CARNIVAL〜夜空のサーカス団の物語〜最終話
どうも皆様、こんばんは。
ストーリーテラーのカーニーです。
「CARNIVAL〜夜空のサーカス団の物語〜」もいよいよ今作で最期となりました。
さて、皆様。
唐突な質問ではありますが、サーカスの花形と言えば何を思い浮かべますか??
・・・そうです、空中ブランコです。
空中ブランコはそのスリリングな演出、そして人間離れした高いスキルや、身体能力を必要とする事から、夜空のサーカス団の中でも人気が高いパフォーマンスのひとつとなっています。
空中ブランコ乗りのケパは、その華奢な身体からは想像もつかないような超人的且つ、美しいパフォーマンスを披露します。
彼は元々、先代の空中ブランコ乗り、ジャンの見習いとして夜空のサーカス団にやってきました。先月ジャンが練習中に負った怪我を理由に引退を決断し、その座を弟子であるケパに譲ったのです。
ケパもジャンに負けず劣らずの素晴らしいスキルと身体能力を併せ持っていた為、ステージでのパフォーマンスに慣れるのにさほど時間はかかりませんでした。
しかしケパは公演後、ひとり楽屋の隅で悩んでいました。
それに気づいた団長が声をかけます。
「ケパ、どうかしたのかい?」
ケパは空っぽの声で答えます。
「団長、僕はこれまでジャンのパフォーマンスを真似る事しかしてこなかった。今僕がステージで行っているのはジャンの劣化版に過ぎない。せっかくジャンに託された場所なのに、僕は僕のパフォーマンスができていないんだ」
団長は相槌をうち、続きを促します。
「ジャンの事はもちろん尊敬しているし、大好きだ。だけど、僕は彼の弟子としてではなく、ひとりのパフォーマーのケパとして扱って欲しい。そうじゃなきゃ、怪我をしたジャンも自分の幻影を見ているようで辛いと思うんだ。ねぇ、団長・・・その為に僕は何をやればいいかな?」
「ケパ、君の気持ちはよくわかった。君はとても強く優しい心を持っているね。それは君の武器だ。どんなパフォーマンスをするにも、心と身体の強さ、そして柔らかさが必要なんだ。君はもう既にそれを持っているよ」
団長は優しく包み込むように続けてケパに言葉をかけました。
「君の師匠はジャンだ。それは君がどんなパフォーマーになっても変わらない。ならばやはり、どんなパフォーマンスをすべきか、どこを目指せばいいかはジャンに相談してみるのがいいと思うのだけれど、どうかな?」と続けました。
「わかったよ、団長。ありがとう。でもジャンはやっぱりまだ怪我の事で頭がいっぱいなんだ。僕らの前では無理矢理明るく振る舞ってはいるけれど、志半ばで引退を余儀なくされてとても辛いと思う。だから今はそっとしておきたいんだ」
ケパの言うことは一理ありました。
サーカス団発足当時からジャンは何度も素晴らしいパフォーマンスを披露し、客席を沸かせてきました。そんな彼が今、怪我により突然の引退を余儀なくされたのです。辛くないわけがありません。
団長はしばらく考えたのち、ケパに告げます。
「わかった。ジャンには僕から話してみるよ。今彼がどんな気持ちで、どうしていきたいのか。もう一度しっかりと聞いてみようと思う」
そう言うと団長は楽屋をあとにしました。
【楽曲】羽を無くした鳥
テントに向かうと、ジャンは1人、空中ブランコの設営準備をしていました。
「やあ、ジャン」団長がなるべく明るい声で声をかけると、「おお、団長!珍しいな、ひとりでここに来るなんて。どうかしたのか?」とジャンは明るく答えます。
「ジャン、怪我の具合はどうだい?痛みは…」
「聞いてくれよ、団長!」ジャンは団長の言葉を遮るようにして話し出しました。
「ケパのやつ、もうあんな凄いパフォーマンスができるようになったんだ。あいつが俺の所へ弟子入りした時はまだこんな小さい子供でさ。それがみるみる大人になって、今では堂々とパフォーマンスをしている。まぁ、まだ荒削りな部分もあるけど、団長!あいつは凄いパフォーマーになるよ」
ジャンの目はキラキラと輝いています。
「本当はさ、団長。俺、やっぱりまだ悔しい気持ちはあるんだ。だけどさ、怪我をしてしまったこと自体は変えられないし、なにより懸命に頑張るケパを見てたら、俺は俺の出来ること…やるべき事をやろうって思ったんだ。団長、俺はあいつを育てて、世界一の空中ブランコ乗りにするよ。約束だ」
ジャンはとっくに自分自身と向き合って答えを出していたのです。
簡単な事ではないでしょう。彼の言うように、まだ悔しく燻っている想いもあるでしょう。しかしそれ以上に、弟子であるケパの未来を楽しみに思っているのです。
「・・・ケパ、聞いていたかい?ジャンはこう言ってるよ」
団長が誰もいないであろうテントの入り口付近に向けて声を飛ばします。
「ジャン、、、」入り口の影に隠れていたケパが顔を出しました。
「なんだ、ケパ。聞いていたのか?盗み聞きとは関心しないな」ジャンは表情を引き締め、師匠として接します。
「ジャン、ごめん。僕…余計な心配をしてジャンの誇りと想いを蔑ろにするところだった。ジャン、ありがとう。改めてこれからもよろしくお願いします、師匠」
ケパはジャンに向かって深く頭を下げました。
それからというもの、ケパのパフォーマンスはどんどん向上し、いつの間にか「ジャンの劣化版」などというレッテルは剥がれていきました。
「なあ、団長。ケパのやつ、自分のことを俺の劣化版だと思ってたんだってな?バカなやつだ。最初からそんなレッテルは貼られちゃいないんだ。あいつの方がずっと才能があって、何よりもサーカスを、空中ブランコを愛している。そんなやつが劣化してるわけがないのによ」
ジャンが笑いながら話します。
「ジャン、このサーカスに君がいてくれて本当に良かった。心からそう思うよ。僕らの夢はまだまだ続く。これからも一緒に歩んでいこう」
団長がそう告げるとジャンは「まったく、、、よくもまあそんな歯の浮くようなセリフをまじめに言えるもんだ。・・・当たり前だろ!俺もまだまだこのサーカスの未来を見たい。ケパの成長もな」
サーカス団のパフォーマンスを舞台袖から見守る2人の背中は、とても美しくあたたかく見えるのでした。
CARNIVAL〜夜空のサーカス団の物語〜を読んでいただいた皆様、今までありがとうございました。
このお話は今回で一旦終わり。彼らはまだ今も旅を続けています。
また続きがあるのかどうか…それは私が彼らにまた会えたら、、、きっとお話ししましょう。
人生には色々な事があります。
いい時もあれば、辛いことも。
苦しい時は休む事も大事です。そしてそのあとに踏み出した一歩は、きっとあなたの人生のかけがえのない財産となるでしょう。
夜空のサーカス団は今もどこかで沢山の笑顔を生んでいることでしょう。
あなたの街にも訪れて、最高に幸せな時間を届けてくれていたら幸いです。
それではまた、きっと…物語の中で。
fin
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