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【エッセイ】自転車日本一周記17

最南端到着!

鹿児島に戻ってきた。早速目指したのは本土最南端の佐多岬。
そへたどり着けば本土の端っこにすべて到達できる。そのワクワク感はあった。それと、もうすぐ終わりを迎えるのだという気持ちにもなっていく。
桜島から立ち上る煙と道路に灰が落ちているのを見ながら。町からどんどんと人の気配がない所へと向かっていく。佐多岬までの距離が近づけば近づくほどお店もなく、コンビニすら見当たらなくなっていく。その感覚は北海道と似ていた。端っこはどこだって人が少なくなる。
しかし、佐多岬にはサルがいた。たくさんのサルだ。
小さな休憩場があり。トイレとベンチがあってそれなりに大きかったので一休みしていたのだが、そこはサルの縄張りだったらしく。気がつけばサルの大群に囲まれていた。幸い近づいては来なかったので早々にその場を立ち去ったよ。荷物が狙われる可能性もあったしね。

そして辿り着いた佐多岬。
本来の場所は危なくなったからと少し移動していたところで石碑があったのでそこで写真を撮って。さあ次へ。なのだがこれが悩ましいところだった。


先に進むとしても戻るにしても寝る場所を確保できそうな場所まで戻るとなると今日走った部分と大きく重なること。先に進んだ場合、ご飯を食べる場所も怪しい。悩んだ結果、先へ進むことにした。戻ることがやっぱり抵抗があった。
そしてこの判断が割りと日本一周中で一番危険だったと思える判断となったんだ。

まず。天気があんまりよくなかった。梅雨に入っていた鹿児島はつねにどんよりとした天気。コンビニもない道で食品の確保も失敗した。視界が悪い中で必死に登ったり下ったり。自転車を漕ぎ続けた。
そんな中で、急にだ。ほんと急にパトカーが目の前に現れた。

なんでも近所の住人から自転車だけが放置されている。と通報があったらしい。そしてその自転車の特徴が自分のにそっくりだと言うのだ。そんなはずはない。自転車から離れてはいない。ずっと乗っていたと告げて。身分証明書を確認された。

そしてその間に。日は落ちた。そこからは小さな電灯だよりだと思った。だがそこにもトラブルだ。ソーラーパネルで点灯するはずのライトが付かなかった。気づかないのも無理はない。これまでずっと昼間しか走っていないのだ。夜に走ることは想定していなかったしする必要もなかった。ここに来て故障していることに気がついたのは痛恨のミスだ。

国道だというのにまったく街頭がない道はまだ夜8時まえだというのにすれ違うことはなかった。その間、雲間から薄っすらと照らす月明かりだけを頼りに白いセンターラインを目印に走った。その場で寝ることも頭をよぎったが、暗い暗い生い茂る木々の中から何かが動く気配がするのだから、止まる気にすらならなかったよ。ほんと生きた心地がしなかった。

やっと見えてきた海岸沿いの広場にあるベンチにたどり着き。自販機があったことに感謝した。それがなかったらエネルギー切れで動けなくなっていたはずだよ。

次の日だってしばらくは何も見当たらなかったよ。自販機のココアが命綱だった。それでも朝食の時間には商店を見つけることが出来。パンを購入。ようやっとそこで一息つくことが出来たんだ。

ほんと、判断を間違えた。もっと慎重に動くべきだった。そう思った瞬間だった。

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