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【死と隣合わせの】ブロマンスを感じさせる侍映画5選【男たち】

小説、漫画、ゲーム…あらゆる創作物の題材にされる『侍』。その存在は、日本のみならず海外でも広く知れ渡り、時には日本を象徴するアイコンとして用いられることすらある。
侍がなぜここまで人気か?それは刀や殺陣が格好良さだったり、忠義を尽くすという精神性だったり、死と隣合わせの生き様だったりと様々な理由が挙げられるだろう。

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『侍』を題材にした映画も数多く作られているが、そうした映画を観ていく中で、侍映画にはブロマンスを感じられる作品がとても多い事に気が付かされた。そこで、今回は侍映画の中でブロマンスを感じられる作品を5作品紹介していきたい。ちなみにブロマンスとは、大まかにいうと『男同士の深い友情、もしくは特別な絆』などを指す。(ブロマンスの詳しい定義、ブロマンス映画については以前記事にしたので、興味のある人は是非読んでみてほしい)

【侍の終わりと国境を越えた男たちの絆『ラストサムライ』】

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製作年:2003年 監督:エドワード・ズウィック

かつての南北戦争の英雄、オールグレン大尉は戦争の無意味さに疲弊し、今はアル中暮らし。そんな彼が、近代化を目指す日本の軍隊の教官として雇われて日本へ渡り、国を挙げての近代化の波の中でサムライの生き方を貫こうとする武将、勝元に出会う。(映画.com参照)

トム・クルーズが主演をつとめたことでも話題になった本作。日本で130億円を超える興行収入を叩き出し、2004年の興行成績で1位を記録した作品だけに観てる人も多いことだろう。本作でのブロマンスは、トム演じるオールグレンと渡辺謙演じる勝元との友情を超えた絆。国も立場も異なる(本来なら敵対関係ですらある)2人が友情をはぐくみ、そして別れを迎える。異国人であるオールグレンの視点で語られるので、『侍』に詳しくなくてもその生き方や美学を知ることができるだろう。『侍』という一つの文化の終わりと、2人の友情の終わりが重ねているところが素晴らしく、勝元とオールグレンの最後のやり取りはいつみても目頭が熱くなる。トム・クルーズはもちろん、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた渡辺謙の演技と存在感はは必見。まだ観てない方は是非ともチェックしてみて欲しい。

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【生きて戻れない男たちの旅路の果て『十三人の刺客』】

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製作年:2010年 監督:三池崇史

戸時代末期、罪なき民衆に不条理な殺戮を繰り返していた明石藩主・松平斉韶の暴政を訴えるため明石藩江戸家老・間宮が切腹自害する。この事件を受け、幕府内では極秘裏に斉韶暗殺が画策され、御目付役・島田新左衛門(役所)がその命を受ける。新左衛門は早速刺客集めにとりかかるが、彼の前に斉韶の腹心・鬼頭半兵衛が立ちはだかる。(映画.com参照)

暴君暗殺の命を帯びた13人の刺客たち。1963年の工藤栄一監督の同名作品を『オーディション』(1999年)、『初恋』(2019年)の三池崇史監督がリメイクした本作は迫力満点の傑作映画だ。本作のブロマンスは主人公でもある13人の刺客たち。お互いのことは深く知らないがともに命をかける同士、この設定だけでもブロマンス要素は充分といえるだろう。その中でも、伊原剛志演じる平山と窪田正孝演じる小倉との師弟関係や、役所広司演じる島田新左衛門と市村正親演じる鬼頭半兵衛との関係など、各々の関係性も掘り下げてみても熱いものがある。役所広司、松方弘樹、山田孝之、沢村一樹など豪華キャスト勢揃いなのも見どころだが、当時、またSMAPで活躍中だった稲垣吾郎が暴君という汚れ役を演じ切っていることに驚かされる。『侍』の理不尽ともいえる生き様を題材にした本作は後半のアクションシーン含め、近年の時代劇映画の中でもトップクラスだといえるだろう。

【誰も見たことない妖艶な新選組がここに『御法度』】

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製作年:1999年 監督:大島渚

幕末の京都。時代の流れに逆行し、幕府の非常警察として抗争に明け暮れる新撰組に、惣三郎という新人が入隊する。妖しい魅力を放つ美少年・惣三郎に対し、次第に心を惑わす血気盛んな剣士たち。やがて隊内は、嫉妬や羨望を交えた不穏な空気に包まれるが・・・。(Yahoo!映画参照)

『愛のコリーダ』(1976年)、『戦場のメリークリスマス』(1983年)などで知られる大島渚監督の遺作。創作物の題材として扱われることの多い『新選組』を同性愛という視点から描いている。筆者はブロマンスは同性愛とは異なるものと考えているため、今回の記事の趣旨とはズレるが、沖田総司や土方歳三の関係性などはブロマンスを感じるし、何より作品自体が素晴らしいので紹介したい。

本作の見どころは、本作がデビュー作の松田龍平演技は棒だけど、怪しい色気が滲み出てて、魔性の美少年という役どころが見事にハマってる。今みたいな筋肉キャラじゃない武田真治の沖田総司や、崔洋一監督演じる近藤勇の不気味さ、ビート武の土方敏三も色気があって、キャストの豪華さだけでも見応え充分だ。
ドロドロの恋愛劇なのだけど、作品全体に漂う退廃的な雰囲気がたまらない。耽美的な作品が好きな人にこそお薦めしたい。今作が映画デビュー作の神田うのの花魁役やトミーズ雅、坂上二郎の役どころもハマっていてキャスティングが素晴らしい。ちなみに『ムーランライト』(2016年)のバリー・ジェンキンス監督は同作の参考にした日本映画で、最も大きな影響を受けた作品に本作の名を挙げている。

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【動乱の時代に巻き込まれる3人の若侍の運命は『合葬』】

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製作年:2015年 監督:小林達夫

幕末の江戸。将軍の警護と治安維持を目的に結成された彰義隊は市民たちから厚い信頼を寄せられていたが、幕府の解体により反政府的な立場へと追いやられてしまっていた。将軍・慶喜に忠誠を誓った極は、友人・悌二郎の妹との婚約を破談にしてまで彰義隊に身を投じる。一方、極と悌二郎の幼なじみである柾之助は、養子先から追い出され、行く当てのないまま彰義隊に入隊。また、悌二郎は彰義隊の存在意義に疑問を抱きながらも、極たちと関わったために運命を翻弄されていく(映画.com参照)

鳥羽・伏見の戦い後、将軍の警護および江戸市中の治安維持を目的として有志により結成された「彰義隊」。この彰義隊を巡って時代の波に吞まれていく3人の青年たちの運命を描かれている。杉浦日向子先生の原作は未読だが、本作はNHKドラマ『カーネーション』、『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)などで知られる脚本家の渡辺あやが担当しており、そのせいか本作には青春時代劇とでも呼べそうな軽やかな雰囲気がある。
全てを投げうって大義に身を投じる極、成り行きで入隊する柾之助、2人を止めるために入隊する悌二郎、異なる生き方を選ぶ幼なじみの3人、その関係性はブロマンスといえるだろう。主演は柳楽優弥、瀬戸康史。ナレーションがカヒミ・カリィだったり、音楽担当が ASA-CHANG&巡礼という時代劇にしては異色の組み合わせに挑戦しているのも本作の見どころの一つと言えるだろう。個人的に当時は画期的だったドローン撮影を用いているところもも印象的。

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【最後の3日間と3人の男たちの奇妙な友情『竜馬暗殺』】

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製作年:1974年 監督:黒木和雄

幕末という動乱期を背景に、坂本竜馬が暗殺されるまでの最後の2日間を描いた時代劇。慶応3年11月13日。海援隊の常宿“酢屋”から“近江屋”へ身を移す坂本竜馬。大いなる野望に燃える竜馬であったが、大政奉還後の権力闘争の狭間で、佐幕派はもちろん、勤皇派からも煙たがられる存在となっていた。身の危険は誰よりも感じていながら、近江屋での竜馬は意外なほど落ち着き払っていた。しかし、2日後に暗殺される竜馬には、この時すでに刺客の手がすぐそこまで近づいていた……。(Yahoo!映画参照)

坂本龍馬が暗殺されるまでの「最後の三日間」を描いた作品。本作のブロマンスは坂本龍馬と中岡慎太郎の関係性にあるといえるだろう。幼い頃から知り合いである2人の関係性は、一言でいうなら「腐れ縁」。本来なら龍馬を殺す筈だった中岡慎太郎が行動をともにする過程は、劇中の中でも特に可笑しく人間臭い部分だ。そこに加わる右太含めて3人の男の奇妙な関係性が本作の面白いところ。ATG配給ということもあってアート寄りの作品ではあるが、原田芳雄に石橋蓮司、そして松田優作という各キャストの力強い演技に目を惹きつけられてしまう。(原田芳雄の目力の凄まじさ、そして石橋蓮司も格好良い)また、16mmフィルムのモノクロ映像も凄まじく格好いい。。熱く議論を戦わせたり、女性を巡って喧嘩をしたり、そんな2人の時間が突然終わる様は、悲しみや切なさを超えて諸行無常さえ感じる作品となっている。正直、観る人は選ぶだろうが気になる人は是非観てみては。

Amazon Prime、Rakuten TVにて配信中

【まとめ】

ということでいかがだっただろうか。こうして改めて振り返ると、侍映画にブロマンスが多い理由としては、侍という文化が『男社会』であること、また『死』と隣り合わせであるからこそ、繋がりが生まれやすいのかもしれない。今回は5作品挙げたが、まだまだブロマンス要素を含んだ侍映画はあると思うので、また改めて紹介していきたい。

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