【ループは留まる為にあらず、前に進む為に】映画『リバー流れないでよ』感想
京都、貴船の老舗旅館を舞台に、突如として起きた2分間のタイムリープに巻き込まれた人々の騒動を描いた映画『リバー流れないでよ』。
ノーチェックだったけど、SNSで見かける感想が絶賛ばかりなので気になっていた作品。
「タイムリープ」が題材という情報以外知らずに観たが、『サマータイムマシンブルース』、『曲がれスプーン』などでお馴染みのヨーロッパ企画の映画と知ってある意味納得。巧みな脚本やキャスト陣の演技の安定さは流石。
映画は老舗の旅館を舞台に同じ2分が繰り返される。
だけど繰り返される度に、笑いだったり恐怖だったり、甘酸っぱい恋愛だったり、様々なドラマが誕生する。そこに一つとして同じ瞬間は存在しない。
まるで回す度に絵柄の変わる万華鏡のようで観てるこちらの心もコロコロ揺さぶられるのが楽しい。
ヨーロッパ企画だと前作の『ドロステのはてで僕ら』も藤子・F・不二雄の短編っぽくて好きだったけど、今作はよりマイルドで見易い作品になっている。
特にロケーションの素晴らしさは今作の魅力の一つだろう。
舞台となっている貴船神社や、撮影に全面協力したという老舗旅館「ふじや」の佇まいが良い。日本でしか成立しえないSF映画になっているし魅力的な「箱庭映画」にもなっている。
しかし邦画は面白いループ映画が多いという印象がある。
最近だと繰り返す1週間から抜け出せなくなる社員たちの姿を描いた『MONDAYS』も面白かった。
ループ映画を観て気付いたが「ループは肉体的には同じ時間に閉じ込められけど精神的には先に進む物語」になっている点が面白い。
ループの原因を突き止めていく過程で、主人公の悩みや対人関係は変化していく。その結果、ループの裏側にあった個々が抱えている問題が解決したりする。
ループは留まるためではなく先に進むために起きる現象だと捉えるととそのシステム自体がドラマチックだと思うのだ。
それはそうと誰にでもこの時が進まないで欲しい瞬間ってある。
自分はこの映画を観たのが日曜のお昼過ぎだったので、月曜前のこの時が続いて欲しいと思いながら帰った。
後、自分が鑑賞した回が舞台挨拶回ということで、鑑賞後は本作を監督した山口淳太さん、出演者の中川晴樹さん、酒井善史さんらが登壇しトークイベントが行われた(司会者は松岡ひとみさん)。
このトークイベントが本当楽しかった。これまで行ってきた舞台挨拶回の中でも一番かもしれないくらい笑った。
本作はキャストの確かな演技力が面白さを支えているが、このイベントでもその実力の一端が感じられた気がした。
漫才コンビかと思うくらいの中川さんと酒井さんの掛け合いが見事で愉快。その後のサイン会にも参加してしまったよ。
映画自体は大変素晴らしかったが、この舞台挨拶も合わせて、とても良い休日となったことに感謝したい。
ということで『リバー流れないでよ』。
とても愛らしく楽しい映画だったので、興味ある人は是非チェックしてみて欲しい。
【補足】
※ヨーロッパ企画主導の映画『ドロステのはてで僕ら』。大変面白いので『リバー』を観た人や興味ある人は是非。
※同じ題材の映画だとこちらの映画も大変面白いのでお薦めしときたい。
読んでいただきありがとうございます。 参考になりましたら、「良いね」して頂けると励みになります。