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ルシアン・フロイド

 先日読んだニューヨーカーにルシアン・フロイドの記事が書かれていた。
イギリスの画家ルシアン・フロイドがまだ生きている時に、ある事業家が偶然手に入れたフロイドの未完成作をオークションサイトに出したところ、それを見たフロイド本人が、事業家が手に入れた何倍もの値段で買い戻そうと電話をかけてきた。しかしその事業家はそのオファーを断ってしまった。フロイドが88歳で亡くなったあと、これまでのフロイドの絵の値段が跳ね上がったのを知った事業家は専門のアートディーラーや、鑑定家に値段を尋ねようとする。自作の管理にとても神経質だったフロイトが生前完成作だと認めなかったがために、その絵は贋作、もしくは本人が認めなかったものとしてその存在を無くそうとする財団やアート業界の渦に揉まれていくという話だ。フロイド本人の買い戻しを断った時に言われたフロイドの言葉は「くたばりやがれ、お前の生涯その絵は絶対売りに出すなよ」だった。

 今年はルシアン・フロイド生誕100年の年になるから、ロンドンのナショナルギャラリーでも10月から大きな展覧会が開かれる。僕がルシアン・フロイドの絵を知ったのはアートディレクターの角田さんが90年代後半くらいに教えてくれたからだが、それから僕も早速画集を買ったのを覚えている。日本では1992年に世田谷美術館で展覧会が行われていて、その頃から日本での認知度があがったのかもしれない。まだその頃はインターネットもまだまだだったから海外のアート書店に行くたびに彼の画集を買ってきたのを覚えている、

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写真家の若木信吾です。 写真に関するあれこれです。写真家たちのインタビューや、ちょっとした技術的なこと、僕の周辺で起こっていること、それら…

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