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心に土足で踏み込んでくる本


さて、前回は西加奈子さんの「i」について書いていきました。
読み終わってしまいました。
面白かった。

いや~本当に作家さんはよく勉強しているな、と。

上から目線みたいになってしまうけれど。
すごくよく知っているな、と、

思いますよ。

自分には書けない(当たり前)。

どうやって書いているんだろうな。

なかなか思い浮かばないな。

これは題名の通り、アイデンティティの話なんだけど、
自分って生きていていいのかな、って。

誰でも思うのかな、
自分はあんまり思わなかったけれど。



本の中身をちょっとだけ


この小説の主人公は養子で、
シリアの血を引いているからこそ、
自分の「幸せ」に対して引け目を感じているわけです。

自分だけがこの幸せを享受していいのだろうか。
本当は自分も「あっち側」だったんじゃないだろうか。

そんな風に考えるわけです。

それで、世界で起きた事件による死者数をノートに書いていく、、。

で、この小説にも、
ハイチで何人亡くなりました。
アメリカで何人亡くなりました。
アフリカで何人亡くなりました。
みたいな記載がたくさん出てきます。

そして時系列で書かれていくので、
実際に起きたことが描かれます。

もちろん2011年の東日本大震災もありました(ここは作中でも結構ポイント)。

世界では毎日様々なことが起きていることは知っています。

日本は恵まれていることも知っている。

けれど、
こんなにも毎日のように誰かが亡くなっていて、
それは当然個人なのにも関わらず、
やっぱり「○○人死亡」みたいに報道は個人には触れず、
でもそれを当たり前として私たちは、
「今日何食べようかな」とか思っているわけです。

それまた当然なわけだけれど、
本当にそれって当然なの?
って考えさせてくるわけですよ、西加奈子さんは。

あなたはそれに対してどう思う?
って、突き付けてくるわけです。

知っているっていうことと、
考えているってことと、
自分の意見を持っていることって、
近いようで違う。

この時代になっても、
世界には紛争が起きていて、
今この瞬間も多くの人が亡くなっているだろう。

それを想像したり目の当たりにしたりすると、
胸が痛む。

それでも、今日私はこうして
平和な日本で、「あ~つまんねえな」とか思いながら呼吸をしている。

それは決して悪いことではない。

そして、世界のことを祈ったり、恵まれない(これもだいぶ上から名表現だけど)人たちのことを考えていたら身が持たない。

単純に運が良い、運が悪い。


何とかしてそうやって自分を正当化して、
(またはそこまで考えずに)
毎日生きているんだけれど、
こうやって突き付けられてみると、
「自分って何なんだろうなぁ」と考えてしまう。

これがやはり読書の醍醐味で、
毎日の生活の中に、
すっと侵入してくる。

面白い本ほど、
心の中に土足で、
はっきりと足跡を残していく。

それは、きっと時間が経てば消えてしまうだろう。

それでもそこに踏み込まれたことは忘れず、
きちんと心に残るのだ。手術跡のように。

そして読書が好きな人は、
それを心地よいと思っている。

何ならもっと欲しがっている。

世界のことを知りたい。
幸せをかみしめたい。
そしてちょっぴり傷つきたい。
もっと考えたい。

そういう読書だったなーーー!!!

気持ちよかったです。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!

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