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【脳の仕組み】高カロリーな食事が病みつきになる理由と、ドラッグが依存性を持つ共通点

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焼肉って、、、美味しいですよね(当たり前)。

皆さんも大好物だと思います。毎日行っても良いと思っちゃいますよね。

本日は高カロリーの食べ物やドラッグがどうして依存性を持つかの共通点を脳科学の観点からお伝えしたいと思います。

人間が特定の行動を学習する過程(オペラント学習)

動物は自分がとった行動によって何かしらの嬉しい事を感じると(=報酬を得ると)その行動を頻繁に行うようになります。このように経験によって行動が増える過程をオペラント学習と言います。

例えば、お酒を飲むと楽しくなるので無意識にお酒を飲んでしまうことや、レバーを押すと餌が出てくるエサやり機をずっと操作するワンちゃんなどが良い例です。ドラッグの常用も典型的なオペラント学習になります。

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そしてこのオペラント学習には大きく2種類の学習方法に分けられます。

学習の種類①:報酬を求めるための、正の強化

「正の強化」は報酬を得られる行動を繰り返すようなことです。

例えば冒頭で話したようにお酒を飲む(=行動)と楽しくなるので(=報酬)、ついついお酒を毎日飲んでしまう(=習慣化)というのが「正の強化」の例です。

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中毒性の高いドラッグも高揚感や多幸感、周りとの親近感を感じさせるなどの効果があるので多くの場合、正の強化にあてはまります。そして即効性の高い薬物ほど、ドーパミンの放出を促すことで依存状態を素早く形成させる効果があります。

学習の種類②:不快を軽減させるための、負の強化

反対に「負の強化」というのは、不快な感情を止めるための行動を繰り返すようになることを言います。

例えば「虫に刺されたのでかゆみ止めの薬を塗る」というのが例です。薬を塗ることで「かゆい」という不快な感情が解消されるため、虫に刺されたら薬を塗るという一連の行動が強く結びつき、この行動がパターン化されます。

薬物も常習していると、耐性(同じ量だと効かなくなること)と離脱症状が現れ非常に不快な気分にさらされます。アッパー系のドラッグを使っていると、段々とそれを抑える代償機能が脳内で形成されますが、ドラッグを使っていない時に代償機能だけ働くので気分が落ちこんでしまいます。そしてこの離脱作用による不快感をなくそうとするために、またドラッグを使ってしまう、、、というループに入ってしまうため負の強化が起こっていると言えます。

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脳には「神経を接続して新しいことを学んでいく」という素晴らしい機能がありますが薬物の本当の恐ろしさは、この学習機能を逆手にとり、ドラッグの使用から抜け出せないループにハマらせることにあります。

薬物や美味しい食べ物はどの部位に働きかけるのか

美味しい食べ物を摂取した時というのは、味・視覚・嗅覚・食感を主とする5感からの情報が眼窩前頭前皮質や線条体に働きかけドーパミンを放出したり、そこからさらに視床下部外側(食べたいと思う本能)に働きかけ、さらなる摂食行動を誘発します。

ドラッグの場合、このような食事の経路と異なり、強化学習や行動の誘発につながる各部位にダイレクトに働きかけることにあります。以下図の赤線*2

ドラッグと美味しい食べ物の共通基盤

第二のドラッグ「脂質」

そして何も依存性が高いのは薬物だけではありません。我々が普段口にする脂質も非常に依存性が高いものです。脂質というのは最もエネルギー密度が高い栄養素であり、脳はこの重要な栄養源を積極的に摂取するための機構を備えています。

食べ物の摂取量の調節機能や、満腹中枢と呼ばれる機能は脳の視床下部という部分にあり、本来であれば全体のエネルギーバランスをとって過剰摂取しないような機能を持っています。この摂食行動そのものは必要なエネルギーを摂取完了すれば通常落ち着くものですが、実際の食事には学習という側面もあり、この限りではありません。

感情や学習を司る大脳辺縁系の扁桃体や側坐核という部分は、必ずしも体全体のエネルギーバランスを見ているわけではなく「美味しいものは正義!」という過去の学習を通じてどんどん脂質を欲しがります。

アメリカで面白い研究がありました。いくら飲んでもなくならないスープ(被験者には気づかれない形で自動でスープ皿に注ぎ足される)を与えると、被験者は通常のグループに比べて明らかに多くのスープを飲むのですが、被験者は多く飲んだことに無自覚であったという実験結果が存在します。*1

別段空腹でなくとも、目の前に置かれた食べ物を食べてしまう、お皿に盛られた食事は途中で満腹を感じても食べきるといった過食行動は、こういった学習を司っている大脳辺縁系などが悪さ(?)をしていることに原因があることでしょう。

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まとめ

もし読者のあなたがカロリーの過剰摂取の悪癖から抜け出せず困っているのであれば、人間は学習するという点に着目して手を打つと良いかもしれません。

具体的には、食べ過ぎによる悪影響をひと通り考えたうえで、それを避けるために過剰な食事を抑える、、、など別のモチベーションを持つと良いでしょう。

もちろん報酬や嫌な感情というのは個人差があるので、自分が本当のモチベーションになるものをベースにしてください。自分のモチベーションがわからないという方は自分を客観的・メタ的に認知する能力(=メタ認知能力)を身につけることをお勧めします。

#メタ認知については、またどこかの機会で書いてみたいと思います。


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ーーーーーーーーーーー以下出店ーーーーーーーーーーー

*1: Bottomless bowls: why visual cues of portion size may influence intake:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15761167/

*2: Paul J Kenny, Common cellular and molecular mechanisms in obesity and drug addiction:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22011680/

脳の生理学から見た脂質と肥満:https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/10/10/10_375/_article/-char/ja/


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