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【巧みな脚本と日本風刺に唸らされる】映画『MONDAYS』感想&紹介

10月28日から公開している『MONDAYS』(東京、大阪、名古屋では10月14日より先行公開)。タイムリープに陥ったオフィスの社員たちが協力して抜け出そうとする姿を描いた作品だ。

監督はデビュー作『14歳の栞』で注目を浴びた竹林亮監督。主演は『コントラ KONTORA』の円井わん、共演者にお笑い芸人、ミュージシャン、俳優など幅広く活躍するマキタスポーツ、『カメラを止めるな!』のしゅはまはるみ等が名を連ねている。

SNSでポスターを見かけた時から気になっていた本作。評判もすごぶる良い(11/1時点でFilmarksにて4.1の高評価!)ので早速観に行ってみた。

最初このポスター見た時、映画とは思わなかった。このポスターも「広告代理店」という設定とマッチしてて良い!

舞台は日本の広告代理店、日々激務に追われる吉川朱海は、ある月曜の朝に後輩2人組から「自分たちが同じ1週間を繰り返している」と告げられる。

当初は信じなかった朱海だが、何度か同じ日を繰り返していくことうちに、その話が本当であることに気付く。後輩によるとタイムリープの原因は部長にあるらしい。

部長にそのことを告げる朱海だが全く信じて貰えない。困り果てた朱海たちは直属の上司たちに上申していくことで、部長にも気づいてもらおうとするが…

2022年製作/82分/G/日本

【感想&紹介】

本作は本当に脚本が巧い。いわゆる「タイムリープ」を題材としているが、通常のタイムリープ映画とは少し違う。まず、主人公である朱海はタイムリープ当事者ではない。

通常ならタイムリープを繰り返していく中で、抜け出すための手掛かりを見つけていくというのがお決まりだが、朱海より後輩たちの方が多くタイムリープを繰り返しているため、ここからを抜け出す方法も調べてくれている。

こうした通常のタイムリープもののお約束に縛られていないから脚本が自由度が高い。内容が詰まっている物語をここまでコンパクトかつテンポも良くできたのもこうした制約に縛られてない点が大きいのだろう。

タイムリープ系の作品では変化球な作品だが、その分先が読めずに面白い。

劇中でも挙げられていた2作品(もう1作品なんだっけ?)本作は「タイムリープ」系に対するメタ的な演出もある。

タイムリープの描き方以外に舞台や設定、演出など映画全体で日本を強く意識させるところも特徴的。
「部長にタイムリープを気付かせる」という目的に対し、いきなり部長に言うのではなく、直属の上司に上申していくという段階を踏むのがとても日本的。しかも、わざわざスライドで説明するのも面白い(ツッコミとボケのタイミングが素晴らしくて劇中で一番笑った)。

社員が忙しいのに対し部長がのんびりしてたり、クライアントから鬼電される場面も企業あるある(ここら辺は他の国でもあるあるかな?)。こうした場面は自分も経験があるので懐かしさと苦々しさが入り混じった感情で観ていた。こうした描写には日本社会を風刺してる意味もあるのだろう。

皆で協力して乗り越えるというのも日本的ではある。

「味噌汁タブレット」という題材も日本ならではだし、ネタバレになるので明かせないが、後半に出てくるタイムリープを抜け出すための鍵となるアイテムも日本ならではだと思う。

個人的には「いつタイムリープから抜け出せるか分からないから、いつも通り仕事をこなす」という考え方も真面目といわれる日本人だからこそだなと思った。例えば、ギャンブルの結果を調べて全財産賭ければ、いくらでも別の生き方も選べそうなのに…というか、海外が舞台の作品なら登場人物もそうしてそうと思う。

基本、登場人物達、全員小市民というか「良い人」たちだよね。

タイムリープものの多くがそうであるように、朱海も何度も同じ時間を繰り返していくうちに自分を見つめ直していく。

人生は選択の連続だ。朱海の憧れてる木本の言う「信用できるのは自分だけ」と、朱海の会社の社員たちの「1人でできることなんて知れている。だから皆で協力して頑張ろう」は対照的な考え方として描かれる。劇中では朱海がどちらの道を選択するかも一つの見所になっている。

木本が嫌なヤツっぽく描かれてるため、彼女の言ってることが悪いみたいに見えるが、筆者は木本の考え方も間違いではないと思う(実際、広告業界にこんな人いるしね…)。業界の第一線で活躍し続ける人の言葉だから決して軽いものではないだろう。

なので、これはどちらが正しいかではなく、「自分はどの生き方を選ぶのか?」という話だと捉えた。朱海は同じ時間を繰り返す中で傲慢だった自分を見直し、自分の生き方を選んでいく。こうした朱海の姿には会社員として生活している人なら少なからず共感するところはあるのかもしれない。

朱海が自身を見直さず、突き進んだら木本のような人間になっていたんだろうとも思う。

マキタスポーツ演じる部長もタイムリープをキッカケに自分の過去と向き合うことになる。こちらは会社人として長年働いている人の方が共感できるかもしれない。

若い朱海とある程度経験を経た部長、2人の立場も年齢も異なるキャラクターを上手く織り込み共感を呼ぶ。本作は本当に脚本が巧く練られているのである。

朱海を演じた円井わんさん(岸井ゆきのさんに似てる)の終始不機嫌そうな演技も良かったし、マキタスポーツさん演じる部長のとぼけたキャラクターは大ハマり。他の共演者たちの存在感も良かったな。

上映時間が83分と短いのもお薦めできる点。特にタイムリープ系は見返すたびに発見があるので、気軽に見返せれるのはありがたい。本当良く出来ているので、気になる人は是非ともチェックして見て欲しい。

センチュリーシネマ、10/28の15:20の回で鑑賞。お客さんは10人。客層はバラバラ

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