見出し画像

コミュニティの社会貢献

「コミュニティは儲かるのか?」

この言葉を聞くたび自分の至らなさに失望し、同時に「だからこれをやるんだ」と奮い立たされます。以下は、過去の実際のメール文章です。

2022年5月、某企業の社長より

その会社にとってのコンペリングイベント(差し迫った深刻な課題)をよく理解しないまま「力技」で営業してしまったのです。社長決裁で50万円✕6ヶ月間の予算を取ったと聞き安心していたら最終的には「株主」からの理解が得られなかった、とのこと。社長の「先」の存在(株主)を予想できていなかったこと、社長のコミュニティへの理解を本質レベルで深めるための顧客教育をしなかったこと、つまり「コミュニティのモノ売り」だったことを反省しました。このような実体験から「コミュニティは儲かるのか?」という問いに対して、短期的・直接的な売上貢献の観点で「YES」と言うことは避けています。

かつて、企業活動で「利益以上の喜びを味わう」ことができると言った有名な経営者がいました。繁栄とは物質・精神の両面のものであると考え、物と心は密接に結びついており「心」が高まらなければ物は生まれないと唱えていました。「心」を大切にしたその経営者は、顧客や従業員に対する熱意、誠意、思いやりといった目に見えない要素もまた大切にし「企業は国家のもの」とも言っていました。その名を、松下幸之助といいます。

アメリカに「賃金を支払っているのは雇い主ではなく、購入してくれる顧客だ。雇い主はお金を管理しているに過ぎない」という信念を持っていた有名な経営者がいました。販売で得た売上を労働者に還元することを優先していた彼は労働時間を1日に8時間とし、週休2日制を初めて導入、賃金も大幅に上げました。その名を、ヘンリー・フォードといいます。

このような自身の過去の失敗例、成功の本質や先人の言葉などをふまえ、コミュニティ育成・活性化支援を行う際の「ミッション」を掲げました。

昨今、多くの企業が目先の利益を優先するあまり客からお金を「テイク」することだけに固執しているように思えます。しかし、先述のような経営者は「国家のため」「従業員のため」といった「マクロ的」な視点で真に顧客の幸せや従業員のことを考えていました。これからの企業活動には、長期的な視点に立って「社会の公器」としての意識が求められることは言うまでもありません。今回は「コミュニティの社会貢献」つまり、

コミュニティが活性化することで
・企業のサクセス
・顧客のサクセス
の双方を実現し、社会貢献になることについて具体例も参照しながら検証していきます。

なお、本論に入る前に用語の定義として「コミュニティ」を以下のように定義します。

「特定の製品やサービスについて共通の興味・関心があり、相互に知識や知見を共有したいと考えている人の集まり。企業または利用者が主体となって日常的なコミュニケーション手段を用い継続的な活動を行うもの」

企業と顧客のサクセスとは

では実際に、企業や顧客の「サクセス」とは一体どのようなものか見ていきましょう。

企業のサクセスとコミュニティ

顧客に製品やサービスを提供し、事業の課題解決や利用者に利便を提供することで「一次」のサクセスは実現されます。これは、その時点つまり「一点」での売上となります。しかし、企業は「継続」することが前提です。製品やサービスは世の中にあふれており、変化の早い現代では「モノ売り」「売り切り」の考え方ではすぐに競合他社が追い抜いてきたり顧客の飽きが早いなどの陳腐化が加速します。このため、企業は常に「顧客ニーズの把握」「顧客満足のための施策」などが必要になってきます。特に所有から利用に価値をおいたサブスクリプションモデルの台頭で、「解約」が容易におき顧客ニーズの把握と顧客満足の実現、更には企業と顧客との「エンゲージメント」の確立が課題になっています。

コミュニティは、それらを解決できます。
・「お客様の声」収集
 顧客から得られた声を製品やサービスに反映
・来月(来年)の売上への貢献
 顧客とのエンゲージメントが契約継続に寄与
・潜在顧客の発掘
 コミュニティイベントで「未顧客」を発掘
・口コミ効果
 顧客が自ら製品やサービスを広げてくれる

顧客のサクセスとコミュニティ

よくこんな声を耳にします。あの会社「売ったらおしまい」で何の連絡もしてこないと。売り切りモデル(営業主体)では、営業担当者は「売る」ことが目的です。しかし前述のように製品・サービスの提供会社の数が増え続けるなかでそのサイクルも早くなっているとすれば顧客側のサクセスも考慮しなければなりません。

コミュニティは、それらを解決できます。
・製品やサービス理解の向上
 「使いこなし」により利便性が向上する
・顧客満足度の向上
 「作り手」とのコミュニケーションが可能
・帰属意識による幸福度向上
 「居場所」の存在で帰属意識や幸福度が増す
・社外との関係性によるシナジー
 利用者どうしの交流による相乗効果

サクセスの例

それでは、実際にコミュニティがもたらした企業と顧客のサクセス事例を公開記事を参照してご紹介します。

企業のサクセス事例

・顧客の声(VOC)可視化

顧客の声であるVOCは、マーケティング活動や商品開発において極めて重要なものである一方、収集が困難である場合が多いです。しかし「DIYスクウェア」では、前述のDIYトークや作品投稿など、顧客の声を収集する場が頑強に構築されており、それが着実に蓄積されていきます。

顧客体験とロイヤリティを高める、カインズのファンコミュニティの5つの機能を大解説!

・UGC(SNS等による生の声)創出

SNSなどの勃興に伴って、消費者は企業発信のプロモーションよりも、口コミなどのUGCを重視する傾向が見られます。「DIYスクエア」では、前述のDIYレシピや作品投稿など、常時UGCが生み出される体制が構築されています。

顧客体験とロイヤリティを高める、カインズのファンコミュニティの5つの機能を大解説!

・事業貢献、利活用促進、解約防止

コミュニティに参加している人たちは、製品やサービスに関する知識を持つだけでなく、製品やサービスを使っていない人たちや、過去に使用していたが現在使用していない方々にも情報を提供しています。すでに40以上のグループ、150名以上のコミュニティリーダーが活動しており、事業成長にも寄与しています。コミュニティ上でアクティブな顧客とそうでない顧客とを比較した場合、

「受注商談金額が2.5倍」
「パイプラインが2倍」
「33%以上の製品活用度」
「顧客離れを25%削減」

BtoBにおけるコミュニティマーケティングとは?取り組むべき理由を解説

顧客のサクセス事例

・人生を変えた(1)Salesforce コミュニティ

”Salesforceとの出会いは人生を180度変えてしまうような出来事だった”
”コミュニティの存在が、スキル面でもメンタル面でも支えになった”
”コミュニティには私と同じような境遇の方たちがたくさんいて、そこで悩みを共有できたというのが問題解決の手がかりになっただけでなく、精神面での負担軽減にも繋がりました

Trailblazer インタビュー:Salesforceとの出会い、これまでの自分を形成したものとは?Part Ⅲ

・人生を変えた(2)エンジニア @soudai1025 さん

・人生を変えた(3)自身の例
小学生のとき「年齢も性別も地位も人種も国境も関係なく人々が平和に愛し合える世界」を願った作文を書きました。大人になり「夢想家」という言葉を知りましたが、振り返ればそれはいつの間にか実現したことに気づきました。自分の人生を変えた「コミュニティ」は、そんな様々な「差」を超えて存在する「平和な世界」なのだということに。長い時間をかけ、夢は現実となりました。コミュニティは、自分の夢を実現させてくれました。

年齢・性別・人種・国境・地位の関係なく平和に愛し合える世界(23年7月)

コミュニティは社会貢献活動

これまで、コミュニティの活性化により企業と顧客のサクセスを導き、最終的に社会貢献になることについて説明してきました。単に「なんとなく」コミュニティには良い効果があるということではなく、実際の事例も示しながら

コミュニティは企業も顧客も成功に導く
よってコミュニティは「社会貢献活動」

であるということを意識してきたつもりです。この場合の「サクセス」は必ずしも直近の売上を表すものではありません。最後になりますが、冒頭で触れた

「コミュニティは儲かるのか?」
→長期的・間接的な売上貢献では「YES」
(短期的・直接的な売上貢献では「No」)

を補足するため、ここまでお読み頂いた方に質問したいと思います。

「行かなくなった店」はありますか?
「よく行く店」はありますか?
 その違いは何ですか?

例えば、飲食店。味はまぁまぁでも接客がひどい店。やたらと話しかけてきて飲み物を押し売りするバー。例えば、美容(理容)院。疲れているのに根掘り葉掘り立ち入られる店。最後の会計時に用品を押し売りする店。それらに再び行きますか?例えばコンビニ。「あそこなら必ず期待のものがある」と思えるチェーンと、何も買わずに出ていってしまったことが何度もある店。そして無人型の店舗。

これらは全て、企業活動において「利益以上の喜びを味わう」という顧客側のサクセスは意図していない例です。また、一方的な商売(いわゆる殿様商売)を行うと、顧客の混乱や反感を招くこともあります。日本でもスーパーに並んでいる「トロピカーナ」というオレンジジュースのパッケージデザイン変更の失敗例があります。1947年から続く老舗ブランドであり、消費者と企業の間には「必ず選んでくれるファン」の(いわば)コミュニティが存在していた、と捉えることができるでしょう。しかし、顧客を無視したリブランドにより20%も売上が減少しわずか2ヶ月でパッケージは元の「愛され続けた」デザインに戻されました。

ブランディングで最も重要なことは、消費者を置き去りにしないことです。企業の中だけで議論し、つくられた戦略は、結果的に消費者に受け入れがたいものになってしまう可能性があります。思い込みに左右されず、しっかり消費者の声を取り込みながら慎重に進めることが大切です。

【失敗事例】Tropicanaのリブランディングが3,000万ドルの売上減少につながった理由

日本は少子高齢化が進むことは明らかで、名目GDPもドイツに抜かれ4位になりました。今から急激な人口増加や過去のような経済成長は難しいですが、だからこそ「社会の公器」たる企業がしっかりとサクセスを意識してそれを実現し、顧客にも「サービスを受ける以上の幸せ」をもたらす「質の経営」の必要性が増しているのではないでしょうか。

「コミュニティは儲かるのか?」
「投資対効果がわからないぞ!」
「自社の儲けが一番重要だろ!」
「客を幸せにするコストだと?」

そう言っている企業の経営者に、見てもらいたい場所があります。浅草の雷門です(浅草寺)。提灯で有名なこの雷門全体が、実はある人物によって寄進されたものです。顧客との関係性を重要視し「顧客のサクセス」実現を願っていた経営者の名が、そこにはあります。

ご存知ですか?雷門と松下電器の関係【浅草寺】

明日も偉人たちに尊敬の念を込めながら、コミュニティ支援に邁進します。いつも「ミッション」を心に日本社会のサクセスを真に願って。

<ミッション>
コミュニティの育成と活性化により
企業と顧客双方のサクセスを実現
以って日本社会に貢献する

 最後まで長文をお読みいただき、ありがとうございました。
コメントやDM(X)など、ぜひお持ちしています。

#コミュニティデザイナー
コミュニティの立ち上げ・活性化などのご相談は @shindoy まで

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?