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【最高のさらにその先へ】映画『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』感想

スパイダーマンとなった少年マイルスを主人公に、様々な次元のスパイダーマンたちとの出会いを通じてヒーローとして成長していく姿を描いた映画『スパイダーマン スパイダーバース』。

『スパイダーマン スパイダーバース』2018年製作/117分/G/アメリカ

続編の『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』では前作のその後が描かれる。

ブルックリンのヒーローとして活躍していたマイルスは、別次元のスパイダーマンであるグウェンと久し振りに再会する。

彼女によって様々なスパイダーマンが存在する「スパイダーソサエティ」の存在を知ったマイルスは、彼女の後を追い別次元の世界へ行くが、それは己の過酷な運命を知る旅路でもあった…というあらすじ。

現時点で今年一番ハマっている作品だ。

現時点で吹替版、IMAX版と2回鑑賞しているが本当面白い。
情報量の多い作品だけに観れば観るほど新たな発見や気付きがある。

劇場特典のクリアファイルやしおりも良い。後、ガチャガチャのアクリルスタンドも集めてたりする。

そもそも前作の『スパイダーマン スパイダーバース』も自分のその年No.1作品。

劇場で4回鑑賞したというかなりハマった部類の映画だ。それだけに今作も期待と不安が入り混じっていたが納得安心の出来だった。

『スパイダーバース』の感想では「アニメーションの漫画的表現という意味で一つの到達点」と書いたが、今作はその到達点を更に更新してきたという印象。

場面ごとに変わるトーンや質感、キャラごとに変わるタッチ。アニメ、実写、水彩画…シーンごとやスパイダーマンのいる世界によって表現方法も変わっている。

表現方法までマルチバースを用いてる点には感嘆というしかない。間違いなく現時点でアニメーション表現の最高到達点に達していると思う。

またストーリーにも引き込まれる。今作は各々の物語が蜘蛛の糸のように幾重にも絡み合っており、語るべき物語が多い。

シリーズの特徴として、マルチバースを題材に「スパイダーマン」という存在をメタ的に捉えているということが挙げられるが、今作で描かれるのは「スパイダーマンとして避けられない宿命」についてだ。

あくまで『アクロス~』は前編なので後半次第ということになってしまうが、少なくとも現時点では後編を期待せざるを得ない面白さだ。

気になる人は是非観て欲しいが、その前に注意事項が2つ。
1つは前作の『スパイダーマン スパイダーバース』の鑑賞必須ということ。さすがに1作目を観てないと分からないことが多いので1作目は観ておく必要がある。

もう1つは『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』は前後編の前編であるということ。
これは自分が観た劇場でもそうだったんだけど、今作が前後編ということを知らない人が多い(宣伝側もそこに触れてない印象がある)。本作で完結すると思って観ると肩透かしを喰らう気もするしフェアじゃないので、先に知っておいて貰いたい。

※これより以下はネタバレありの感想を述べています。未鑑賞の方はご注意ください。

2018年製作/117分/G/アメリカ

オープニングから分かる通り今作はマイルスだけじゃなくグウェンの物語でもある。

冒頭で語られるのはグウェンのハードな背景。
ピーターパーカーを目の前で失っただけじゃなく、ピーターを殺した犯人として父親に追われていた過酷過ぎる。

前作の後、皆それぞれの世界に戻って幸せに活躍しているという訳ではなかったんだという事実に気持ちが重くなった。

このグウェンのエピソードからそうだが、今作は前作に比べて全体的にシリアス&暗めなトーンとなっている。

グウェンの前に突如現れるスパイダーソサエティの面々。ヴァルチャーとの戦闘は表現方法も相まって魅入られる。初っ端からエンジン全開だ。

闘いの後、現実で追い詰められたグウェンがスパイダーソサエティに加わったところでマイルスのパートに代わる。

重めだったグウェンのパートに対し、マイルスのパートはコミカルで前作のトーンを引き継いでるので観てて安心する。

マイルスとグウェン、グウェンと父、マイルスと父母…

今作は複数の物語が絡み合いながら進んでいくのだが、キャラクター同士の関係性が蜘蛛の糸のように繋がっている点が面白い。

マイルスと今作のヴィランであるスポットの関係性も良い。
スポットは序盤こそコミカルだが、中盤から恐ろしくなり凄みのあるキャラへ変貌していく。

今作の監督の一人を務めたジャスティン・K・トンプソンのインタビューによるとメインのヴィランにスポットを選んだ理由として「彼のパワーが過小評価されがちだが、未知のポテンシャルを秘めているから」と語っているがまさにそう。

よくいる敵キャラ的存在からからラスボスクラスへ変化していく過程が熱いしマイルスが追い詰められていく描写も上手い。

最初のコミカルな雰囲気から徐々に狂気が見え出してくる姿が格好良い。

劇中でも特にお気に入りなのは、グウェンとマイルスの再会場面。

この2人のやり取りや街を飛び交う場面が最高にエモい。
本作はシーンごとに雰囲気が変わるのだがこの場面の甘酸っぱさは「The 青春」で観てて思わず顔がにやけてしまった。

全体的にシリアス&暗めな場面も多い本作の中でこの場面は癒やし的時間にもなっている。

この場面は特にエモさ最高潮。スパイダーマンだからできるシチュエーションなのも素敵。

前作の『スパイダーバース』にハマった理由の一つは、仲間になるスパイダーマンたちが個性豊かで最高だから。

そういう意味では今作で新たに登場するスパイダーマンたちも全員魅力的。というか今作はスパイダーマンたちが多過ぎて観てるだけでもワクワクする。

「こんなスパイダーマンいるの?」、「これスパイダーマンと呼んで良いの?」とスクリーンに突っ込みを入れながら楽しんでた。

今回登場したスパイダーマンの中で特に好きなのはこの2人。

ストーリーについても語りたい。
今作のマイルスを待ち受ける運命は過酷だ。
本編のメインテーマは「定められた運命にどう抗うのか?」ということ。

名探偵が殺人事件から逃れられないように、スパイダーマンもスパイダーマンある運命に縛られた存在であることを知る。

奇しくも同日公開された『ザ・フラッシュ』も本作と同じ「定められた運命にどう抗うのか?」ということがテーマだったが、『ザ・フラッシュ』では、その問いに対する答えを出している(ネタバレになるので知りたい人は是非鑑賞して欲しい)。

マイルスは己の運命に抗うことを決めたが、その結末がどうなるかは後編次第ということだろう。

さらに物語が進んでいく過程で「マイルスは実は選ばれし者ではなかった」というショッキングな事実も判明する。

世界を救っていたという自負もあったマイルスは(間接的とはいえ)自分によって変わってしまった現実と対峙させられることになる。10代の子供が受け止めるにはハード過ぎる事実だが、マイルスがこの現実とどう向き合っていくかも気になるところ。

ここまで述べて思ったが、このシリーズ本当後編次第で全てが決まるんだな。広げた風呂敷を上手く畳めるのか。期待してるが一抹の不安もある。

物語の締めは始まりと同じグウェン。
マイルスを探しに行く描写がもう完全に主人公。1人だけじゃなく仲間を集めているのが熱い(しかも前作の彼らが)。

今作の仲間たちも好きなんだけど、やっぱり前作の仲間たちが大好きなので、この終わり方はテンション上がるなぁ。

『スパイダーバース』より。やっぱりこの個性豊か過ぎる面々の活躍がまた観たい…!

ということで『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』。
情報量も語るべきところも多くて何回でも観たくなる傑作だった。
劇場でもう後1回くらいは観たいけど行けるかな。

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