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ある集団との出会いが人生を動かした話 -音楽座ミュージカルがすごい

私、結構軽率に、様々な出来事によって人生変わった!って言いがちです。
毎回本気でそう思っているのですが。
でも今日はものすごく強い実感を持って、「私の人生が動き出した話」を書きたいと思います🗒

12/20(日)
音楽座ミュージカル「Sunday」観劇

これがもう、ものすごい体験でした。

音楽座ミュージカルって知ってる?

音楽座ミュージカルは1987年に旗揚げし、一貫したテーマのオリジナルミュージカルを創り続けてきたカンパニーです。これまで生み出してきた作品は、そのテーマ性とオリジナリティを高く評価され、文化庁芸術祭賞、紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞など、日本の演劇賞を数多く受賞してきました。
また、独自の創造システムが組織創造の研修としても注目され、近年、企業研修にも多く取り入れられています。(音楽座ミュージカルHPより抜粋)

という集団なのです、音楽座ミュージカルって。「劇団」という言葉を使うには何だかふさわしくない気がして、集団だとかカンパニーだとかいう言葉を使っちゃいたくなる。 

個人的には国産ミュージカルの圧倒的トップは音楽座ミュージカルだと思っています。
上演される全てがオリジナル作品。
大手商業劇団のように海外のヒット作品を日本で上演する、ということはありません。
全てを自分たちの手で生み出す集団です。

最大の特徴は独自の創造システム「ワームホールプロジェクト」。
一般的な演劇創作現場では、プロデューサーや演出家を中心としたクリエイター陣の意図や意思を、俳優が受け取って表現するのが通常だが、音楽座ミュージカルは所属する俳優たちは舞台の上で演じるだけではなく何もかも自分たちでやる。そこにいる全ての俳優が先輩だとか後輩だとか立場関係なく意見を述べ、議論し、創作するのだそう。

私と音楽座ミュージカル-出会い

私と音楽座ミュージカルの出会いは今から12年前。
12年前!?まじか。
当時小学生4年生、10歳だった私。

ピアノの先生の紹介でなんとなく入った地元の市民劇団。そこの卒業生が「東京の劇団でプロデビューするらしい!」と聞きつけ、観劇したのは「マドモアゼル・モーツァルト」でした。
忘れもしない2009/3/8 @兵庫

このチラシ、めちゃくちゃ懐かしい😭笑

で、その市民劇団の先輩というのが、この「マドモアゼル・モーツァルト」が初舞台で、初主演モーツァルト役を務めた高野菜々さん。
彼女への想いは後述しますが...
この作品で音楽座ミュージカルと、高野菜々さんに夢中になって私の人生は動き始めたのです。
小学4年生なんて、休み時間に校庭で友達と大縄跳びするか鬼ごっこするかしかしてませんでしたからね。そりゃあもう、歴史に残る衝撃的な出会いでした。ビビビッと来ちゃったもん。


ミュージカルといえば劇団四季や宝塚歌劇団のようなキラキラしたショーのような夢の舞台✨しか知らなかったので、こんな世界があるんだ!こういうミュージカルもあるんだ!と驚きました。それまで観てきたミュージカルと大きく違ったのは、人のリアルな生き様が描かれていたことでしょうか。残酷さや虚しさすらも描き切る潔さがカッコよくてどハマりしました。舞台から飛んでくるエネルギーといったらもうたまらなくって、今でも思い出します。

私と音楽座ミュージカル-どハマり

こうして音楽座ミュージカルと高野菜々さんにハマった私は、音楽座沼へ足を突っ込みます。
当時知り合った音楽座ファンの方々がいろんなことを教えてくれて知識が広がり楽しかったなぁ〜とか、稽古写真やキャスト発表のたびに大騒ぎだったなぁ〜とか、色々思い出します。音楽座ファン専用のSNSとかあったんですよ!
今思い出してもすごい。

当時広島から一番近い公演地は関西。
シアターBRAVA!なんて響きが懐かしいですねぇ。大阪城ホールの向かい側にあるビビットカラーの劇場ね👏
関西公演に旅行がてら母と足を運び、様々な作品に触れるたびにどんどん音楽座ミュージカルを大好きになりました。
音楽座ミュージカルがいろんなことを頑張る理由そのもので、公演が終わるたびに寂しくて悲しくて泣きながら新幹線に乗ったものです。
観終わった瞬間から次の公演が待ち遠しくて仕方がない帰り道が懐かしい🚄

当時は終演後ロビー面会があって、その場で感想を俳優さんに言えたり、サインもらったりしていました。「小学生のしいなちゃん」として可愛がっていただいた記憶があります。
開演前や終演後のファンクラブイベントも目白押しで、舞台に上がって裏側を覗いたりリハーサルを見学したり、一緒に歌ったり、千秋楽には缶ジュースで乾杯したり🥂
今舞台を作る側になって思うのは、よくもまああんなにもファンのために時間を作ってくださっていたなぁ!!ということです。本番前なんて自分のことで死ぬほど忙しいし、終演後はバタンキューですからね、私は。

劇場に足を運べない期間は、Ustreamでの毎週水曜のライブ配信番組「TogetheR⭐️」が楽しみで。お題に合わせてFAX送ったなぁ📠
毎週視聴者から1人、出演者のサイン入りのチェキがプレゼントされるんですよ、それがもうとっても楽しみで嬉しくて。今でも宝物📷

毎週新宿で映画版「メトロに乗って」の上演をしていた時代もありました🎥
若手女優さんが前説するんですよ。なつかし!

とまぁ手厚すぎるファンサービスにどっぷり浸かりながら、作品が持つ異様なエネルギーや人間味あふれるあたたかいキャラクターたちに魅了されて、自然と音楽座ミュージカルの舞台に立つことが私の大きな目標になっていきました。
お気に入りの作品は「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」「とってもゴースト」「泣かないで」「ラブ・レター」でした。

私と音楽座ミュージカル-高野菜々さん

音楽座ミュージカルを語る上で欠かせないのが高野菜々さんです。私が音楽座ミュージカルに出会うきっかけになった人であり、私の人生で一番最初の「憧れの人」です。
抜群の歌唱力と、憑依的な演技力。圧倒的な存在感で数多くの作品でご活躍されています。
当時の私にとって菜々ちゃんは神様でした。笑
あ、今もかも?笑
菜々ちゃんより歌が上手い人を知らないし、菜々ちゃんよりキャラクターに真摯に向き合う芝居をする人を知らない。何よりも舞台の上でも、普段の姿も、キラキラしていたのが印象的で。あの笑顔の虜だったのです。

手元にあった2ショットで一番古いもの🎋
2009年の「泣かないで」かなぁ。

菜々ちゃんが大好きで、菜々ちゃんになりたかった私は、菜々ちゃんが卒業した市民劇団に毎年参加し、菜々ちゃんが高校生の頃通ったスタジオに通い、菜々ちゃんを追いかけるようにして上京しました。

が、菜々ちゃんにはなれませんでした。 
ちゃんちゃん。

私と音楽座ミュージカル-音楽座離れ

漠然と思い描いていた俳優という仕事への憧れを、現実的に考えるようになった高校生の頃から、様々な劇団や様々な作品に目を向けるようになりました。
それまでは音楽座ミュージカルの世界しか見てなかった私にとって、世界が広がる日々でした。

その頃ちょうど音楽座ミュージカルは劇場公演が少なくなり、稽古場公演や企業研修が活動の中心に。それと同時に劇団四季の好きな女優さんを追いかける頻度が増え、必然的に音楽座よりも劇団四季の観劇回数が増えました。

上京したのに、町田はすぐそこなのに、
なんとなく足が遠のいてしまって、
そしてものすごくハマっていた時期があるからこそ音楽座ファンに戻るのが恥ずかしくって
なかなかこれまでのような頻度では音楽座を観なくなりました。1年か2年に1回?って感じ。

いつ観ても圧倒的に素晴らしくて、私にとって音楽座ミュージカルが特別なものに変わりはなかったけれど、何となくその時の自分の心が求めているものにはマッチしなくて、
「あぁ観てよかったなぁ」
という感想を抱いて劇場をあとにするだけでした。

私と音楽座ミュージカル-私が終わり、私がはじまる

そして、この度の「Sunday」を観劇しました。
2年前に稽古場公演を一度観劇しましたが、その時は新作生まれたてホヤホヤで私も作品理解が追いつかずとりあえずエネルギーを受け止めて終了って感じだった気がします。

今回はその再演。再演だけど、再演じゃないのが音楽座ミュージカルです。
同じタイトルの作品を上演しても、いつも演出どころか作品の雰囲気丸ごと真新しいものになるので、毎回新作の勢いです。
再演だけど、再演じゃないのを分かっていながら、何がどう変わるんだろうとドキドキしながら観に行きました。

原作は、ミステリーの女王 アガサ・クリスティの「春にして君を離れ」。
初演の観劇後に原作を読んだのだけど、作中に誰も死なないのに、何だかずっと気味の悪い作品でした。正直あんまり好きじゃ無かった。

2年ぶりにこの作品を観て。びっくりしました。ラストシーンが変わったんですよ。
ええラストが変わるとかそんなことあるん?
同じ路線の電車乗ったのに、昨日と終着駅違うやんけって感じなのよ。なにそれ面白い...

今回は草月ホールという赤坂の劇場で観たのですが、とてもとても雰囲気も規模も音楽座らしいぴったりな劇場で、どことなく懐かしくてあたたかい空気に包まれて心地良く観劇しました。稽古場とはまた全然別物。
1階席の一番後ろの列だったのだけど、舞台からのエネルギーに押されて背もたれから背中離れないくらいですからね。なんか舞台から気圧感じるほどだったわ。

「Sunday」の主役ジョーンは、まぁ嫌なキャラクターなのです。自己満足で押し付けがましい、自己中心的な人。でも良かれと思ってやっているのです。
「私がいないとみんな困るの」本気でそう思っちゃってるような人。
これまでの音楽座作品のキャラクター、特に主役は無垢で純真で守りたくなるような人が多くて可愛らしくて仕方なかったのですが...
ジョーンは何だか自分の嫌なところを見ているような気がして見ていて苦しくなるわけです。ジョーンに向けられる周りの目とかね、ジョーン自身はシャキッとキラキラしちゃってるところとかね。それもまた新感覚で面白かった。

そのジョーンが娘の見舞いにロンドンからバグダッドへ旅をした帰り道、悪天候で足止めをくらって砂漠で自分自身と見つめ合うのです。すると気付いちゃうのよね、自分が思い描いてきた理想が現実と違うこととか、幸せだと思っていた家族像が案外問題だらけだったりとか、愛し愛されているはずの夫は心は実は自分に向いていないのではないかとか。
自分の傲慢さや愚かさに気付く瞬間が何よりも恐ろしくて気分悪いんだよねぇ😢

まさに自粛期間、私も家という砂漠に篭り、自分自身と見つめ合う時間を過ごしました。
すると、気付いちゃうのよねぇ、嫌な自分ダメな自分。気付いちゃったのに、蓋をして、気付く前の人生の続きを当たり前のように歩んでいるんです、今。
だからジョーンを見るのが苦しかった。

音楽座ミュージカルって生き方の本質を痛いくらいに突き刺してくるから、その時の自分の感情や思想によって刺さりどころが変わるのです。今の私にはちょっと痛すぎたなぁ。

ミュージカルを観て楽しくないのって音楽座ミュージカルくらいなんですよ。こんなに苦しくて辛くて痛い想いさせられるのに、何でこんなに虜になってしまうのだろう。
でも苦しいだけじゃなくて、自分なりに希望の光を見出すこともできるのです。ちょっっとだけ光が差し込む隙間が与えられる。

そんなことを考え始めた頃には、もう再び音楽座ミュージカルの沼に首までどっぷり浸かっていました。大きな衝撃をくらった音楽座ミュージカルとの出会い、どハマり後の音楽座離れを経て、今じわじわと苦しくて頭の中で音楽座ミュージカルの音楽や言葉やエネルギーがぐるぐるして仕方ないのです。

人の人生を突き動かす力がある集団なのです。
苦しい想いがなぜか生きるエネルギーに繋がってしまうような不思議な力がある集団なのです。

私の中で何かが解き放たれ、直感的に今の私が求めていたものは音楽座ミュージカルなのだと感じました。今の私がやりたいこともここにあるのだと思いました。

ジョーンと共に、私が終わり、私がはじまったのです。

Sundayは年末年始映像配信もあるので是非。
お家から観劇できるなんて。良い時代だ。

オープニングナンバーでゲッコーの後ろに歩いてくるシシャたちがかっっこよくて!
あー音楽座だなぁとか思っていたら涙が溢れた。物語は始まっていないのにね!

ジョーン以外のキャラクターも、まぁ掴みどころがなくて陰を感じて面白いんです。
北村しょう子さん演じるエイブラル。ジョーンの長女ですが、しっかり者のお姉さんかと思いきや彼女は「不倫」という形の愛の中で悩んでいます。吐き捨てる言葉の強さが印象的でした。今にも何かとんでもないことやりそうな虚ろな表情が恐ろしくって。お気に入りです。
森彩さん演じるレスリー。彼女はこの物語のキーとなる人物ですが、天真爛漫な笑顔と笑い声が劇場中に響き渡れば誰もが彼女に心動かされたはずです。
井田安寿さん演じるブランチ。ジョーンの学生時代の同級生。男と酒に溺れる自堕落な生活を送っていながらも、何だか羨ましいくらいスッキリからっとした存在で、そういう生き方に憧れる人も少なくないはず。

普段〇〇役の〇〇さんのこの表現が好き!みたいな観点で演劇を観ているのですが、音楽座は観ている時にそんなことを思う余裕がないほど物語や登場人物に心を鷲掴みにされてしまう。

漠然としたことしか書けなかったけど

今の私が音楽座ミュージカルによって、もう一度人生を動かされ始めた今日の記録をどうしても書き残しておきたかったのです。

舞台の上の俳優はもちろん、ロビーを運営する俳優さんも、皆さんが生きていた。
集団として、生きている。
ミュージカルの創作だけじゃなくて、インターネット番組の構成とか企画とか、企業研修とか、ワークショップとか、全部全部自分たちでやられているんですよ。母体が掲げるテーマに一貫性があり、全てが自分たちの手から生み出されるからこその、エネルギーや統率感なのだなぁ。

音楽座ミュージカルの舞台に立てないと、私は死んではいけないような気がしてきました。
そのためにやらなきゃいけないことはたっっっくさんあるので、また一歩一歩真摯に直向きに生きるのみですが。

今後の私がどんなふうに生きていくのか、
私もちょっと楽しみになってきました。

演劇って不思議なもんで、何がきっかけかわからないままに人の人生動かしちゃうんだよね。

(画像は全て音楽座ミュージカルより)

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