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この国の話だ

好きで見ていたドラマに突然恋人の女性が見知らぬ男性二人に襲われるシーンが出てきた。・・・正確には「突然」ではない。そうではないかと薄々感じていた。でも避けられなかった。そのシーンが終わった後、心臓は倍の速さでドクドクと音を立てていた。

その晩は朝までひどい夢にうなされた。知っている女優さんが次々と殺されていく、何人も何人も、逃げられたと思っても執拗に追われて最後には殺される、朝が来るまでそれは続いた。子役の女の子もいた。みんな怯えていて、抗えない力に抑圧されて、諦めた目をしていた。

夕方、いつものようにウォーキングに出かけても、いつものように歩けない。背後から襲われるんじゃないか、向こうから来る自転車の男性にひどいことをされるんじゃないか、もう生きて帰れないんじゃないか、二度と笑えないんじゃないか。そうしているうちに、別の感情が芽生えてくる。ひれ伏して、言いなりになり、弱いものとして生きるしかない。殺されたくなければ。それがこの国の女性の立ち位置だ。日本の話だ。

これほどに、ドラマの中の回想シーンは私の1日を違ったものにしてしまう。Me, tooの運動を知って、数えたことがある。私はこれまでに何度痴漢に遭ったか。元恋人のあのときの行為はレイプではなかったか。逃げず、訴えもせず、傷つかなかったことにしているのは何故なのか。正しいのか。

こんな気持ちにならずに暮らせること。それが男性がマジョリティであるということ。この日本の話だ。