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価格の心理学 (リー・コールドウェル著)

「価格の心理学」が面白い。

  資本主義の世界で生活する限り、「価格」からは逃れられない。

 投資、生産、消費、その経済活動を営む限り、「価格」の問題は常につきまとう。人の心理がいかに働いているのか。ダニエル・カーネマンがノーベル経済学を受賞し、脚光を浴びた行動経済学に通じる記載が、数多く掲載されている。生産者、営業マン、値決めを行うマーケティング担当者、消費者、それぞれの立場の人にとって、新たな気づきを得られる良書だと思う。

値決めを行って営業を行っている自分から見て、特に面白いと思った記述は以下の記述。

・"最初に見た数値の情報が印象に残り、それが基準点となって、その後の判断が左右される心理現象を"アンカリング効果"と呼ぶ。"

・"人は、すぐに思いつく経験を、典型事例だと思い込んでしまう傾向がある(利用可能性バイアス)"

→ 最初に提示する顧客へ提示する価格を不当に低くしては決していけない。それが顧客の頭の中に残ってしまうからだ。高い価格を提示した時に、え、何でそんなにするの?どんな付加価値があるの?そんな思考回路をたどらせて、顧客が納得、腹落ちする理由を説明していく。

・"商品の差別化の策を考えるには、商品が顧客に提供している価値を探り、それらに差をつけた商品ラインナップを揃える"

・"最大利潤を追求し、購入客を確実に増やすには、多様な価格帯の商品を作り、高級予算の顧客の支払い金額をすぐ増やさなければならない。その仕組みを価格区別あるいは価格差別と呼ぶ。" 

・"そこが知恵の働かせどころ。他の人よりエリスが高い価格をつけたのは、高く評価しているポイントがあるからでしょう。それが何かわかれば、それぞれの顧客にふさわしい商品を作って、価格を変えられるわ。そうすれば収入が最高になる。"

・”商品の独自性が強ければ、高額な金額を支払ってくれるセグメントをメインターゲットにすべきである。”

→さらっと書いているが、現実ではとても難しいところ。小さな会社は、決して価格競争だけに巻き込まれてはいけない。どう製品、サービスの差別化を図るか。まずはその差別化を図る、つまり顧客が感じる価値を知り、その価値を高めることが第一。その後に、上記のような顧客の心理的な要素を利用することができる。

→提案書を3種類以上つくる、というのはとてもわかりやすい。提供出来る最高のサービスを全て詰め込んだA案。標準よりも少し上のサービスを入れたもっとも売りたいと思うB案(少し高めに設定)。そして最低限のサービスのみとしてC案。顧客がB案を選ぶ確率は高くなる。

 度々、読み返したくなる一冊。

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