うつ病を引き起こす原因の「ぐるぐる思考(反芻思考)」とは
「なんであの時こうしなかったのだろう」
「あんな言い方しなければよかった」
「全部私が悪いんだ」
こうした思考から抜けだけなくなってしまう状態を「ぐるぐる思考」と呼びます。
このような状態は精神の重圧になりやすく、抑うつ状態を助長する良くない習慣だといわれています。
今回はこの「ぐるぐる思考」を紐とき、対処法をお話ししていきましょう。
■ぐるぐる思考(反芻思考)とは
堂々巡りのネガティブな思考から抜け出せなくなってしまう状態のことを「ぐるぐる思考」といいますが、専門的には「反芻(はんすう)思考」と呼ばれています。
この思考に陥ってしまうと、プラス思考にしたいと思っても、自分ではどうにもできなくなってしまうことがほとんどです。
これは「抑うつ的反芻」とも呼ばれ、うつ病や不安障害などの様々な精神疾患を引き起こす原因になりやすいと指摘されています。
また、一般的に男性よりも女性の方が反芻思考に陥りやすく、男性よりも女性にうつ病が多い理由の一つがこの思考状態ではないかと考えられています。
■ぐるぐる思考は悪いことばかりではない
生活や仕事において、誰しも失敗することはあります。
「なぜ失敗したのか」と原因を分析することもぐるぐる思考です。 それによって同じ失敗を回避することにつながるので、一概にぐるぐる思考は悪いことばかりではありません。
しかしながら、「全部私が悪いんだ」「環境のせいでだめなんだ」というような、自分や環境への理不尽に対して考えすぎてしまうのは、うつ病やPTSDにつながってしまう可能性があります。
誰よりも本人が一番分かっているように、過去のことやどうしようもない環境など、自分がコントロールできないことについて延々と悩んでも物事は解決しません。
ただ時間とエネルギーを浪費し、体力も精神力も削られていき、やがて大きなストレスになります。 ストレスが長く続くことで、不安感や集中力・注意力の低下などをもたらし、最終的にはうつ症状が強くなってうつ病に進行していく可能性もあるのです。
ぐるぐる思考から抜け出せないと思ったら、早めに対処していくとともに、病気である可能性も自覚していきましょう。
■ぐるぐる思考(反芻思考)の対処法
意識的に注意をそらすことで、ぐるぐる思考に対処することができます。
実際に、抑うつ症状が強いぐるぐる思考やうつ病に対する精神治療として、「認知行動療法」という、簡単にいえば「意識的に注意をそらす」治療法があります。
これは、「別のことを考える」という意味ではありません。 例えば、「めんどうくさくて朝起きれない」「不安なことがあって眠れない」といったときに、とりあえず起きて歯を磨く、ホットミルクを飲んで布団に入りなおすなど、 悩みと関係のない、他のことに注意をむけることを言います。
また、映画、ゲーム、読書、運動など、好きなことに注意をそらすことも効果的です。す。
★☆★オススメの対処法★☆★
効果的な対処法が思いつかない場合は、ぜひ下記の対処法を試してみてください。
・マインドフルネス瞑想
マインドフルネスとは「今、この瞬間の体験を、ありのまま受け入れる心のあり方」のことです。
一般的な瞑想は自分の内側に目を向けて、自分と向き合っていくものですが、マインドフルネスは「息をする」「歩く」「食べる」といった、今この瞬間の自分の行動や状況を観察して細かく把握することに注力します。
雑念を持たず、その行動が良い悪いなどの評価や判断からも切り離された状態で、ただ事象に集中するのです。そこに感情は一切入り込みません。
この無の状態をマインドフルネスといい、その状態になるための手段の一つがマインドフルネス瞑想です。
方法はシンプルで「姿勢を正して」「集中する」だけです。普段意識することのない呼吸を意識することから始めるとコツをつかみやすいので、寝る前や寝起きなどに挑戦してみるといいでしょう。
基本的には継続的に行うことを前提にした習慣で、メンタルヘルスを中心に、様々な効果があるとされています。
・スポーツに打ち込む
スポーツに打ち込むのも良い方法です。
入院中の精神疾患患者を対象としたある研究では、体を動かすことで、反芻思考をはじめとした精神疾患に関わる症状が改善したといいます。
適度に息が切れる程度にしっかり体を動かす運動が望ましいです。
研究では、ノルディックウォーキング、筋トレや体操、球技などをそれぞれ40~60分行った結果、成果が見られました。
・自然の中を散歩をする
2015年のスタンフォード大学での研究では、自然環境と都市環境で90分間散歩した場合、自然環境での散歩のほうがぐるぐる思考(反芻思考)を改善できるという結果が出ました。
また、2019年に行われたストレスホルモンレベルを計測するミシガン大学の研究では、自然の中でわずか20分を過ごすだけで数値を大幅に下げられることが報告されています。
この研究では、わざわざ森の中などに行かずとも、ガーデニングや庭仕事、裏庭に静かに座っているという状況でも効果があることが判明しています。
・悩みの原因から遠ざかる
「旅行に行く」「仕事をやめる」「実家に戻る」「つらい人間関係に終止符を打つ」など、 最も簡単で、効果的な方法が悩みの原因から自分を遠ざけることです。
悩む原因がなければぐるぐる思考に陥っておらず、その問題から離れればそもそも考える必要もなくなるからです。
しかし、心が疲弊するまで離れられなかった理由があるという意味では、対処方法としては簡単ではあるものの、環境や経済的な都合によっては最後の手段になるかもしれません。
また、一人でする大きな決断が、大きな悩みとなってしまうこともあります。 友人や家族、精神科医、カウンセラーなどの専門家など、相談できる人を頼って自分の決断に客観的なアドバイスをもらいましょう。
■ぐるぐる思考(反芻思考)とうつ病の関係
ぐるぐる思考が続くからといって、それが必ずうつ病につながっているわけではありません。
しかし、さまざまな手を打っても思考を止められなかったり、抑うつ状態が緩和されなかったりする場合はうつ病を発症している可能性も高いでしょう。
大切なのは、つらい状態で一人で悩まないこと。そして、自己判断しないことです。
「なにかがおかしい」「自分ではどうにもできない」と少しでも感じたら、精神科や心療内科などに足を運びましょう。
わざわざ治療に行ったのに、うつ病でなかったら恥ずかしいなど、抵抗を感じる必要はありません。
医療機関は、病気の治療だけでなく「診断をする場所」でもあります。うつ病を発症しているかどうかを診て、うつ病ではないと判断するのもまた、医療機関の務めなのです。
うつ病は、できるだけ早く治療を始めることで寛解を目指せます。
うつ病ではなかった場合を考えるのではなく、万が一うつ病だった場合、なるべく負担なく、できるだけ早く改善していくことを考えましょう。
■まとめ
ぐるぐる思考は、どれだけ自覚していても自分ではどうにもできない、苦しい状態です。
まずは対処法を試してみて、うまくいかなかったり、改善が見られなかったりしたときはうつ病を発症している可能性もあります。
一人で悩まず、精神科や心療内科などを頼りましょう。
一日でも早くぐるぐる思考から抜け出すことが心の健康には大切です。
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