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スクラムの流儀ーPR 上田 竜太郎

2013年度入部。今シーズンで9年目を迎える。東福岡高校から早稲田大学へと進んだ経歴からは、小さい頃からラグビーエリートの道を歩んできたように見えるが、ラグビーを始めたのは高校から。小学生の時には空手に打ち込み、全日本選手権で優勝した経歴もある。今でもやんちゃ坊主の面影を残す。試合会場のスタンドからでもテレビ観戦でも、ファンからは一見わかりづらい、スクラムの見どころやこだわりを語ってもらった。

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早稲田大学ラグビー蹴球部主将からのシャイニングアークス入部

あっという間に過ぎましたね。プレーヤーとしてだけではなく、人間としても成長できた8年間だったと思います。入った頃は怖いもの知らずで、高校・大学時代のままでしたね。自分が中心だと思っていました(笑)。

大学時代は主将をやっていましたが、僕らの代は結構やんちゃな代で、1年目から上級生に結構絞られたりしていました。まとまりの無い世代って言われていました。監督に言われたのは「お前の言うことなら、みんな聞くでしょ!」みたいな(笑)。

早稲田はやっぱり勝って当たり前、勝たなくちゃいけない、負けたら全てが否定されるような文化でした。プレッシャーもあったし、不安もありました。僕がラグビーに集中できるように西橋(西橋勇人選手)を副キャプテンにしてくれたり、同期の幹部の選手たちがラグビー以外のところは面倒見てくれました。そのおかげで、僕はほんとにラグビーに集中できました。

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ロブ・ペニーHCに変わって、ラグビーを楽しめるように

2年目のシーズンからヘッドコーチがロブ(ロブ・ペニーHC/2021-2022シーズンから監督として復帰)に変わりました。1年目は社会人でもそんなに変わらないんだなと思っていましたが、ロブが来て180度ぐらい変わりました。

例えば合宿も、きついことが全てじゃないし、楽しむ時は楽しもうというやり方になりました。楽しむことが一番に来たって云うか。練習していても、いいプレーをすればすごく褒めてくれるし、やることが明確だし、コーチとして芯があってぶれないと言うか。負けても、それで練習メニューが変わることも無いし、「あっ、これが外国のベストコーチ賞をもらうコーチのやり方なんだ!」って思いましたね。

一喜一憂しないっていうか。ほんとにぶれが無い。チームの雰囲気にも一体感が出て、ガラッと変わりました。僕もそうでしたが、みんな楽しそうにラグビーをするようになりましたね。初めてラグビーが楽しいと思えました。

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フロントローのベテランたちが抜けて、強みだったスクラムが逆に弱みに

大学時代もスクラムは自分の中で自信を持っていて、社会人になっても1、2年は通用していたんですけど、それはベテランの人たちがいてくれたからこそなんだってわかりました。それから2、3年でFW一列のベテランの人たちがごそっと引退してしまって、僕と嶺(HO 三浦嶺)とかほぼ新人だけで組み始めることになったら、押されすぎて、どうしよう!ヤバイ!って感じになってしまいました。

2、3年の間、スクラムはめっちゃ負けていたんですけど、チーム成績自体は上向きになっていきました。自分の一番強みだったスクラムをその2、3年は捨てていましたね。もう、どうしたって勝てないし。ほんとに迷走していました。スクラムで何をやったらいいか、練習でも試合でもわからなかった2、3年でした。

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斉藤がコーチとして戻り、ウィンドウマンス一ヶ月で強いスクラムが復活

そうした中で、展士さん(斉藤展士/元PR 2015年度選手引退)が、2017年にフォワードコーチとして戻ってきました。それで11月のウィンドウマンスの時に、展士さんの作った練習メニューでスクラムをめっちゃめちゃ練習したんですよ。全体練習が終わった後、フロントローだけ毎日40分〜1時間ぐらいスクラムを組んで、その一ヶ月間で4百何十本ぐらい組んだんですけど、試合中それを思い出そうと思って手に本数を書いていましたもん。

数をこなして体に染み込ませた上に、もっとディテールの部分をやりました。首、背中、コアといったスクラム用の筋トレもめちゃくちゃ別メニューでやらされたし、あの一ヶ月をもう一回やれって言われても「無理です!」っていうぐらいやりました。僕、ヘルペスめっちゃ出て、高熱と下痢が続いて病院行ったら「ストレス性」って言われて、1週間で体重も4kgぐらい落ちてやばかったです。ほんと病気になるぐらい追い込まれました。

そうやって猛練習したウィンドウマンス開けの神戸戦とキヤノン戦で、スクラムは圧勝できました。

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”クレイジー”な斉藤コーチの指導

結果がちゃんと出ているし、スクラムに対して熱いですし、スキルだったりコーチングは、僕が受けてきた中で一番だと思います。展士さんのコーチングを受けて、僕も将来はフロントコーチになりたい、こういうスキルを僕も下の代とか他の人に教えたいと思うようになったし。

スキルだとか持ってるものはすごいんですけど、まあ教え方はクレイジーですね(笑)。

人が考えつかないような独特な練習メニューだったり、試合中にロッカールームで選手にかけるコトバにしても、クレイジーという言い方が一番似合うんじゃないですか。そのくらい、やばいっす。でも、そのくらいすごいこだわりを持っているのがわかるんで。

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1stスクラムの感触

1stスクラムでだいたい相手の力量っていうか、事前に映像で見ていた情報と実際に組んだギャップが埋まりますね。映像での事前の分析だと、バックローが押してなくて軽そうに見えていたのに、いざ組んでみたら重たいというようなこともあります。逆に重たそうに見えても、組んだら軽かったということもあります。

1stスクラムで僕らがいい感じで組めたら、次に相手は押されたくないので、まともに組んでこなくなったりします。逆に自分たちがイーブン以下だったら、相手は組み方を全く変えないで次も来ます。こっちが行き過ぎると、相手は反則取られたくない、押されたくない、負けたくないで、落としてきたり普通に組んで来なくなったりします。

スクラムにこだわりを持っているチームほど、一回やられた後の対応が早いです。

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ファンに伝わりづらいスクラムの醍醐味

普通の人が見ると、ただ塊があたっているような感じですよね。大きな選手たちがぶつかるのがおもしろいっていう見方でいいと思うんですよ。でもその中で、僕らは低さと速さを追い求めています。本当はそこを見てもらいたいんですけど、一般の人にわかってもらえるのかなって。

クラウチ、バインド、セットのコールでいかに相手より低く早く当たるか。

まずスタンドオフとスクラムハーフがコミュニケーションを取って、どっちに回してほしいとか、早くボールを欲しいとか、FWで行っていいとか決めてから、僕が出ていれば僕とスクラムハーフで確認します。

例えばマイボールスクラムでタッチライン際じゃない時は、次のアタックがしやすいように変に回さないでバックスにすぐ出してとか。相手ゴール前だったら、FWで行きたいって僕らから言って、すぐにバックスにボールを出さないとか。その都度、コミュニケーションを取ってやっています。

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昨年夏、スクラムリーダーに任命されて

シーズン始めから言われていたんですけど、プロ選手が合流してきた9月に発表されました。僕は展士さんと付き合いが長いので、「お前はたぶん何も隠さず、俺に対しておかしいことはおかしいと平等にちゃんと言ってくれると思うから」ということでした。やっぱり、コーチと選手ってある程度距離ができちゃうじゃないですか。そこをうまく埋めるのが僕っていうか、僕だとコミュニケーションをお互いに取りやすいし、僕は全然気を使わずに展士さんに「頭おかしいっすね!」とか、何でも言えるので(笑)。

練習でできているスキルを試合の中で100%出すことは難しいと思うのですが、今多少のブレがあるので、そのブレを上の方で少なく推移させるというところが課題ですね。やってることは間違って無いと思いますし、みんな理解して練習もやっているし、あとはそれをムラ無く出すことですかね。

相手より低く早くという自分たちのスクラムのミッションに対して、ポジションごとにやらなくてはけない課題があるんですが、相手によってだったり自分たちの疲労によってだったり、できない時があって。もちろん相手も研究してくるので、いつも自分たちの思い通りには組めないんですけど、なるべくムラを無くすというところですね。全く無くすということは相手があるので無理だとは思うんですけど。

シャイニングアークス・スクラムの伝承を託されたと思って頑張ります。

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ラグビーの楽しさ

やっぱりボール持ったほうが楽しいですし、できることなら満遍なくプレーしてスクラム組むっていうのが一番ですけど、フロントはどうしてもスクラムスクラムってなっちゃうので。そのバランスですかね。ボール持って走るのが楽しくなかったら、ラグビーやらないほうがいいですね、もう(笑)。僕ら、スクラムじゃなくって、ラグビーやっているので。

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