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事実

ベッドから起き上がり
割と毛足の長いカーペットに踏み出す、
両手両足に軽い痛みと痺れを感じる。事実だ。

昨夜までひとしきり思い悩んだ末に
今すぐ結論するのをやめたことを忘れた、
まるでスゴロクのスタートに戻されたような気分。事実だ。

エアコンの温度感が要領を得ず、子供の頃意識さえしなかった湿った空気を呪う。
東京、夏。事実だ。

不安、焦燥感と渇感のアンバランスが胸奥を支配し、トライアングルの内側を一定間隔で打ち鳴らす。事実だ。

ネットを見、日々垂れ流される世界中の承認欲求に吐き気を感じながら、
自分もその一部であることに言い訳が出来ず、
現実的な吐き気をもよおす。事実だ。

数日間で溜った確認事項を仕事仲間とすり合わせるために、いくつかの予定を変更し午後から自宅で会う段取りをする。事実だ。

その全てを放棄し、ありったけのキャッシュをバッグに詰め込み空港に向かう。
スカンジナビア半島のある街を目指してチケットを買った、もちろんキャッシュ。
妄想だ。

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