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ローソンの店長がくれたもの

ほぼ毎日利用する、最寄りのコンビニの店長が改装工事の後にいなくなると聞いた。レジでの突然の会話だったのでサラッと聞き流したが、家に帰ると少し落ち込んでいる自分がいた。
それほど店長を気に入っていたんだと気づいた。

付き合いはかれこれ5年くらいだろうか。疲れて帰ってきた深夜も、タクシー帰りの時も「ローソンの駐車場で」と運転手さんに伝えていたほど。仕事帰りに寄るのが日課になっていた。

決してコミュニケーションが得意なタイプの男性ではなさそうな店長。名前も知らないし、特段の共通点もない。ただいつも元気に声をかけてくれる。駐車場で若者が騒いでいたら、勇気を出して注意していたし、コピーに手こずる老人には丁寧に寄り添っていた。

いつも「お疲れ様です」と笑顔で見送ってくれた。鬼滅の刃のお菓子が大人に転売されないように隠しておき、地元の子供にだけ売っていたり、小学校の職業体験でも積極的に協力していた店長。あらゆる彼の行動から「誰かを守る」人柄を感じた5年間だった。

改装工事の前に、お気に入りのチーズケーキと手紙をしたためて渡しに行った。すると、ほぼ商品もなくなった店内で近隣住民に囲まれて、子供たちに追い掛け回されている店長の姿があった。(この安心感がなくなるのか…)と思うと、さらに辛くなった。
ただ、ここは明るく振舞おうと決意。最期の挨拶を笑顔でした。

「いいお店でした。スタッフの皆さんと食べてください!」そう伝えると…
店長は「おかげで楽しく仕事が出来ました。本当にありがとうございました。このまま話していると涙が出てきそうです。こんな心遣いをいただいたのは初めてです。」と笑顔の奥にうっすら涙を浮かべているのが分かった。

このあとどこに行くとか、この先何をするとか、そんなことはなにも聞かなかった。

またきっとどこかでファンを創るのだろう。

ただ、最寄りのコンビニの店長が変わるだけの話。ただ、彼が作った安心感に「ありがとう」が言いたかった。店長はきっと、地域のみんなに安心をくれた。
当たり前なんてないことを改めて感じた。
もっと日々に感謝したい。

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