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人を許せるようになる方法(前編)

「あれだけ言ったのにまた繰り返すなんて許せない!」「あんな態度を取るなんて許せない!」

許せないという感情は、職場の対人関係の中で最も厄介な感情であり、この沼に落ち入るとなかなか抜け出すことができません。

許せないという感情が続くと、自分自身の体調を壊し病気まで引き起こします。

許せないことがあるとそのことに囚われてしまい、人生の貴重な時間や頭のエネルギーを相手のために奪われることになります。

相手に嫌な気持ちにされただけでなく、大事な時間やエネルギーまでも捧げるなんてとんでもありません。

事故や殺人によって愛する人の命を失うこと、暴力で人を傷つけることは当然許せないことですが、そうではない取り返しのつくことに関しては、許せるようになる方が自分のためです。

しかし、頭ではわかっていても感情が言うことをきかないこともあります。

許すというのは、巨大化したネガティブな感情をコントロールするために、最も高度な心の技術が求められます。

人を許すことができるようになるにはどうすれば良いのでしょうか?

ここでは、許すことについて考察を深めます。

許せないは怒りの最終地点

許せないという感情は怒りを発端としています。

怒りが収まらないと許せなくなります。

火の粉が小さいうちに怒りを鎮めることができれば、それに越したことはありません。

怒りの感情をコントロールすることなどできるのでしょうか?

結論から言うと、怒りの感情は意志によりコントロールすることができます

自分がどういう感情で在るかを選択することができるのです。

例えば、お母さんが子供にイライラして「何回言ったらわかるの?いい加減にしなさい!何度も何度も同じことを…」と怒鳴っている最中に電話がかかって来て、それが姑からの電話であったとしたら、「もしもし?はい、ご無沙汰してますー」と急に声のトーンが切り替わって、今いた人はどこにいったのかと思うくらい別人になることがあります。

そして、電話が終わると「あんたねー!…」と再び元の状態に戻ります。

この時、お母さんは自分の意志で感情を選択したのです。

この1つの例だけでも、怒りの感情は選択できるということがわかります。

怒っている人は、相手のせいで怒りを抑えられないのでなく、自分で怒ることを選択しているのです。

怒りという字には、心に奴がいます。

怒っている人には、今まで仲間であり味方だった人までが、怒りの原因をつくった敵になり、あいつのせいで自分が腹を立てていると思っています。

意志=思考が感情を選択します。

思考が感情をつくるのです。

怒りは自分の意志でコントロールできる。

まずは、この事実をしっかりと認識することです。

怒りのアンガーマネジメント

怒りのアンガーマネジメント」という怒りをうまくコントロールできるようになるテクニックがあります。

代表的なものを挙げてみます。

怒りを感じたら10秒待つ

アメリカ建国の父、トマス・ジェファーソンは「腹が立ったら何か言ったりしたりする前に10まで数えよ。それでも収まらなかったら100まで数えよ。それでもダメなら1000まで数えよ。」と言いました。

感情のピークは6秒と言われます。

反射的な怒りでカッとなったときは、10秒間でもやり過ごすことができれば、そこから徐々に落ち着きを取り戻し冷静な判断ができ、売り言葉に買い言葉といった不要な発言を防ぐことができるようになります。
怒りを覚えたら一晩寝かせて、翌日にもう一度自分の気持ちを確認することも大切です。

怒りに点数をつける

カッと来たら立ち止まって、その怒りが何点なのか1~10までの10段階で点数をつけます。
1~3点は軽い怒り、4~6点は少し強い怒り、7~9点は強い怒り、10点は最大級の怒りです。数値化することで冷静になることができ、本当に怒る必要がある状況かの判断ができるようになります。

「~すべき」の境界線を拡げる

自分が正しいと思うことと異なる行動を取る人に対しては怒りを覚えます。それは自分が理想とする状況からかけ離れるためです。
「~すべき」という範囲がもう少し広げられないか。
例えば、約束の時間に遅れたとしても10分以内に到着すべきという考えを30分以内に到着すべきに広げられないかというように考えてみます。

すべき思考自体が、本当に正しい基準なのかどうか、その信念自体が要らないのではないかと見直すことも妙案です。

自分がコントロールできることに集中する

電車の事故のせいで待ち合わせに遅れる、渋滞のせいで遅れるなどは自分の力でどうすることもできません。
怒りの原因に対し、このことは自分にコントロールできることなのかを考えます。
コントロールできないことに腹を立てることがなくなると、余計なエネルギーを消耗しないようになります。

他人の感情や意志もコントロールできるものではないので執着してはいけません。

自分ができることに集中しましょう。

相手の事情を察する

相手の言動に怒りの感情を覚えたら、すぐに相手を責めるのでなく「なんでだろう?」「どうしたんだろう?」「どんな事情があるんだろう?」と、そのような行動をするに至った経緯や背景に思いを巡らせます
そのような言葉をかけることで冷静に対話が成り立ち、考え方の違いをすり合わせることができるようになります。

怒りを生む一次感情を知る

心理学的に、怒りは二次感情と言われています。

怒るに至るには、何らかの理由があるからで、その理由となる感情を一次感情と言います。

一次感情には、不安や怖れ、悲しみ、惨めさ、侮辱感、屈辱感などがあります。

例えば、「挨拶したのに挨拶を返されなかった」ことに怒りを覚えたとします。
「なぜ自分は怒っているのだろう?」
「無視されて自分の存在価値が下げられた屈辱感から怒りになっているんだ」
そのことに気づき、自分の感情の変化を知ることで、冷静に事態を見つめることができます。

自分王国の王様になる

自分が主人公の人生では、世界の王様は自分です。
人生という世界は自分色のメガネを通して見えるもので、解釈次第でいくらでも変えられます。
自分という王様以外の登場人物はみな脇役です。
自己重要感を損ねるようなことを言ってくる相手に対して「よいよい、今日は無礼講じゃー」と言って無礼を許可してあげましょう。

「何やってんだ!」と上司に言われたら「よいよい、今日は無礼講じゃー」と心の中で言います。

王様として寛大な心で接してあげましょう。きっと笑えてきます。

これらは、反射的に生じる怒りに対して、制御するのか怒る必要があるのかを判断する方法です。
色々と試してみて、自分に合う方法を見つられるといいでしょう。

しかし、恨みや憎しみである「許せない」という感情に達した場合は、反射的な怒りを超えて怒りが持続するものであり、それは自分の心が傷ついたことによるものです。

それを解消するには、もっと心の奥深い部分に入り込む必要があります。

(後編へ続く…)


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