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アジアカップ・カタール2024 グループステージ 日本 対 ベトナム(1)

2024年1月14日(日)
アジアカップ・カタール2024(インドシナ時間18:30キックオフ)
インターネット中継観戦(ハイライト映像は当記事末尾に置きます)
日本(青)4(前半3-2、後半1-0)0 ベトナム(赤)
主審:Yoon Jae-yeol(韓国)
Al Thumama Stadium (ドーハ)
気温28℃ 湿度34% 風16km/h

ゲーム内容は皆さんご存知でしょうから、今回はいつものようなマッチレヴューはしないとして、ポイントと私の周囲の反応だけまとめておきます。

事前に私がサッカー関係者に流したベトナムの選手情報は以下。スタメンだた選手の名前を太字にしておきます。

GK
1  グエン・フィリップ (公安ハノイFC)  
   Nguyễn Filip  呼び名:グエン・フィリップまたはフィリップ・グエン
1992年チェコ生まれ(31歳)、父がベトナム人、母がチェコ人、ベトナム語はあまり話せないのでコミュニケーション上の問題があると言われる。
昨年12月にベトナムに帰化したばかり(トルシエさんはフィジカル面での弱点を克服するため、帰化選手を重視している)。
GKではこれまで、セレッソ大阪に一時期在籍していたダン・ヴァン・ラム(1993年ロシア生まれ、父がロシア系ベトナム人、母がロシア人)が代表に入っていたが、今回は招集されていない。

21 グエン・ディン・チエウ(ハイフォンFC) 
   Nguyễn Đình Triệu  呼び名:ディン・チエウ
昨年、32歳で初めて代表に招集された苦労人。

23 グエン・ヴァン・ヴェト(ソンラム・ゲアンFC)  
   Nguyễn Văn Việt  呼び名:ヴァン・ヴェト
所属クラブのソンラム・ゲアンは、昨年12月に水戸ホーリーホックとパートナーシップを結んだ。

DF
2  ドー・ズイ・マイン(ハノイFC)  
   Đỗ Duy Mạnh  呼び名:ズイ・マインまたはドー・ズイ・マイン
1996年生まれ(27歳)。17歳の時にコンサドーレ札幌の練習参加、Jリーグの合同トライアウトにも参加。
所属クラブは、岩政新監督が率いることになったハノイFC。

3  ヴォ・ミン・チョン(ベカメックス・ビンズオンFC)  
   Võ Minh Trọng  呼び名:ミン・チョンまたはヴォ・ミン・チョン
2001年生まれ(22歳)。所属クラブのビンズオンFCは、川崎フロンターレがビンズオン省(ホーチミン市の少し北)で展開しているサッカースクールとも協力関係にある。今回は、ティエン・リン(FW)、ゴック・ハイ(DF)といったビンズオンFC所属の代表の常連選手がケガで招集外になっている。

4  ホー・タン・タイ(公安ハノイFC)  
   Hồ Tấn Tài  呼び名:ホー・タン・タイまたはタン・タイ
ベトナム史上最高のサイドバックとも言われる。2021年12月のカタールW杯アジア最終予選の最終節の日本対ベトナム(さいたまスタジアム、1‐1ドロー)では、試合後に南野選手とユニフォーム交換をしたことが話題になった。所属クラブではキャプテンマークを巻くことが多いものの、最近は代表に招集されていなかった(人気選手なので招集されなかったことでトルシエさんの選手選考に世論が反発する要因になっていた)。

5  ザップ・トゥアン・ズオン(公安ハノイFC)  
   Giáp Tuấn Dương  呼び名:トゥアン・ズオン
2002年生まれ(21歳)。コンアン・ニャンザンFCが1部昇格してハノイ公安FCと改称、本拠地もハノイに移転して選手を大幅に入れ替えて銀河系軍団を形成した際にクラブ内で生き残った数少ない選手。

6  グエン・タイン・ビン(テーコン・ベトテルFC)  
   Nguyễn Thanh Bình  呼び名:タイン・ビン
2021年12月のカタールW杯アジア最終予選の最終節の日本対ベトナムでコーナーキックをヘディングで合わせて先制ゴールを決めた選手。
所属クラブは、「テーコン・ヴィェッテル」と呼ぶのが本来の発音に近い。Vリーグ1部では、ハノイに3つのクラブ(ハノイFC、公安ハノイFC、テーコン・ベトテルFC)

7  ファム・スアン・マイン(ハノイFC)  
   Phạm Xuân Mạnh  呼び名:スアン:マイン
水戸ホーリーホックがパートナーシップを結んだソンラム・ゲアンで育った選手。今季からハノイFC所属。12月のACLグループステージの対浦和レッズ戦(ホームのミーディン・スタジアムで2‐1でハノイFCが勝った)では途中交代でピッチに立った。

12 ファン・トゥアン・タイ(テーコン・ベトテルFC)
   Phan Tuấn Tài  呼び名:トゥアン・タイまたはファン・トゥアン・タイ
U23、フル代表とも、トルシエさんが重用している左利きDF。試合を決定づけるようなミスもあるが、イケメンの若手人気選手。11月のW杯アジア予選の対イラク戦(ホームのミーティン・スタジアムで0-1でベトナムが負けた)では、ディフェンスの穴として狙われて、アディショナルタイムに走り切れずに決定的なクロスを許して失点、大泣きする姿が大映しになった。

17 ヴー・ヴァン・タイン(公安ハノイFC)
   Vũ Văn Thanh  呼び名:ヴァン・タインまたはヴー・ヴァン・タイン
パク・ハンソ前代表監督時代を彩ったホアンアイン・ザーライのアカデミー出身の選手。昨季、銀河系軍団を作った公安ハノイFCに引き抜かれた時は、一部に「ヴァン・タインも大金積まれて移籍したか」と言うファンもいた(が、実際には公安からの移籍要請は年俸の問題ではなく実質的な「命令」のようなもので、クラブも選手も逆らえないというのが現実)。「国民的人気クラブ」と言われた古巣のホアンアイン・ザーライを裏切ったというような言われ方にはなっていない(と思う)。

20 ブイ・ホアン・ヴェト・アイン(公安ハノイFC)
   Bùi Hoàng Việt Anh  呼び名:ヴェト・アイン
今季、ハノイFCから公安ハノイFCに移籍したCB。2021年12月のカタールW杯アジア最終予選の最終節の日本対ベトナム(さいたまスタジアム、1‐1ドロー)では、コロナ感染でベンチ入りメンバーが少ない中、スタメンに抜擢されて5バックの一角を担った。

26 レ・ゴック・バオ(メリーランド・クイニョン・ビンディンFC)
   Lê Ngọc Bảo  呼び名:レ・ゴック・バオまたはゴック・バオ
U22代表として2019年のSEA Games(シーゲームズ、東南アジア競技会)優勝メンバーだったが、A代表には今回が初招集。

MF
8  ドー・フン・ズン(ハノイFC)
   Đỗ Hùng Dũng  呼び名:フン・ズンまたはドー・フン・ズン
U23でもA代表でもキャプテンマークを巻くことが少なからずあるスター選手。ハノイFCでは、ヴァン・クエット(今回招集されず)と並んで「何が上手いのかよくわからないけど、何故か試合で重要な役割を果たす」と言われる。

11 グエン・トゥアン・アイン(LPバンク・ホアン・アイン・ザーライFC)
   Nguyễn Tuấn Anh  呼び名:トゥアン・アイン
ホアンアイン・ザーライのアカデミー出身。物静かな読書家として知られる。一時期、横浜FCにレンタルで行っていた。代表ではスタメンの座を確保できない時期もあったが、トルシエ・ベトナムで復活を果たしてキープレーヤーになっている。

13 チュオン・ティエン・アイン(テーコン・ベトテルFC)
   Trương Tiến Anh  呼び名:ティエン・アインまたはチュオン・ティエン・アイン
2020年、所属クラブのベトテルFCでリーグ優勝。昨年、代表初招集された。

22 クアット・ヴァン・カン(テーコン・ベトテルFC)
   Khuất Văn Khang  呼び名:ヴァン・カンまたはクアット・ヴァン・カン
2003年生まれ(20歳)。年代別の代表に選ばれ続けてきた逸材で、是非とも海外のクラブに挑戦してほしい選手。まだ線が細く、昨季は雨でピッチコンディションが悪いゲームではフィジカルが足りないように見えた。11月のW杯アジア予選の対イラク戦(ホームのミーティン・スタジアムで0-1でベトナムが負けた)では、奇跡的に0-0のまま前半を終えて「このまま失点せずに勝ち点1をもぎ取れるか」という期待が高まったが、トルシエさんは後半途中からヴァン・カン、タイン・ニャン(今回招集されず)、ディン・バックを投入して攻撃的布陣を敷いたのが印象的だった。

16 グエン・タイ・ソン(ドンア・タインホアFC)
   Nguyễn Thái Sơn  呼び名:タイ・ソン
2003年生まれ(20歳)。
ホアン・ドゥックという、現在、Transfermarktでベトナム人選手として最高額、2021年ベトナム年間最優秀選手が今回、招集されていない。「ディフェンス面で要求される基準に達していない」というのがトルシエさんが語った理由。逆に、タイ・ソンは要求される基準を満たしているということ。トゥアン・アインと共に、中盤でゲームをコントロールする。トルシエ・ジャパンを覚えている人なら誰もが「戸田和幸選手を彷彿とさせる」と思わせるプレースタイル。髪色は赤ではないが。
所属クラブのタインホアは昨季、「ハノイのビッグ3」であるハノイFC、公安ハノイFC、ベトテルFCの次いでリーグ戦で4位につけ、カップ戦では優勝した。ブルガリア人監督・ヴェリザール・ポポフの手腕によるところが大きいが、その戦術を遂行する中心選手にタイ・ソンも入っている。

18 グエン・ハイ・ロン(ハノイFC)
   Nguyễn Hai Long  呼び名:ハイ・ロン
2000年生まれ(23歳)。2021年に所属していたタン・クアンニンFCが経営悪化で解散するという憂き目に遭うも、すぐにハノイFCが獲得に乗り出した選手。

19 グエン・クアン・ハイ(公安ハノイFC)
   Nguyễn Quang Hải  呼び名:クアン・ハイ
パク・ハンソ前代表監督時代のスーパースター。1997年生まれ(26歳)。ハノイFCのアカデミー出身で、海外で成功できる選手とされていたが、フランスリーグ2部のポーFCに移籍、ほとんど出場機会を得ることができずに契約を合意解除。昨年6月に、Jリーグほか複数の海外リーグのクラブからのオファーがあった中、銀河系軍団を形成していた公安ハノイFCに、当時のベトナム人選手最高年俸で入った。試合勘を取り戻すことができず、昨季は活躍できないままケガにも悩まされていたが、12月ごろから徐々に調子を上げてきた様子。今回の代表復帰で完全復活できるかが注目されている。フランス行きの後ほとんど活躍していないにもかかわらず、超人気選手ではあるので、トルシエさんが重用しないことについて不満を持っているファンは多い。12月に結婚した。

25 レ・ファム・タイン・ロン(公安ハノイFC)
   Lê Phạm Thành Long  呼び名:タイン・ロン
昨季、ポポフ監督のタインホアFCがリーグ4位になった際の立役者の一人。代表にも昨年、初めて招集された。今季は公安ハノイが持って行った。

FW
9  グエン・ヴァン・トアン(テップサイン・ナムディンFC)
   Nguyễn Văn Toàn  呼び名:ヴァン・トアン
ホアンアイン・ザーライのアカデミー出身。ベトナムが誇るスピードスター。かつてはフィジカルが軽く、接触があるとすぐに転がってファールをアピールする癖があり、マレーシアとのゲームで佐藤隆治主審がPK判定をした後に、自らがピッチ内で転倒した時のシルエットをTシャツのデザインに使って販売するなど、お調子者の一面も見られた。韓国リーグ2部のソウル・EランドFCに移籍して少し出場機会も与えられていたが、今季はナムディンFCに入った。ナムディンFCは熱狂的なサポーターがいることで有名。現在リーグ戦で首位。

10 ファム・トゥアン・ハイ(ハノイFC)
   Phạm Tuấn Hải  呼び名:トゥアン・ハイまたはファム・トゥアン・ハイ
1998年生まれ(25歳)。「Jリーグに行きたい」という希望を持っている。ストイックな選手で、ピッチ上でも妥協せず走り回る。ACLグループステージの浦和レッズ戦ではPKのキッカーとして1得点。トルシエ・ベトナムでは1人気を吐くストライカーとなっている。「最近注目」などと言う向きもあるが、2021年のカタールW杯アジア最終予選での対日本戦でも終始プレスをかけ続ける「ディフェンシブFW」を演じてチームに貢献していた。

15 グエン・ディン・バック(クアンナムFC)
   Nguyễn Đình Bắc  呼び名:ディン・バック
2004年生まれ(19歳)。昨季、Vリーグ2部で優勝して1部に昇格したクアンナムFC所属。クラブでは外国人FWを差し置いてPKのキッカーを任されている19歳。この年代のベトナム人選手の最高の逸材。海外でも通用する(早く行かせるべき)というのがベトナムにいる外国人指導者の共通認識となっている。

24 グエン・ヴァン・トゥン(ハノイFC)
   Nguyễn Văn Tùng  呼び名:ヴァン・トゥン
2001年生まれ(22歳)。ACLグループステージの浦和レッズ戦では、ハノイFCは若手主体のメンバー構成だったので出番があるかと思いきや、出番はなかった。

14 グエン・ヴァン・チュオン(ハノイFC)
   Nguyễn Văn Trường  呼び名:ヴァン・チュオン
2003年生まれ(20歳)。U23代表では主力だったが、今回、初めてA代表に招集された。背番号が、以前はホアン・ドゥック(現在、Transfermarktでベトナム人選手として最高額、2021年ベトナム年間最優秀選手)がつけていた14番になったので、「ヴァン・チュオンではなくホアン・ドゥックを呼ぶべき」」という論調になってしまった。ACLグループステージの浦和レッズ戦でスタメンだった。

出展:私

ベトナムの選手やクラブについての詳しいことは、「ベトナムフットボールダイジェスト+」の宇佐美淳さんの記事を読んで下さい。リンク貼っておきます。

さて、事前に日本側で言われていたと思しき「ベトナムは引いて守ってカウンター」的な言説については、「いやトルシエ・ベトナムはポゼッション重視でそんなに『引いて守ってカウンター』って感じじゃないですけどね」という感じで見ておりました。

実力差から、どうしても守る時間が長くなるのは当然ですけどね。

昨年11月の2026W杯のアジア予選で、ホームでイラクと対戦した時、アディショナルタイムに失点して悔しい敗戦を喫したんですけどね。トルシエさん、なんとか無失点に抑えて勝ち点1を確保するのかと思いきや、後半に若手の攻撃陣を次々とピッチに送り出しまして。カタールW杯で日本がドイツ、スペインを破った時のように、攻撃は最大の防御とばかりに「点を取りに行く」姿勢を明確に出しておりました。

今回の日本とのゲームの後、ベトナムでは、2021年12月のカタールW杯アジア最終予選の最終節での対日本戦(パク・ハンソ前監督時代)と比較して、「どっちが好みのスタイルですか?」という記事が出ました。わかりやすいので画像を引用します。シュート数、枠内シュート数、ポゼッション率、パス数、パス成功率を比較してます。

https://kenh14.vn/lang-tuc-cau.html

みんな大好き「フラットスリー」、守る時は5‐4ブロックになりますが、無闇にクリアして相手に回収され続けて守り続けるのではなく、あくまでつないでつないで、ボール保持を重視するスタイルになっていることがわかると思います。

もう一点、ベトナムリーグであるクラブを率いている外国人監督(と言うとほぼ特定できますけど)が、試合後に言っていた感想を記しておきたいですが、今回は長くなったので次回

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