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【エッセイ】自転車日本一周記14

本土を再び離れ九州へ

広島からは山口を通って福岡へ向かうだけ。
だけって言うけど、道のりは楽ではないし、毎日クタクタになっていた。
でも大きなトラブルも出会いもなかったな。毎日のようにだれかと会話はするし、どこ行くの? みたいな話しかけられ方はよくあった。だからといって泊まる泊まらないまではいかないし、食事をごちそうになることもなかった。
気楽な一人旅はそうやって続ていく。

とはいえ福岡は天神ではジャグリングサークルに顔を出し。一緒に練習をした。みたこともない芸に驚き、のちにそのサークルの長と年齢が一緒だったりボードゲームが趣味という共通の話題もみつかるのだがそれはまた別の話だったりする。

そこで言われた一言は福岡の恐ろしさを体現していた。

野宿するなら市内は絶対に止めといたほうがいい。朝起きたら身ぐるみを剥がされていることがあってもおかしくない

空が白み始めたころに言われたものだから焦った。慌てて、自転車を漕ぎ進めなんとか福岡の外へ。佐賀との県境間近の公園で一晩を越すことにした。

そこまで現地の人に言われたら逃げるよ。そりゃ。というわけであっという間に福岡を脱出。

次の日は佐賀から長崎へ。そして長崎には本土最西端がある。離島を含まない一番西ってことで石碑があるのだ。しかし、そこから見える景色は五島列島であり、とても端っこという感じはしないのだけれどね。

その途中でのことだ。久しぶりにゆっくりと話しかけてくれたおじさんがいた。

今度はいい人だった。おそらく日本一周中で一番。
雨も振っていたし家に来るかと誘われた。奥さんが家でご飯を用意して待っていた。急な来客に嫌な顔ひとつせず用意してくれた。
家庭の料理を久しぶりに味わった。いろんな話を聞いてもらったし聞かせてもらった。次の日のお昼ごはんも持たせてくれた。ほんとうにいくらお礼を言っても言い切れないってやつだ。
心残りがひとつ。旅が終わったらハガキを送りますと言って送らなかった。メールでちょっとやり取りをしただけだ。筆不精なんだ。なんて書いていいのかまったくわからなくなってしまって迷っている内に送るタイミングを失ってしまった。
だから今のこのエッセイはいい機会なのだ。今度こそ。書き終わったら本の形にして送ろうとそう思う。


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