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創造と破壊(詞、短文、フィクション)

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主に詩や短文、フィクションなど書き連ねています
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#小説

その映画館は... 2

二名の警官に客席の間を引きづられるよう出口へすすむ。 やっとの思いで声がダイレクトに届く距離に友人がたどり着いた。 「柳田先生に電話!」 柳田先生は弁護士で、幸いにというか偶然というかその日一緒だった友人の紹介で以前お世話になったことがあった。 劇場を出るとかなり旧式のパトカーが待ち構えていて、劇場の古さと妙にマッチしていてなんら違和感がなかった。 即されるままにパトカーに乗り込む、テレビで良くみる両側に警官が座り 間に容疑者が乗せられるあのままになった。 手錠こそかけ

その映画館は...

昔ながらの建物で、座席の配列もいわゆる昔の劇場てきなもので、端のほうにいくにつれ緩やかにラウンドしてステージを取り囲むようになっている。 通路も無駄に広く作られていて、柵もなにもないので、夏休みで東映まんがまつりなどが上映される時期には子どもたちが駆け回っていたんだろうと想像がつく。 そんな懐かしさに誘われて僕らはどんなものが上映されているのかもあまり調べずに足を踏み入れた。 というのも、ここで今夜催されるものは知人が制作に関わった作品のプレビューで、どうしても僕に観てほ

俺たちは、 心からムカツいている

俺たちは、 心からムカツいている 俺たちは、 心からムカツいている ”お前らは歌って踊るだけのこの世のクズ” マジでそう思われているのか? 果たして俺らはマジでそうなのか? 夜の街から光が消え、行き場を失った情熱は 裏道を彷徨いドブ川に墜ちる 同調圧力に潰された独立心も、世界を変えて見せる と意気込んだ真っ直ぐで蒼い正義感も、 繰り返されるロボットのアナウンスにただ飲み込まれる このままじっと手をこまねいて傍観するのか? それとも死ぬ気で戦うのか? 準備を始め

HAKAI  SHODO

叩き壊す 持てる限りの力を一点に集めて 部分的でもかまわない、完全に破壊する 視界の大部分にモザイクかませ、一点めがけて クレイジーと気狂いの差を思い知る 全てまやかしの世界では、夢が現実 醒めないならそれは夢じゃない 数え切れない悪夢の夜を超え、 飼いならされた狂気に別れを告げて 本来住むべき場所へもどるだけのこと 芸術の庭は唯一暴力が安全に存在出来る場所なんだ

ブラーフィクション / Blur Fiction

俺は短気で喧嘩っぱやい。 そのくせ実はとんでもなく小心者で 何かにブチ切れた数分後には足が震えて いたりする。 実際に肉体的な行動に出る事こそ稀だが、 行動に社会的な責任が伴う年齢になって 随分経っても酒の席はおろか、 タクシーの運転手や飲食店の店員にだって キレる。 大方の場合は過剰反応。 もしくはキレる方向に物事を解釈している だけだ。 自意識過剰でもあるし、 タチの悪いアテンションシーカーだとも 言える。 今までの人生で大きなトラブル になっていないのが不思議な

事実

ベッドから起き上がり 割と毛足の長いカーペットに踏み出す、 両手両足に軽い痛みと痺れを感じる。事実だ。 昨夜までひとしきり思い悩んだ末に 今すぐ結論するのをやめたことを忘れた、 まるでスゴロクのスタートに戻されたような気分。事実だ。 エアコンの温度感が要領を得ず、子供の頃意識さえしなかった湿った空気を呪う。 東京、夏。事実だ。 不安、焦燥感と渇感のアンバランスが胸奥を支配し、トライアングルの内側を一定間隔で打ち鳴らす。事実だ。 ネットを見、日々垂れ流される