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背の高い人と背の低い人で、きっと見える世界が違うから

20代のころ勤めていた会社で、最年少社員なのに最年少リーダーを任されることになりました。

別に特別な実績があったわけではないですよ。ふだんは別のオフィスにいる社長にとって、名前と顔が一致するのがわたしくらいだったから、なんではないかと思います。

下っ端管理職とはいえ、社内では一番年下。朝の掃除や電話取り、来客の対応なんかは相変わらずわたしの仕事でした。

ある日、応接室を掃除していると、面接を受けに来たという方がやって来ました。掃除したてのソファに案内し、お茶を淹れて戻ってきてみると。

ゆったりと足を組んで座り、煙草を吸っていました。

(!!!!!)という思いを隠して再び灰皿を掃除。その後のmtgで、採用に関する議題になったとき、わたしは反対しました。でも、聞き入れられず、めでたく入社されたのがAさんです。

Aさんは、オソロシイくらいに、いろいろとブイブイやらかしてくれます。

最初はしかたないよね、とみんなは広い心で見守っていたようですが、わたしは別のことを気にしていました。

それは、人によって態度が違いすぎること。

マネージャーに対する態度と、現場の人(いわゆる平社員)への言葉遣い。仕事の頼み方からあいさつまで、Aさんのランク付けが透けてみえる!

高校生に間違われるくらい「その辺のお嬢ちゃん」然としていたわたしなんて、まったくのアウト・オブ・眼中。存在自体を無視されていたくらいです。

Aさんが入社して一か月くらい経ったころ。とてつもなく大きなミスが起きました。上長から指示されたのでしょう。わたしのいる部署に謝罪に訪れたAさんは、わたしに質問しました。

Aさん「ここのリーダーって誰?」

わたし「わたしです」

Aさん「え? リーダーだよ?」

わたし「この部署の責任者のことですよね? わたしです」

とたんに、おもしろいくらいに態度が変わった……。


Aさんの頭には、

・管理職は男
・自分よりも年上

というパラダイムがあったのでしょう。そしておそらく、

・後輩はパシリにしてOK
・平社員にペコペコする必要なし

というパラダイムもあったのだと思います。

パラダイムは、過去の経験や、得てきた知識によってつくられます。つまりAさんの態度は、Aさんがこれまでどのように扱われてきたかを示しているともいえます。

Aさんのように分かりやすく態度が違う人は、けっこういるものです。が、これは「上」から見ていると気付かないもの。なんせ「上」の人に対しては、「熱心で、ガッツがあって、いいヤツ」なのですから。


当時、上司がAさんに対して、なんのフィードバックをしないことが不思議でなりませんでした。なので、わたしにとっては、「こうした態度を許容する文化」というメッセージでしかありませんでした。

その後、ひょっとして、背が低く、女性で、童顔の人から見える世界は、まったく別のものなのかも、と思うようになったのです。

社会人生活が長くなり、十分に「おばさん」と言える年齢になっても、Aさんのことはよく覚えています。

仕事の場では、年齢や役職に関係なく、敬語を使うようになったのも、Aさんに出会ったおかげです。

「上」から見ている社会と、「下」から見ている社会は、きっと目に映る出来事そのものが違う。だからこそ、人からいただくフィードバックが宝となる。

経験が増え、役職が上がるほどに意識しておきたいことです。

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