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理不尽が過ぎるけどなんか笑えた話。

原因不明で歩けなくなったクララ状態のばばあ(83)を、病院へ連れて行くことになった。
普段は忍法・隠れ身の術使いである父親がここぞとばかりに、

「オレが連れて行くわ!」

とシャシャリ出てくれたので、

「よっしゃ~ゆっくり作業ができるぜ(お願いします!)」

という感じで期待していた。
が、前日になって祖母が私にも来てほしいなどと宣いはじめた。なんでや。

「病院でトイレに行きたくなった困るから」ともっともらしいことを言っているようで、「トイレは家で済ませておきなさい」と思わずママになってしまう。

仕方なく付き添うことになった。

当日の朝になって「雪が降っているから行きたくない」などと、ハメハメハ大王のガキみたいなことをぬかす祖母の尻を叩き、車に収容。朝っぱらから市内の病院へ向かった。

車から降りて祖母を車いすに乗せたところで、
「朝飯食ってないから病院の食堂で食ってくるな!」と早々に父離脱。……おい。
なぜアンタの都合に合わせて時間調節をしたのに、朝食を食べてきていないんだ。
とはいえ父を理解するくらいならセンチネル族と接触する方が容易な気がするので、諦めて受付に向かう。対応してくれたお姉さんが優しすぎて危うく求婚しかけた。

そんなわけで『医療費1割負担の恩恵に預かったジジババの巣窟』と化している整形外科へ。

ここで我が家のばばあ、腰が痛くて座っていられないから寝たいなどとごねだす。
目ぇ付いてんのかワレ、ソファいっぱいだろうが、こちとら立ってんだぞ、そんな1人だけ特別な待遇受けられるわけないやろ、ヴェルサイユ宮殿からの転生者か己は。

面倒なのですべてを飲み込み、めい想に耽った。

待ち時間2時間、診察5分とはよく言ったもので、比喩でもなく本当にそんな時間配分で診察は終わった。
認知症の祖母は診察中も支離滅裂なことを言い出し、医師がどきどき「ぱーどぅん??」という顔を私に向けたが、私もぱーどぅん??

やれやれやっと会計かと思ったころで父、颯爽と帰還。タイミングがおかしい。

「おう、どうだった?」
どうもこうもあるか。

「じゃあオレ、車で待ってるから後よろしくな」
さすがは忍法・隠れ身の術使い、フットワークがケサランパサランみたい。

ああ、うん、と返事をして窓口に並んだものの、財布を出しながらはたと気付く。

……いや、私が払うのはおかしくね?

若者から搾取した金で暮らす年寄りの1割医療費までその若者に負担させるとは……いや、年金免除されてる私が言えたことではないが。

無事家へ着くと、父は何故かやりきった顔で去って行った。ご飯しか食べていないはずなのに。
それにしてもマジであの人はどこで暮らしているのだろう。疑問は尽きない。
逆に清々しくて笑えたし、私は8対2くらいの割合で父の遺伝子を多く受け継いでいそうなので、見習っていきたいとさえ思った。


~~後日談~~
数日後。祖母が救急搬送されることになり、ドクターカーなるものがすっとんできた。

そして先日。
病院「先週ご利用したドクターカーのご請求の件でお電話いたしました」
私「はあ……」
病院「1割負担で7000円になります」
私「ファーーーーwwww」

おしまい

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