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アイデアを出し続けるためにしていること

とにかくたくさんデザインの仕事を抱えている。
よくアイデアがつきませんね?って言われるけど、もともとアイデアなんて持ってない。
どうしてるのか?と言えば「アイデアはないけど、とにかく作り続けてます」としか答えようがない。

答えになっているかわからないけど、アイデアを出し続けるためにしていることを書いてみる。

表紙のデザインを決めるのにいつも何パターンかデザイン案を作って、どのデザインがいいか、編集・著者・営業など関係者の総意で決めてもらうのだけど、最近の傾向として、決まるのがだいたい一番最初に作った案か、最後に作った案のどちらかになる。

例外はもちろんあるけど、一発で決まる場合、ほぼそのどちらかに決まる。

わたしのデザインの進め方を簡単に書くと─

1.とりあえずざっくり作ってみる
下書きはしない。まずは試しにざっくり作ってみて何となく方向性を考える。
細かいことはほとんど考えない。本当にざっくりと初期衝動だけで作る。

2.時間をかけて何度も作り込む
それから何度も試作を繰り返して練り込んでいく。
トライ&エラーを繰り返す。何度も作り直して、ああでもないこうでもないやっていく。
別の方向を試したり、時間を空けて寝かせたり。
ここにいちばん時間をかける。

3.気楽に別の案を考える
最後、デザイン案を送る直前に、気楽にもう一個だけどうでもいいようなデザイン案を考えてみる。これはないでしょう?って案とか、この感じは作ってなかったなとか、気楽にざっくり作って最後に付け足す。

「1」と「3」はざっくり。
「2」にいちばん時間をかけるんだけど…
いちばん時間をかけてない「1」と「3」が選ばれる。
特に最初に作った「1」の案に決まるケースがここのところすごく多かった。

何なの?考えこまないでやった方がうまくいくってこと!?
考えこまないで楽にやる。
これは、大切なことなんだと思う。
おそらく余計な力が入っていない分、シンプルにデザインできているんだと思う。

効率だけ考えると「1」と「3」だけやればいいように思える。
最初にぱっと作って、最後にもう一回ぱっと作っておしまい。
そうしたら仕事はぐっと楽になるし、時間もかからない。
究極的には「1」だけでいい。
最初にぱっと作って送っておしまい。
1日で終わる。

明日からそうしよう!

でも、そうはならない。

というのは、「1」と「3」を作るために「2」が必要だからだ。

仕事をはじめた当初は、最初に作ったものをぱっと作って、ぱっと送るスピード重視の仕事をしていた。
けどそれで行き詰まった。
簡単にいうとバリエーションの幅が狭くなり、アイデアが枯渇していった。

そこでデザインの出し方を改良していった。
トライ&エラーを重ねる工程を足し、寝かせる時間を作り、最後に1案作り足す工程を足し、少しずつ今のやり方にしていった。
仕事を面倒くさくしていった。
それでわかったことは「デザインのアイデアを出し続けるには、デザインし続けるしかない」ということだ。

とにかく量を作り続けること、無駄になるたくさんのアイデアを考えること、アイデアを枯れさせないための方法はこれしかないんだってことに気がついた。

だから一番無駄かもしれない「2」の何度も作り込む工程がいちばん重要。
力を抜いて作る「3」のアイデアは「2」の熟考がなければ作れないし、最初に思いつきで作る「1」についても、別の仕事で重ねている「2」の工程の集積があって生み出せるものに違いない。
たくさん仕事を同時進行することで、別の仕事の別の工程が、それぞれ影響し合って相互作用を生んでいるんだとも思う。
とにかくアイデアを吐き出し続けることで、次のアイデアが生み出しやすくなっているのは確かだ。

「アイデアを考える最良の方法は、たくさんのアイデアを考えることだ」
とノーベル賞を2度受賞したライナス・ポーリング博士も言っている。

無駄かもしれないけど、とにかく作り続けること。
苦しんで、苦しんで、シンプルで当たり前の結果に行き着く。
それ以外の方法はないんだろうな。
効率だけで考えて、無駄を省いていくと、結局は枯渇していくんだと思う。

直近の仕事で最初にサクッと作った案に決まった代表的な仕事。
これだけ作って終わりでいいようにも思うんだけど、この後に考えに考えて作った大いなる遠回り(無駄)がきっと別の仕事で生きてくるはず。



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