交差する偶然

外で知り合いにばったり遭遇することってありますね。
「おお、久しぶり」とか「あら、こんなところで」とか。
職業柄、ライブを観に行ったりするとミュージシャンの知り合いが結構いたりして「どうもどうも」と世間話になったり、週末の新幹線でも地方に演奏に行く同業者を目撃することはよくあることだ。

でも仕事とは関係のないところで偶然会ってしまうと、お互い気を抜いていて焦りますね。僕はなぜか駅のトイレの入口で知り合いにばったり遭遇したことが何度かあって、その時はなかなか微妙な空気が流れた。
まさに「こんなところで」と言った感じで、お互い苦笑いして別れる。

休日に家族で動物園に行った時にも知り合いの(と言っても一度一緒に仕事をしたことがあるくらいの)ミュージシャンをすぐ近くに発見したのだが、その時はお互い家族連れだったしかなり混雑していたので、声をかけることなく視線を動物の方にそっと戻した。

地方でライブ後、あまり眠れそうになかったので夜の街をひとりふらふら散歩していた時にも知り合いに声をかけられたことがあり、その時はまさかこの辺りに知っている人がいるわけがないと思って歩いていたので驚いたが、気分も紛れて嬉しかった記憶がある。

自分の中で一番「こんなところで」というばったりな出来事は、スウェーデンに演奏に行った帰りのコペンハーゲン空港で、何年か前にフランス旅行でお世話になったツアーガイドさんに会ったことだと思う。

そのガイドさんは淡々とした物腰の中に親しみやすいユーモアを持ち合わせた、ちょっと不思議な雰囲気の人だった。彼女のことをよく覚えていたのは、ツアー旅行中にうちの奥さんの誕生日をサプライズで祝ってくれてプレゼントまで用意してくれていたからだ。
たしかそれはモンサンミシェルにバスで何時間もかけて出かけて、へとへとになって帰って夕飯を食べていた時だったと思う。とても嬉しくて一緒に記念撮影もしてもらった。

彼女は今回もツアーガイドとしてコペンハーゲン空港で大勢の人をコーディネートしていた。僕は声をかけて改めてその時のお礼を伝えた。もちろん僕のことを覚えてはいないだろうけど、あの時と変わらぬ淡々とした親しみやすい笑顔で「お気をつけて」と応えてくれた。

そんなふうにして、お互いの人生の中で触れ合ったり、また離れて行ったり、そしてまたどこかで交差する時があるのかなと思うと、まあ面白いですよね。

目指せ書籍化📓✨ いつかライブ会場のグッズ売り場にエッセイ集を平積みにしたいと思います。