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プロダクトマネージャー採用のリアルと転職エージェント裏話

こんにちは、久しぶりのnote投稿で今回はPM採用関係についての投稿です。

PM Careerというサービスをリリースして1年が経過(めでたい!)し、今の採用市場のことについてかなり理解が深まりました。私自身がずっと経営者として採用する側から、候補者を紹介する側になって見えるようになったこともたくさんあるので、経営者と転職エージェントどちらにとっても役に立つ内容だと思います。

今回は弊社の事業なのでPM文脈が強いですが、一般的な採用市場全体にもあてはまるお話です。

転職エージェントの期待値は「ミドル〜シニア人材」採用にある

まず大事な結論ですが、転職エージェント経由で採用をするうえで最も期待できるのは「ミドル人材」です。しかし、多くの企業が一騎当千の神人材を期待しているため期待値が合わないのです。なぜか?

話の前提として、人材をカテゴリー分けするとこのようになります。

  1. 一騎当千レイヤー(全体の1%):事業立ち上げや経営・マネジメント〜グロース全ての経験がある

  2. シニアレイヤー(全体の9%):専門スキルと経験・実績がある

  3. ミドルレイヤー(全体の40%):社会人歴5〜10年で一定の実務経験がある

  4. ジュニア・未経験(全体の50%):未経験〜実務経験3年以下

多くの企業が1と2を期待するのですが、この層は90%以上がリファラルや自主応募で採用が決まるのでそもそも転職市場には存在しません。私はこのレイヤーを「ツチノコ人材」と個人的に呼んでいます。みんな知っているけど存在しない(厳密には実在はするけど市場にいない)という意味です。

なぜこうなるのかと言うと、そもそもソフトウェアの市場が台頭してきたのがここ10年ほどなので、まだ一騎当千と言えるほどの人材の数が超少ないのです。ソフトウェアが増える数に比べて、人材が増えるスピードはそこまで速くないため需要と供給の不一致が起きているのです。そのため、理想通りのスキルセットを持つ人からの応募はまずありえない結果になってしまいます。

実際のところ最もボリュームゾーンとして多いのは3です。転職エージェントの紹介先次第で内定が出るかどうか変わるレイヤーであり、最も腕の見せどころとも言えます。PM Careerでも最も注力しているのはこのレイヤーです。

そして4の人材は転職エージェントの多くもあまりサポートできません。そもそもキャリアがまだないので、どこの企業を紹介しても内定をもらえずサポートしようがないからです。このレイヤーの人材は今の職場で頑張るか知り合い経由で転職をするのがベストでしょう。まず何か1つで良いので専門性を身につけることが重要です。

弊社では、4の人材はあまり支援できないと転職の面談をする時にもハッキリそう伝えるようにしており、それが本人にとって長期的に最もメリットがあるという考え方をしています。そんな人材も5年後にミドルPMになってまたPM Careerを頼ってくれたら嬉しいですね!

「なんでもできる」一騎当千なシニア人材を期待するなかれ


そして多くの企業でよく聞くのがこんな一騎当千の求人です。弊社にもPM求人でこんな依頼がよくあります。

  1. 課題特定でユーザーヒアリングやデータ分析ができ

  2. アジャイル開発に詳しく

  3. プロダクト戦略を作りロードマップを作れ

  4. エンジニア経験があり

  5. ビジネス職の理解もあり

  6. ステークホルダーとの交渉も上手で

  7. 人的マネジメントもあるとなお良し

  8. 有名企業の勤務経験があると最高

もうお分かりだと思いますが、こういった人材は自分で独立するかリファラルで取締役待遇で転職してしまえるため、転職市場には基本的に出てきません。こういった人材は根気強く採用接点を持ち続けるしかありません。

それよりも転職エージェントで最も期待するべきは、一騎当千シニア以上人材ではなく「働き盛りのミドル人材」です。私の知る限り、転職エージェントを上手に活用して採用に成功している企業はほぼ100%これが当てはまります。ミドル人材を積極的に採用をすると、転職エージェントとしても「ああ、この企業はしっかり選考して内定を出してくれるんだな。もっと人を紹介しよう」となるのです。結果的に、シニア人材も紹介されやすくなるでしょう。

シニア人材ピンポイントでだけ紹介してほしいと思うのが企業の心理なのは理解できますが、転職エージェントからするとミドル以上からまるっと採用してくれる企業のほうが採用の特徴も理解しやすく、紹介が圧倒的にしやすいのです。

転職エージェントの扱いが下手な企業の特徴3つ

私がサービスを運営するうえで「ああ、この会社には正直紹介できないな…」と思うことが実はよくあります。そんな企業の特徴はこんな感じです。

1. 転職エージェントをアウトソーシングだと考えている

転職エージェントは採用担当の手が回っていない時に使うアウトソーシング先ではありません。むしろ一緒にスクラムを組んで採用を進める「第三の人事担当」なのです。そのため、日頃から採用の現状や課題感を密にコミュニケーションしておくことが大事なのです。よくある外注先と同じ扱いをしていると、紹介される数もどんどん減っていくでしょう。

2. 契約をする≒紹介してもらえると思っている

転職エージェントが候補者に企業を紹介しても、必ずしも興味をもってエントリーしてくれるとは限りません。募集要項がいまいちだったり、企業の発信PRが足りなかったりすると当然のことながらエントリーすらしてもらえません。しかし、なぜかここを転職エージェントの努力不足だと思う人が一定いるのです。無理やりエントリーさせるわけにはいかないので当然なのですが、なぜか忘れられがち。

3. 募集要項を理解していない・作成できない

我々のような職種特化の転職エージェント事業をしているとよくあるのですが「募集要項の内容を現場と話してほしい」という相談です。しかし、我々からするとこれを考えるのは人事の仕事なので対応できません。一朝一夕で会社の適切な募集要項を作ることなど不可能だからです。採用がうまくいくかどうかは、募集要項の質に大きく左右されます。募集要項は魂を込めて作り込むことをおすすめします。

採用の成功には「本当に必要な人材とスキル」を具体的に考えよう

ではどうすれば採用に成功しやすくなるのか?それは大きく3つです。

  1. 募集要項を適切に作る

  2. ほしい人材のスキルイメージを具体的に持つ

  3. 採用情報を外部に積極的に情報発信する

細かくコツがあるので、1つずつ解説します。

1. 募集要項を適切に作る

当たり前かもしれませんがこれができていない企業は非常に多いのです。何がダメかと言うと、募集要項に書いていない「裏要件」があることです。PMの場合、よくある裏要件の代表格がエンジニア経験ですね。必須要件には書いていないのに、エンジニア経験がないと書類選考すら通らないことは実はものすごく多いのです。

こういった企業は転職エージェントからすると「言っていることとやっていることが違うじゃん…」と見えるため、人材の紹介もしにくくなってしまいます。なのでまず、募集要項をできるだけ漏れがないように必須スキルをまとめましょう。

2. ほしい人材のスキルイメージを具体的に持つ

前述した通り、何でもできる一騎当千のシニア人材はまず転職市場にはいないと思うことが前提です。そのうえで、何が必須で何が妥協できるスキルなのかを具体的にしましょう。これは1の作業にも直結する大事なポイントです。

例えば、私が紹介先の企業と話す時はこんな質問をします。

「エンジニア経験とビジネス職の経験、どちらか選ぶとしたらどっちが必須ですか?」
「この中で妥協できる経験・スキルを1つ挙げるならどれですか?」

こうやって深堀りすると、本当に必要なスキルセットが具体的になっていきます。すると、募集要項に書いている内容とは真逆だった、ということも珍しくありません。とはいえ、全ての企業でこれをやる時間はないので、募集要項を自分たちでまとめられる企業が採用に成功しやすいのは言うまでもありません。

採用に成功しない場合、ほしい人材がイメージできていないことがほとんどです。アクション量が足りないこともありますが、それ以前に本当に必要な人材をスルーしてしまっている可能性を考慮することから始めましょう。

3.採用情報を外部に積極的に情報発信する

募集要項を改善したら、それを積極的に外部へ発信しましょう。それは転職エージェントにもです。候補者が読めるブログ記事などにするのはもちろん、転職エージェントにも情報を持たせてあげてください。

実際、候補者が企業に興味を持てない理由の多くは「その企業の情報が少ない」からです。ブログ記事でも動画でも良いので、自社を知ってもらうための情報発信をしてください。それが必ず採用の成否に大きく影響します。

転職エージェント業界の裏事情

ここからは転職エージェントと呼ばれる事業を展開しているサービスが裏側で考えていることを赤裸々に書いてみます。正直、これを書くと怒りそうな人もいますが企業側の方は知っておいて損はない情報なので、忖度なしでいきます。

業界背景1:転職エージェントは誰を紹介しても手数料が同じ

シニア人材以上を紹介しにくい理由はもう1つありまして、それはビジネスモデルが「紹介した候補者の年収◯%」になるからです。誰を紹介しても手数料は変動しないので、そうなると紹介しやすい(≒数が多い)ミドル層の人材が最も多くなるのは必然なのです。

もちろん、シニア人材の方が内定が出やすいですし年収も高い(≒報酬も大きい)ので転職エージェント側にも紹介するインセンティブはあります。なのでシニア人材を全く紹介しないというわけではありません。私が言いたいのは、数が多いレイヤーの人材を多く紹介するのは当然ということです。

業界背景2:転職エージェントの9割はキャリアアドバイスをする知識がない

これは多くの転職エージェントを敵に回すかもしれませんが大事なことなので書いておきます。私が経営者としてお付き合いしてきた人材エージェント会社や知人経営者の話を聞くかぎり、基本業界や職種の知識がありません。そのため、シニア以上の人材にとっては転職エージェントに相談する理由がないのです。自分の方が詳しいのですから、自分で求人を探した方が良いと思うのが当然です。

実際、私自身が過去に転職をした時も転職エージェントさんに相談したことはありましたが、どこもいまいちな体験でした。結果的にはWantedlyなどで自分で求人を探して自主応募をして入社しました。メタップスもSmartHRもそうでした。リクルートだけは役員の方のリファラルでした。

余談ですが、PM CareerがPM特化しているのは他の職種まで広げると候補者にとって最適なキャリア相談を提供できないことが最も大きな要因です。同じソフトウェア開発職で、PMとエンジニアでは全くキャリアの考え方が違います。そのため、良質なサービス展開をしている会社はどこも職種特化をしているのです。エンジニアはエンジニア、デザイナーはデザイナーという具合ですね。

似た話で、スカウトサイトから転職エージェントには返信しなくても、企業からのスカウトには返信するという人がかなり増えてきている印象です。みな相談しても意味がない転職エージェントに頼ることが減り、どんどん企業と直にコミュニケーションが取れるスカウトサイトを利用するようになってきています。それくらい、転職エージェントは専門性がないところが多く体験が非常に悪いのです。

業界背景3:廃業する転職エージェントが増えている(難易度が上がっている)

私がPM Careerをリリースしてから1年の間だけでも相当数のサービスが苦戦、または撤退の判断をしています。なぜか?

理由は簡単で、転職エージェントのビジネスモデルが限界を迎えているからです。今起きていることはこんな感じ👇

ミドル以上の即戦力人材
自分で求人を探した方が早いので転職エージェントに相談しない。またはスカウトが来た企業と直に連絡を取る。転職エージェントは相談したいことがある人が、専門知識のある会社にのみ相談をしている。

ジュニアレイヤーの人材
どこの企業を受けても内定がもえらえないので会社としてもサポートしきれない、紹介しても報酬につながらないので相手できない。

このように、本来は最も紹介したいはずのミドル以上の人材がどんどん転職エージェントを頼らなくなってきているのです。

また、多くの転職エージェントは自分たちで候補者を集客する力がないため、ほとんどをスカウトサイトのDBからスカウトを送っています。そのためDB利用料がかさみ(これが高額!)、さらに返信率も1〜3%くらいしかないという地獄が起きています。いくら高いお金を払っても返事すら来ない、これでは廃業したくなるのも無理はありません。

転職エージェントは自分たち独自の集客チャネルを持ち、さらに専門知識を持ってキャリア相談に乗れなければやっていけなくなっています。これは多くの人材エージェントには無理なので、どんどん撤退が進んでいるわけです。この人手不足・DX全盛期の時代にただ仲介するだけの転職エージェントはどんどん存在意義をなくしつつあります。

生き残るのは「専門知識」と「自社集客」ができる転職エージェント

ここまで書くと転職エージェントはお先真っ暗じゃないか!と言われるかもしれませんがそんなこともありません。同業者の皆さん、安心してください。まぁ落ち着いて。

確かに転職エージェントは事業の難易度が上がっています。しかし、全ての事業者が無価値になるかというとそんなことはありません。大事なことは3つです。

  1. 独自の集客チャネルを持ち

  2. DBを保持し中長期の接点を持ち

  3. 専門知識をもってキャリアをガイドできる

こういった転職エージェントはむしろ重宝されるでしょう。まぁこれが非常にビジネス難易度が高いわけなので、正直に言えば7〜8割の転職エージェントは対応できないでしょう。

スカウトサイトからでしか候補者を集められない、専門知識がない転職エージェントはどんどん価値を発揮しにくくなります。早めに事業転換をする方が良いでしょう。今であれば採用代行事業のほうが手堅くビジネスとして成立します(どこも人事は超多忙で採用KPIが未達ですからね…!)

人材紹介の企業が自社DBを持つことの重要さはこちらの記事によくまとまっています。PM Careerでは創業時から他社スカウトサイトに頼ることなく、自社での集客に徹底的にこだわっている理由でもあります。


最後に:転職エージェントの限界とPM Careerのやりたいこと


さて、ここまでかなり赤裸々にぶっちゃけた話をしてきましたが「お前らも転職エージェントじゃないか!」とお叱りが聞こえてきそうです。おっしゃるとおりです。我々も今はいち転職エージェントにすぎません。

しかし、前述した通り転職エージェント事業の難易度は年々上がっており、候補者の転職スタイルに合わない部分が出てきてます。そのため、PM Careerでは今後このようなプロダクト化をしていく予定です。

  1. スキルをベースにした求人マッチング

  2. マッチング度で企業からスカウトが来る

  3. 今のスキルから将来のキャリアパスが分かる

私がやりたいのは実は転職エージェントではなく「PM人材が転職をふくめた適切なキャリア選択ができるプロダクト」を作ることです。今のPM Careerで行っている転職エージェント事業は、その第一歩にすぎません。ここから先はいずれお話できる時が来ると思いますので、楽しみにしていてください。

最後に1つお願いです。ただいま日本のプロダクトマネジメント市場トレンドを明らかにする大規模なサービスを実施中です。プロダクトマネージャー意外でも10分で回答できますので、ぜひ回答ご協力をお願いします!







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