「かわる」が連携し、多様な課題解決が生まれる時代。

課題先進国の日本で、多様な課題解決を生み出す場が生まれる。それは、これから先、多くの国々が迎える課題を解決する市場を牽引する一助となると思うのです。

課題解決の多様性爆発というサービスのカンブリア紀が実現できるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?