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詩の場所

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小山伸二の詩の置き場所です。
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2020年4月の記事一覧

島の詩

島の詩

空港から二時間ほど走った島の突端
サンセットホテルのバルコニーからは
砂浜につづく道がある
だれもいない浜辺
虫がたくさん死んでいた
笑いながら
野草を煎じる女たち
豚の世話をする男の話を聞いて
陽気な女房の弁当を食べた
夏が終わらない島で
だれもが飽きずに雲を眺めていた
廃校の体育館
わすれ草ゆれる
泣かない島の
サンセットホテルの部屋に
夜明けまえの海風を呼び込んで
眠れないぼくは
からっぽに

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鰹節のうた

鰹節のうた

波を切って泳ぐものたちが
月に照らされる
誰も知らない夜もある

海で世界とつながっている
結びのことば
意志のひかりをかたくとじこめて

息をひそめる小屋のなかで
時間が磨かれていく
ひとの心の井戸に降りていくために

古式の呼吸に耳をすまそう
もうじきご飯も炊きあがる
うすく削りだされた香りが踊りだす朝だ