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未来との距離。

若者が持ってる最大の資産は何か?そう聞かれると、多くの人は「時間」だと答えるだろう。全くその通りだと思うが、その理解が浅かったことを反省する一年だった。

2022年は僕にとって苦しい年だった。いや正直に言えば、この2-3年ずっと苦しい感覚があった。それはコロナや経済不安のせいもあるだろうが、自分が「未来」から遠くなっていたからだ。

僕の仕事は、いわゆるブランド開発とPR戦略を掛け合わせたようなもので、言ってしまえば、会社や事業の“半歩先”をデザインする仕事だ。半歩先というのがポイントで、新しすぎてもダメ。今のままでもダメ。そのブランドにとって不変の部分を大事にしながら、次のマーケットトレンドに乗せていくバランス感覚が求められる。

大雑把に言ってしまえば、ブランド開発は不変のコアを抽出する仕事で、PRはメディア的な“今”=世の中的な次に乗せる仕事。その両方の舵取りをする。そういう意味では、紅白歌合戦のプロデュースはその極地だ。歴史を大切にしながら、新旧、ジャンル、SNS/視聴率、ジェンダー、順番に組み合わせを奇跡のバランスで成り立たせる。想像しただけで吐きそうな大仕事だ。

余談はさておき、僕自身ニューピースという会社を経営する中では、この半歩先的感覚が良くない方向に作用してることに気づいた。

ベンチャーとして新たな習慣や市場をつくるようなチャレンジをするには助走が短すぎる。つまり短期的な話題は作れても、中長期の事業を作るにはアセットが溜まりきらない。

仕事柄、様々な経営者と会話させてもらう機会が多いが、その感覚で言えば、ベンチャーの事業でも一定の成果を出すには7-12年ほどかかるし、いわゆるブランドビジネスや地域のまちづくりをするには少なくとも25-30年かかる。

この2-3年何が苦しかったかと言えば、半歩先の感覚で立ち上げた事業をどのようにオペレーションするか、マネタイズするか、組織化するか、という半ば目先の話ばかりをしてきたこと。それによって視点が、完全に現在にこびりついてしまった。

さらに自分でも誤算だったのが、数年前と同じ感覚で半歩先を進んでいるつもりでも、実際かなり未来から遠ざかっていた。

これは仕事に限らない。プライベートでも全く同じことが起きてることに、妻の指摘で気付かされた。妻曰く、昔のほうが未来の話をしていたと。

例えば、僕は26歳の時に結婚して子供を授かったが、妻に聞けばその時はよく「10年後」の話をしていたらしい。35歳の時にはきっと仕事が忙しいから今子供がいたほうがいいね、なんてことを。それが気がつけば、再来年の長男の小学校どうする?なんてことだったり、どんどん今に近い話をしてる。

大人になったと言えば聞こえはいいが、未来との距離が開いている、とも言える。図にするならこんな感じだ。

一般的に人生を図示するとこのようになる。右に行くほど歳を重ね、未来の西暦になる。そして様々な資産が溜まっていく。未来は右側のほうにある、ように思える。
ただ、若者の資産である「時間」という軸を置くと、矢印は左側に向かう。若いほど時間がある。時間があるということは可能性があるということで、それは即ち未来だ。未来のポジションが180度変わり、右側ではなく左側になる。
歳をとるほど今日明日のことで一杯になり、未来から離れていく。そう考えると、同じ半歩先の感覚でいても、25歳よりも35歳の自分のほうが、知らず知らずのうちに現在に近い思考をしてしまっている。ということに気づく。


上記はかなり極端な図だが、でも肌感覚としてはこんな感じだ。

例えば、若者は自然と新しいメディアやテクノロジーを試せる時間があるし、過去の積み上げや成功体験も少ないのですぐに取り入れてモノにしていける。SNSやコンテンツを見ればわかる。今若い人たちが使ってるものが未来のスタンダードになる。そう考えると若い人ほど未来にいる。若いうちは今しか意識してないが、それが許されるのは今=未来だからだ。

一方で歳をとるほど、未来から離れていく。今年のこと、明日のこと、今日のこと。若い人と同じく今を生きているにしても、人間関係は何年も変わらないまま、会話は過去の思い出話が中心に構成されている。新しいことをするにも腰が重い。だから未来は意識的に取りにいく必要がある。

自分よりも圧倒的に若い人たちとつるんだり話したり、新しい物やサービスはいち早く体験する癖をつけたり、または運動して見た目や健康を維持したり。今思えば、僕の師匠とも言える家入さんは、今の自分の年齢頃、毎日のように新しい学生と話していたが、それは未来との距離をキープするためだったのかもしれない。

そう考えると、歳をとった経営者が学校を作りたくなったり、スポーツを支援したり、若いアーティストの作品を買ったりするのは、マズローの欲求というよりも、未来とつながり続けたいという欲求の現れとも言えるだろう。

間違った認識かもしれないが、年末年始、色々と振り返るなかで、自分の中では腑に落ちる整理になった。

2023年は、未来との距離を意識する一年にしたい。未来とつながる欲求を尊重するとも言える。トレンドありきの半歩先ではない、自分の未来感覚(≒10年後のあたりまえ)を仕込んで事業化していく。

その準備として去年、ニューピースを半歩先ではなく数年後を見据えて「コミュニティテック/コミュニティマネジメントの会社」として設定変更したが、まだまだ現在目線が抜けきれていない。今年はさらに大胆に、未来志向で自分も会社も変えていく。

僕は実際に体験することでインスパイアされて、それを抽象化してアイデアにしていくタイプなので、今年はDAOやNFT、WEB3をはじめ新しいコミュニティテックの領域の体験を増やしていこうと思う。むしろまだ名前のついてない世界に飛び込んでいきたい。

一年後の理想は、周りに考えを話したときに、ちょっとなに言ってるか分からない(けどワクワクする)、くらいの状態になっていること。あぁ、2023年が楽しみになってきた。