獅子川修光

作家を目指しています。

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最近の記事

短編小説 「人生屋」

プロローグ 日を浴びない生活を半年間過ごしていくうちに、徐々に自分自身が人間としての生活を真っ当に行えているのか不安になる。 今の私は、何が面白くて毎日自堕落な生活をしているのだろうか。 暗い部屋の片隅、無造作に散らばった原稿用紙の上に、夢と現実が交錯していた。真夜中、薄明かりの中で、私は自らの敗北を認めることができずにいた。作家としての成功を夢見ながらも、その現実はどこか遠く、心の奥底に沈んだままだ。私の人生は、どこかの次元で停滞しているように感じられた。 恋人のむぎは、

    • 短編小説「虚飾」 

      短編集「虚飾」獅子川 修光著 ・「透明な視線」 ・「愛の牢獄」 ・「空っぽ」  「透明な視線」     世間に疫病が蔓延した時分、私は見えない未来に対して辟易としていた。  家賃3万円程の大学寮に住み、ラーメン屋の夜勤バイトに週5で入り、家に帰ってもスマートフォンを眺めるばかりで、気がついらた窓から朝日が流れ込んでいて、そのまま一限に向かおうと思って、目を開けていても、結局寝落ちしてしまい、目を覚ますと夕方なってしまい、殆どの単位は絶望的だった。  そんな私にも唯一、退屈

      • 【創作大賞2024応募作 恋愛小説部門】  自由へのダリア 作:獅子川修光

        「自由へのダリア」 作:獅子川修光 朝の音は心地良い。目玉焼きを焼く音、オーブンからトーストを出す音、食器を並べている音、鳥のさえずり、世界が動き出したような音は、私の活気を呼び起こしてくれる。 「結菜、起きなさい」 お母様のお声は、蚊の鳴くようなお声で、とても目覚ましには向いていない。ここ最近、体調がかなり悪そうで、私は咳き込んだ度に過度に心配し、 「あまり無理をなさらず」 と背中を摩りながら言った事があって、お母様は、 「結菜が大学に行って、きちんと卒業して、結婚する

        • 私はうさぎ

          冬の朝ってずるい。 どんなにお腹が空いていても、お布団の中から出られらなくなる。 おしっこを限界まで我慢して、ようやく、お布団から出る事が出来るけど、寒くて堪らない。 お布団にすぐ戻って、寝ようとすると、猫のぴいが入ってきて、ごろごろ喉を鳴らしている。 ぴいは、賢い。 私に懐いているのではなくて、一番、温かい所がお布団の中だって、知っている。 ぴいは、人間だったら、世話たり上手のオスで、きっと、上司から気に入られて、出世する、メスにも、きっと、モテる。 ぴいに言ってやった。

        短編小説 「人生屋」