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【エッセイ】自転車日本一周記20

都会の道はつまらない?

しまなみ海道を通って広島県は尾道に到着してすぐにケータイショップへ駆け込み代替え機を入手。壊れた本体は修理へと出した。結果写真の殆どがここでも消えたことになる。

そして進路は東へ。福山市を通って岡山、姫路、神戸を経て大阪に初突入。道中はほんとになにごともなく順調に進んだ。
都会の街並みは確かにそれはそれの良さがあるのだけれど、変わらない景色というものは退屈であった。

大阪は都会過ぎて寝ること諦めてそのまま奈良県へ向かうことに決めた。なんだか嫌な予感がしたのだ。これは経験則からくるもので、きっと探せばいい場所もあったのだろうけれど、あいにくその場所を探す余裕はなかったらしい。
でもこれがいけなかった。

地図上だと、まっすぐ道が伸びているだ。大阪から奈良の看板も目につく。当然進めると思っていたんだ。でも、段々と並走している車たちの姿が地下へと潜っていくのだ。反対に自転車の道路は上へと向かっている。
あー。峠を超えなきゃだめなのか。そう覚悟はしたもののこれまでもそんな経験はいくつもあった。だから楽勝だとそう勘違いしていた。

気がつけば、目の前に立ちそびえるのは見たこともない急勾配だった。
暗峠。
その名前を知ったのは日本一周を終えてからしばらくしてからだ。
日本有数の激坂で知られるその坂を荷物を持って登ることなんて出来やしなかった。ひたすら自転車を引いて歩いて登った。軽トラックとすれ違うときのその傾き具合はあれ以来みたことはない。
人が登れる傾斜じゃないね。
荷物がなかったら再挑戦したい? そんなこと考えたくもない。絶対ムリだよ。だって、毎日100キロ漕いでいた身体で無理だったんだから。

そしてようやく辿り着いた奈良県。久しぶりの山に囲まれた景色は妙に落ち着いたよ。そして鹿とたわむれるのもそこそこにして、和歌山県へと向かったんだ。


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