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【エッセイ】自転車日本一周記12

好奇心? 油断? いや、このエッセイを書くために体験しに行ったこと

京都は舞浜市。入ってすぐの昼すぎのことだ。福井の友人と話して気分は盛り上がっていたし、やはり人とじっくり話すのはいいものだと感じていた。
そんな折。軽トラックからクラクションを鳴らされ驚いてそちらを見るとおじさんが声を掛けてきた。
旅の人かい。よかったら面倒を見させてくれないかと。
近くの駐車場に止められ。そう話を切り出された。
その強引さに流石に一歩引いた。自分の力だけで進みたいからその軽トラックに乗りたくはないと説得力のない言い訳もした。でもおじさんは折れなかった。
怪しいと思いつつも。なにかあっても話のネタになればいいやとついていくことにしたのだ。
すると軽トラックは急に山道を登り始める。
汗かいてるだろうからさ。温泉いこうよ。そう初めて会った人にふとももを触られた。
その当たりで懸念は大きくなり。
温泉につれていかれて、その視線を見たときにそれはほぼ確信に変わった。

そういう趣味の人なんだと。

まあ、だからといってご飯もごちそうしてくれたし、話がつまらない訳じゃなかった。偏ったし思想を持っているなと思ったけれど一日の出会いとしてはまあ、そのくらいは問題じゃない。そう思っていた。

泊めてくれると言われてほいほいついていったのは久しぶりの布団に渇望していたのと準備していたソーラーパネルの調子が悪くなってスマホの充電をしっかりしてきたかったからだ。

その判断が事態をさらに転がるように進んでいくことになった。

あれだよね。ずっと外で野宿しているなら溜まってるよね。
そう言われたとき顔が引きつったのが自分でもわかった。自分はむっつりスケベではある。しかし、だからこそか。大っぴらにそう言われて笑顔で返すほど大人じゃないのもあった。それに運動しすぎるせいかあんまりその辺を気にしたことはなかった。

まあ。そんな感じで驚いている間におじさんはあれよあれよと準備を進めていった。気が付けば、隣の部屋にいるから好きなだけ抜きなよ。と言われてテレビに映し出されたエッチな映像とともにひとり取り残された。

とうぜん行為をするわけにはいかない。監視カメラがあったりしてもなんのおかしくはなかっった。適当にしているフリをして時間が過ぎるのを待つしかなかった。

あれ。抜かなかったの。珍しいねキミ。そう言われてゾッとした。
割りとみんなよろこんで抜くんだけどね。もっと若い子とか。そう言われてもっとゾッとした。

聞けばこれまでも何人にも声を掛けて泊めているらしい。糾弾する気にならなかったのも飛び出さなかったのも、本当に無理やりしてこなかったからだし、体格は明らかにこちらの方が上。腕力で負ける気もしなかったからだ。おそらく敵わない相手だったら最初からついて行ってはいない。

だから内心怯えながらも隣で寝ることもした。寝付けなかったけどね。だってマッサージをするとか言い始めるし。隙あらば触ろうとしてくるし。

寝付けなくて朝早く出ていくことにした。

最後にお願いがあるんだけど。と言われてなにかと思ったら抱きしめていいかと問われた。近くに寄ってきながら、男が好きなんだと分かっていたことをカミングアウトされた。

どうやってその家から出たか覚えていない。しばらく頭から離れなかったことも事実だ。

でもだからといっておじさんが悪いとか、どうにかなってしまえとは思わなかった。なにせある程度覚悟して行ったのだ。当然だろ。
一泊一食の恩というやつもある。タダ飯なはずはないんだ。
それに話のネタになればいいなと思ったんだ。そしてそれは実際話のネタになるしこうやって書くことが出来る。

色んな人がいる。それは日本一周で学んだことのひとつだ。

まあ、でも被害者は少ないほうがいいなと思う。特に若い間に体験したいことではなかったね。
みんなも知らない人の強引な親切は受けてはいけないよ。そこにはきっと裏の思惑があるのだから。

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