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なぜ私が予備校講師になったのか③

エピソード(3) 運命の採用試験

あれは26歳の夏のことだった。大学入試を教え始めて3年半が経とうとしていた。当時、私が勤めていた塾は「大手予備校に負けない授業」を標榜していた。しかし同僚のある数学科講師が、「本当に大手予備校と張り合える授業をしているのか」という疑問を呈したのだ。この疑問に対する解を得るには、大手予備校の採用試験に挑戦し、合格すればよいのではないかという結論に我々は至った。そこで、私はS台予備校の採用試験に応募することにしたのだ。無事に書類選考に合格した私は、いよいよ筆記試験に挑戦することとなった。

筆記試験が始まる前に、駿台に応募した志望理由のようなものを書かされた記憶がある。何を書いたのか全く覚えていないが、おそらく「より大きな舞台で教えたい」という趣旨のことを書いたのであろう。さて、いよいよ90分にわたる筆記試験が始まろうとするとき、試験官がこう言った。

「60分以内に終了した方は、先に退出していただくことが可能です」

この発言を聞いた私は、7何としても60分で試験を終了し、颯爽と教室を去ることを決意した。

いよいよ試験が始まった。汗ばんだ指がパラパラとページをめくる。そして、正誤問題から解き始めた。・・・・思ったより難しくないぞ。。。さしずめ、天空の城ラ〇ュタに登場するム〇カ大佐ならこう言っただろう。

「読める!読めるぞ!!」

個人的な感覚だが、難易度と分量ともに、早慶~旧帝の難易度であった。決して、大学受験を逸脱しているレベルではない。

そして、必死に解答を進めた私は、無事に60分で終了することができ、途中退出という目的を果たすことができたのだった。もちろん、30分かけて見直すという選択肢もあったが、途中退出したほうが試験官の印象に残るだろうという判断で、途中退出を選択した。結果は合格だった。

筆記試験のあとは、いよいよ模擬授業だ。ここで全てが決まると言っても過言ではない。8人くらいの専任講師や教務スタッフが見守る中、模擬授業を行った。基本的に緊張しない性格なので、特に問題なく授業をやりきることができたと思う。ここで思い出深いエピソードを1つ紹介しよう。

模擬授業の中に、however という語を説明する部分があった。その howeverに関する説明の方法を、ある試験官の先生が私に教えてくれたのである。採用試験のときにアドバイスをもらうことなど滅多にないので、今でも覚えている心温まるエピソードだ。ちなみに、その先生とは、毎週同じ出講先で仲良くさせていただいている。超大御所なのに決して偉ぶることなく、とても接しやすい素敵な方だ。これからも色々学びたいと思う。

模擬授業も終了し、私はS台予備校の採用試験に合格した。しかし、1つ問題があった。S台予備校の講料だけでは生活ができない可能性があったのだ。そこで私は、ある塾に挑戦することにした。その塾は私の人生を決定づけることとなるのだ。

エピソード (4):「いざ柏へ」に続く。






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