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【その恐怖の正体は切なく儚い】映画『ドーム/寄宿舎』感想

動画配信サービス『JAIHO』で現在配信中の映画『ドーム/寄宿舎』
タイの全寮制の寄宿舎を舞台にした青春学園ホラー作品だ。

想像以上に良い作品だった。
正直、恐怖演出は薄目でホラーという点で期待すると肩透かしを喰らうかもしれない。だけど孤独な少年の友情と成長譚として観る分には大満足。

寄宿舎にまつわる怖い噂が題材となっており、主人公がその噂を体験していくのだが、その様子は映画『学校の怪談』を思い出させる。

アジア映画らしく湿気ある雰囲気も作品に合っている。
寄宿舎が舞台ということで少年たちが主役なんだけど、彼らのキャラクターも全員立ってて魅力的。

ところで、これ時代設定はいつなんだろう?
レコードプレイヤーやゲーム機の様子からして80~90年代なのだろうか。
ところどころ懐かしさを感じる場面もあってノスタルジックを刺激された。

エアコンの効いた真っ暗な部屋で観たが、この季節に観るのにピッタリの学園ホラーだった。興味ある人にはお薦めしたい。

※これより以下は具体的な内容に触れるので未見の方はネタバレにご注意ください。

2006年製作/111分/PG12/タイ

寄宿舎に転校した孤独な少年。
寄宿舎にまつわる怖い噂に新入生に対する洗礼、彼の前に現れる不思議な生徒…

話は目新しさはなく王道だけど、この映画の場合はそれが良い。

プールで溺れ死んだ少年、怪しい先生、犬が遠吠えをする時はトイレに行くな、こういう寄宿舎にまつわる怖い噂は、学校にまつわる怪談っぽくて馴染み深いし、怖い話を読むのが好きな自分には大好物のシチュエーション。

幽霊と少年の友情というのもベタではあるが(ただ、ここまで堂々とやってる演出は珍しい気もする)、孤独を感じている者同士の友情というのもブロマンスさがあって大好き。ホラー描写も良いけど、この2人の友情描写とかが微笑ましくそれだけで好きだな。

タイって今も犬はこんな風に放し飼いなのかな。主人公の腕時計が自分と同じで驚いた(アラーム音も同じ)

寄宿舎の面々もキャラクターが立っていてそれだけで面白い。
この映画、個人的に「こうなって欲しい」と思った理想の終わり方をしてくれたんだよね。

意地悪だった彼らが主人公を救うために活躍する場面は気持ちが上がるし、最後に主人公が彼らと友達になっているのもテンション上がる。特に棺屋の少年がかなり良いキャラクター。

後、脚本が巧い。
溺れた理由が想像してたような陰惨なものじゃないのは予想外で良かったし、「息を止める」と行為が映画の要所で伏線になっているのに気づいた時は鳥肌が立った。

先生も救済があって良かった。ようやく止まっていた時が動き出したんだね。劇場公開してくれても遜色ないレベルで良い作品。意外に掘り出し物だと思う。

動画配信サービス、JAIHOしか入ってないから他と比べようがないし数本しか観てないけど、自分にあってるサービスなのかもしれない。


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