長所を伸ばしたら短所が「チャームポイント」に変わる理由

ドラッカーさんの教えにある「強みを徹底的に伸ばす」ことと
「数字が苦手で弱みだからといって、会計や経理に手をつけないでいいわけではない」は、矛盾するように感じたEMS(Essential Management School)講義序盤。

(強みに集中して注力するわけじゃなくて?)
(弱みにも結局手をかけないとならないの?)

混乱しつつドラッカー学会の佐藤さんや伊坂さん、八木澤さんのお話を聴いていると、昔とある講師が教えてくれて以来、私のお気に入りの「長所と短所の図」が浮かんできた。
当時学んだときは「長所」「短所」という言葉だったが、今回のMBALの内容に照らして「長所 ≒ 強み」「短所 ≒ 弱み」と捉えても、意図は大きく外れないかもしれない。やってみる。

簡単に説明すると「長所を伸ばして伸ばして伸ばしまくれば、もともとあった短所が【チャームポイント】になる」ということ。

日本の教育では苦手分野(短所)を克服し「バランスよく力をつけよう」が主流だったが、今は違う。
得意分野(長所)に注力していくことで、相対的に、短所が小さく目立たなくできる。
小さくなった短所は、「チャームポイント」に認識を変える。短所が短所でなくなるのだ。

下記は講義レポートに描いた図。

(1)強みをぐんぐんぐんぐんぐんはりきって伸ばしたらどうなる?
(2)長所が目立って、短所が相対的にちっちゃく見える。
   短所がたいしたことなく感じてくる不思議。

スクリーンショット 2021-01-12 15.26.13

(※ 左の図と右の図の短所の占める面積は同じ)

「それくらいのささいな短所なら、チャームポイントかも」と、短所(弱み)が変身もしくは別名がつくのだ。
「完全無欠のスーパー出木杉くんだと、こっちが緊張するし、欠けた部分は彼/彼女の憎めないところだね」
と、【短所(弱み)】が【チャームポイント(愛すべき部分)】に他者認識(とらえかた)が変わるイメージ。

【Before】短所(弱み)が短所のまま目立っている状態

「しんがきさん、しょっちゅうバスに乗り遅れて電話かかってくるよね。
たまにビミョーに遅刻するし、仕事はちゃんとしてるみたいだけど困ったもんだ」

そこで、長所(強み)をひたすら伸ばしまくったら

 ↓↓↓  

【After】短所(弱み)がチャームポイントとなった状態 

「しんがきさん、こないだもドイツ語のクレーム対応うまくまとめたらしいね。その前はタガログ語で聞いたことない食材の商談も成約決めてきたし、
アフガニスタン人のビジネスパートナーとハラル食の店舗展開の話も進んでるみたいだし未知を恐れない姿勢がほんとすごいわ。相変わらずビミョーに遅刻してくるけど、まあそれも彼のキャラクターかもねぇ」

長所(強み)がすんごいことになった結果、短所(弱み)が「キャラ」(=チャームポイント)となり周囲の認識が変わった。
強みに注力して伸ばしまくって起こせた展開。

(たとえ話です)


長所(強み)がすんごいことになったおかげで、短所(弱み)が「キャラ」(チャームポイント)となり周囲の認識が変わったのだ。

とはいえ、「強みを阻害する弱み」だけは、鍛えて強くなってもらう必要がある。
弱みを放置し、強みだけに力を注げばいい「わけじゃない」理由は、おそらく「弱みのナカミ」によっては、強みを損ねるたぐいのものがあるからだ。

たとえば
・「絵を描くのが好き」(=強み)で、
・「人とコミュニケーションが苦手」(=弱み)な
人がいるとする。
自己満足のイラストから一歩進み「この絵で誰かを喜ばせたい」という次の望みを叶えたいなら、描いた絵を衆目にさらして発生しうるコミュニケーションを、がんばらないといけない。
絵を他人に見せて最低限必要なコミュニケーション手段をとらなければ、評価もフィードバックもない。喜びの声も対価も受け取れない。

自覚する弱みリスト(たぶん強みより多い)を、軒並み伸ばさなきゃだめ、というわけではきっとない。
「自分が伸ばしたい強みをジャマする弱み」を、弱みリストのなかから選び取り、なんとかして(manage to:マネジメントして)克服する努力をする。上の例ではコミュニケーション力がそれにあたる。

すると障害が取り除かれた強みは生き生きと、さらに極まっていく。
極まる強みは影響力を増し、八木澤さんが言われていた「卓越する」存在になっていく。

ちなみに上の例、人とのコミュニケーションという苦手分野を全方位的に克服する必要はないと思っている。
もし、目を見て話すのが苦手なら、SNSや、チャットツールなどに頼ってもいい。目を見て「ちゃんと」「かんぺきに」コミュニケーションできなくていい。最低限でいい。
じゃないと、すりへってしまう。
こんなに努力してもせいぜい人並み。あの人のようにはなれない、と自己評価を低めてしまうからだ。
低められた自己評価は、その人をキラキラ輝かせるはずの強みに、影を落としてしまいかねない。


白か、黒か。正解か、間違いか。いいか、悪いか。強みか、弱みか。
二元で物事をとらえてしまうと、あいだが【OR / もしくは】になりがちだ。
片方を選べばもう片方は選ばれない。片方を取ればもう片方は含まない。
そんな単純化したイメージがある。

たぶん、ドラッカーさんはそういうことを言いたいのではないと思う。
あくまで「相対的に」強みを徹底して伸ばしまくってください、と伝えたいんじゃないだろうか。

強みと弱みを「AND」でつないでみる。

弱みに気を取られず、かといって丸無視はしない。自分の弱みや欠点はしっかり見極める。【AND/そして】強みにおごらず、あくまで謙虚に、でも堂々と強みを意識して極めようと日々勤しむ。

【AND】でつないでみたら、やっぱり「バランス」をとることが大切みたいだ。EMS講義初回から出てくる「バランス」という観点。

ドラッカーさんの言う「強み」と「弱み」のバランスは、どう捉えたらいいだろう?

私が今なんとなく描くイメージは、アンバランスに揺れる天秤だ。
強みと弱みを「アンバランスに揺らして」バランスをとる。

強みと弱みを【OR】の二元じゃなく【AND】/【そして】でつなぐことで
弱み(だと思っていた)資質が化けて後天的な能力に育ってくれるかもしれない。

「コミュニケーションが苦手苦手って言ってても始まらないから、最低限がんばって話せるようにならなきゃ!とスピーチ講座に飛び込んだらなぜか妙にウケが良くって、なぜか毎回ファシリテーターを頼まれます、や! 別にイヤじゃないんですけど別に好きってワケでもないんですよホントに」

みたいな。
(佐藤等さんの「数字に関心全然ないけど会計事務所やってるんですよ」という発言を思い出す)

強みを伸ばす 【OR】 強みを伸ばさない でもなく
弱みを鍛える 【OR】 弱みを鍛えない でもなく

強みをめいっぱい伸ばす【AND】弱みをちょっとは鍛える

(強み>>>弱み)アンバランスに支点を置いてみることで初めて、私たちのそれぞれ個性豊かなバランスが生き生きと揺れ始めるのかもしれない。

アンバランス加減のあんばいは自分では調整しづらいから、傾きすぎて天秤に載せたものが落ちないように、ドラッカーさんの言う「他者からのフィードバック」で、平衡感覚を保ちながら。
弱みへのモヤモヤや、強みへの生産的な葛藤の「足元」に気を取られず遠くを見据え、バランスを取りつつ進めそうな気がする。

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