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【若いうちにこそ観て欲しい】映画『いまを生きる』紹介

映画を観てると、たまにタイミングを考える作品に出会うことがある。物語や演出などに対し「この作品は自分にはまだ早かったかな」と感じたり「若いうちにこの作品に出会いたかった…」と思ったり。映画を観るタイミングは作品選びと同じくらい大切なのかもしれない。

今回紹介する映画も自分にとってはもっと早く出会いたかった作品、それが『いまを生きる』だ。

1989年製作/128分/PG12/アメリカ

『いまを生きる』は30年以上も前の作品だが今なお色褪せない名作だ。監督は『刑事ジョン・ブック 目撃者』、『トゥルーマン・ショー』のピーターウィアー。出演は『レナードの朝』、『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』などで知られる名優ロビン・ウィリアムズ、『ガタカ』、『ビフォア・サンセット』のイーサン・ホーク本作は第62回アカデミー賞で脚本賞を受賞している。

物語の舞台はアメリカの全寮制の名門学校。新学期に同校のOBであるジョン・キーディングという教師が赴任してくる。厳格な規則に縛られた学生たちにキーティングは教科書を破らせたり、教壇の上に立たせたりと型破りな授業をしていく。

キーティングに感化されたニールを始めとする生徒たちは、キーティングが学生自体に作っていた「死せる詩人の会」を再開させ、レールに敷かれた人生から自由な生き方へ憧れを持つようになるが…というあらすじ。

原題の『Dead Poets Society』は『死せる詩人の会』からきてるが、邦題の『いまを生きる』は劇中でキーティングが発するラテン語「Carpe Diem」が元になってるとのこと。

「若いうち」と書いたが、正確に言うと社会に出る前に観て欲しい。何故ならこの映画にはいくつもの「学び」があるからだ。

筆者が本作を観たのは社会に出て数年経ってから。だからか、どうしても俯瞰の視点で見てしまった。それはそれで胸をうつ素晴らしい作品だが、この作品の持つメッセージはまだ社会を知らない人にこそより刺さる。ちょうどキーティングがニールたちを導いたように。

あらすじから分かる通り本作は「体制と自由」をテーマとしている。言い換えると「理不尽な社会で自分の人生をどう生きていくか?」そのことを強く意識させてくれる。

生徒たちにとってキーティングは「可能性の扉」だ。キーティングの授業によって生徒たちは行動力を刺激され、自由な生き方に目覚めていく。自身も経験があるが、学生時代というのは家庭と学校が世界の全てだ。キーティングはそうした狭い世界に囚われずに広い世界を見ろと言う。

SNSによって子供といえど外の世界を意識する機会は増えただろう。それでも実際に社会に出るのとは全然違う。キーティングの広い視点を持てという教えは学生のうちにこそ知っておいて欲しい。

劇中のニール達のように若い観客ほどキーティングの教えに感化されることだろう

劇中には「自分だったらどうするか?」と考えるであろう場面もいくつか登場する。ニールの一連の行動についても「どうすれば良かったのか?」、「もし自分ならどう行動したか?」と考えるだろうし、物語後半で生徒たちが究極といえる選択を求められる場面は、彼らの行動に見入りつつ自分ならどうするのか考えてしまった。

キーティングに影響を受けた生徒たちも決して一枚岩ではない。自身の主義を貫き通す者もいれば、保身のために利己的に振る舞う者もいる。そんな中で自分ならどう行動するか?観客は己の心と向き合うことになる。

映画に分かり易い「答え」は用意されていない。少しネタバレするとスッキリする終わり方でもない。きっとあなたの心に深い余韻を残すことだろう。だが、それで良い。大事なのは自分の頭で考えることだ。

自分の頭で考えるということは、突然身に付くわけではない。「考えること」を普段から習慣づけてなければ、人生の岐路に立たされた時の選択を後悔することになるかもしれない。

悩み苦しみ、自分が正しいと思う答えを見つける。もしかしたら納得できる答えは見つからないかもしれない。それでも良い、自分で考え行動するということが大切なのだから。

作品の持つメッセージ性から若い人に強くお薦めしたが、当然そうでない人にも本作はお薦めだ。ロビン・ウィリアムズの演技の素晴らしさはいわずもがな、若きイーサン・ホークの瑞々しい演技にも注目して欲しい。

撮影中は監督の指示により共同生活をして徐々に距離が縮まっていく様子を順撮りしたとのこと。

久し振りに本作を観返したが、残暑が終わったこの時期で良かった。身体を包み込むような寒さが本作の持つ寂しさと苦さと良くリンクしている。

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