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アビガンから考える。薬を増産するためには?

新型コロナウィルスに効くと言われ、インフルエンザ薬のアビガンが注目されています。アビガンの製造販売元は富山県の富士フィルム富山化学。その中でも生産できるのは富山市の工場でのみと予測されます。最近、原薬の生産にデンカとカネカが動き出したというニュースがありました。薬の組成を見ると、1錠260mgに有効成分ファビピラビル200mg含有と書いてあるので、ほとんど原薬ですね。原薬の製造ペースを上げることがニュースになるのがよくわかります。

こんな時、一般の方はこう思うでしょう。「富山県といえば薬の都市。製薬会社がいっぱいあるんだからみんなで作ればいいじゃないか」と。

しかし、医薬品を別の工場で作る(委託)するのはとてもハードルが高い事項なのです。こんな機会なので、医療機器から製薬会社へ、15年間渡り歩いてきた知識で、簡単に説明します。

医薬品を製造販売するには、厚生労働省から承認を得る必要があります。その際、医薬品の成分分量、有効成分の原料メーカー、薬を作る工程とその試験方法を記した上で申請書を提出しています。

アビガンの承認書には、製剤の製造所は「富士フィルム富山化学株式会社 富山工場」(富山に工場が二つあるので、どちらかになります)と書かれているはずです。元々備蓄用の医薬品なので、大量生産することは考えておらず、富山化学1社で十分製造できるでしょう。従って、他の会社で作ることができません。

しかし、製造場所を増やせば、単純に製造量は増えます(原薬の生産が追いつくかどうかは別として)。では、製造場所を増やすことはできるのか。答えは可能です。医薬品製造は委託することが認めれています。ただ、新たに製剤工程(錠剤を作る工程)を外部委託する場合、承認書の一部変更申請を厚労省へ提出して審査を受け、承認を得る必要があります。書類の審査〜実際に3ロット製造〜行政の実地査察を受けて、承認が得られるまで、半年から1年かかります。

包装についても委託可能です。包装工程を行う製造所を追加するには、一般的に承認事項軽微変更届で対応できます。製品の出荷から30日以内に、都道府県の薬務担当部署へ変更届を出せば良いので、こちらはとにかく生産設備さえあれば受託生産が可能です。アビガンは一般的なシート包装なので、対応可能な会社は多いと思います。

結果として、今すぐに製造場所を増やして大量生産することは難しいと言えるでしょう。ただ、普通のフィルムコーティング錠なので、難しい技術は必要ないと思われます。今頃、もしかすると外部委託の動きが出ているのかもしれませんね。


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