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Q 子どもは薄着のほうがいい?

(この育児Q&Aは『チャイルドヘルス 2023年6月号』に掲載されたものです)


はじめに

『チャイルドヘルス』は,子どもの保健と育児を支援する専門誌として,毎号,子どもにかかわる専門職の皆さんに役立つ情報をお届けしています。
本誌「育児Q&A」のコーナーでは,子どもの保健や育児等に関する質問について,編集委員の先生方を中心に回答しています。
noteでは,過去の「育児Q&A」をご紹介していきます!

Question

子どもは薄着にしたほうが免疫力が高まると聞きますが,なぜそうなるのでしょうか??  保育園では裏起毛の服を着せると注意されます。

Answer

薄着にすると自律神経が鍛えられ,免疫が高まるという話をときどきネットで見かけます。免疫を高める食事,という話題もよく見かけます。でも実は,この話,医学的にはお勧めするほどの根拠があるものではありません。
 
そもそも免疫とはどんなものでしょうか。免疫はヒトの体に備わっているシステムで,ウイルスや細菌といった病原体を退治する役割を担っています。おもに 2 種類あります。自然免疫と獲得免疫です。自然免疫は人が生まれつきもっている免疫システムで,病原体のいる現場にすぐに急行し,病原体を食べて掃除したりしてやっつけるものです。
一方,獲得免疫は身につけるまで時間はかかりますが強力です。獲得免疫は,いろいろな病気にかかったりすることで病原体との戦い方を学習し,強くなっていきます。
小さい頃はいろいろな病気にかかっていたのに,だんだんとかぜをひかなくなるのは獲得免疫のおかげです。
 
このような免疫の働くしくみは複雑で,いろいろな免疫細胞が連携して機能していることがわかっています。野球チームでいうと,投手と打者のバランスがよいチームが強いのと同じで, どちらかだけが抜きんでていても強いチームとはいえません。免疫の働きが最大化されるのは「チームとしてバランスが整っていること」です。
つまり免疫は「整える」ことが大事だというわけです。
 
薄着にすることで丈夫な体になる, と以前からいわれてきました。この言葉は広く信じられてきたため,いまだに校則等で寒くても防寒着を羽織ることを禁止する学校すらあります。
しかし,子どもの体は成人より体重あたりの体表面積が大きいため,外気温の影響を受けやすいです。つまり暑い場所では体温は上がりやすく,寒い場所では冷えやすいのです。大人以上に体温調節は難しいため,衣類の着脱で調整してあげることが重要です。
子どもが寒さや暑さを我慢すれば免疫が高まる,という医学的根拠はありません。
 
あくまでも免疫は「バランスよく整えること」が大事。では,どんな生活習慣で整えられるのでしょうか。
それは平凡に聞こえるかもしれませんが「しっかりと睡眠をとること」「バランスよく十分な食事を摂ること」です。
また,外気温に応じて適切な衣類を準備することで体調を「整える」ことも大切です。
 
最後にもう一つ,医学的に証明されている「特定の病原体に対する免疫を強化する方法」があります。
それは予防接種です。
接種することで体がその病原体との戦い方を学習し,免疫を強くできます。予防接種は「かかると命に関わったり後遺症を残したりする病気」を対象に開発されていますので, しっかりと接種し,備えていただければと思います。

(佐久総合病院佐久医療センター小児科/坂本昌彦)

おわりに

いかがでしたか?
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皆さまからのご質問をお待ちしております!

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